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会社にケンカを売った社員たち~リーガル・リテラシー~

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【ミヤショウプロダクツ事件】大阪高裁判決(平成19年1月24日)

2008年09月03日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ Xの症状の経過および高い濃度のホルムアルデヒドが検知された新社屋の状況等に照らせば、Xは新社屋において発生したホルムアルデヒドによりシックハウス症候群に罹患し、それを契機として化学物質過敏症に罹患したものといえる。

▼ Xにはメニエル症候群やアレルギー性じんましん等の治療歴があったが、新社屋移転前と移転後ではXの症状は明らかに異なり、移転後の症状は新社屋において発生したホルムアルデヒドにより化学物質過敏症に罹患したものとみるのが相当である。

▼ 本件発症は、12年5月ないし8月にかけてであるところ、当時行政はホルムアルデヒドの室内濃度指針値を0.1mg/m(0.08ppm)と定めてはいたが、事業者に対しホルムアルデヒドによる健康リスク低減措置を求める通達が発せられたのは14年3月のことであり、本件当時、XがM社に対し具合の悪いことを伝える等していたとしても、Xの症状が新社屋の改装によって発生したホルムアルデヒド等の化学物質によるものと認識し、必要な措置を講じることは不可能または著しく困難であったといえる。

▼ Xを診断した医師から、M社に対し社内空気清浄が必要であるとの説明がなされた時点で、同社には化学物質発生の可能性を認識し、安全性を検討すべき義務が生じたといえるが、その後、Xが就労したのは4日間であって、その後には休職していることからすると、当該義務の不履行とXの被害の発生・拡大の間に因果関係を認めることはできない。

▼ Xほど深刻な症状の者はいなかったこと、本件ホルムアルデヒド濃度は、一般健康労働者にとっては症状が出るほどの曝露濃度ではなかったこと、医師の間でもシックハウス症候群または化学物質過敏症が広く知られていたとは認められないこと等からすれば、M社において、安全配慮義務に違反したとまでは認められず、また、換気によって、Xの症状がより軽度にとどまったことを認めるに足りる証拠はない。

1)本件控訴を棄却する。
2)控訴費用は、Xの負担とする。

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【空知土地改良区事件】札幌高裁判決(平成19年1月19日)

2008年01月09日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ 酒席とは言え、S組合の費用で運営されている懇親会等であって、出席者等も同組合の理事、監事および職員であることからすれば、職務執行に関連性がないとは言い難く、また、Xの発言は極めて不穏当であり、事務部門の長として部下職員を指導監督し、上部団体または関係団体との折衝をする職務を担う総務部長として必要な適格性を欠き、職場秩序を乱すものであった、服務規程第4条1項3号「職務に必要な適格性を欠く場合」に該当する。

▼ 非違行為の内容や過去の懲戒歴、および給与については比較的少額の減額に留めていることからすれば、本件降職処分が合理性を欠く降職処分とは言えない。

▼ 本件退職給与規程改正の無効確認請求は、Xが現に退職しておらず、退職を前提とした退職手当の支払い請求を前提としていないことから、確認の利益はない。給与差額の将来分の請求について、いまだ支払い時期が到来せず、その発生も将来の事実にかかる給与債権については、そもそも訴えの利益がない。

1)原判決中のS組合敗訴部分を取り消す。
2)Xの当審口頭弁論終結後の給与差額の支払い請求に係る訴えおよび退職給与規程の一部改正の無効確認に係る訴えを却下する。
3)Xのその余の請求を棄却する。
4)本件附帯控訴を棄却する。
5)訴訟費用は、第1、第2審ともXの負担とする。

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【A保険会社上司(損害賠償)事件】東京高裁判決(平成17年4月20日)

2006年12月13日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決

▼ 本件メールの内容が侮辱的言辞と受け取られても仕方のない、Xの名誉感情をいたずらに毀損するもので、Xを指導・叱咤督促しようとの送信目的が相当であったとしても、その表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠くもので、不法行為を構成する。

▼ 本件メール送信につき、その目的は是認できるとして、いわゆるパワーハラスメントの意図があったと言えない。

1.原判決を次のとおり変更する。

(1)YはXに対し、(慰謝料として)金5万円およびこれに対する遅延損害金を支払え。
(2)Xのその余の請求を棄却する。

2.訴訟費用は第1、2審を通じてこれを20分し、その1をYの負担とし、その余をXの負担とする。

なお、本件は上告されたが、最高裁は上告不受理とした。

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【O法律事務所(事務員解雇)事件】名古屋高裁判決(平成17年2月23日)

2006年12月06日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決

▼ O法律事務所に勤務し、他の法律事務所のY弁護士と結婚するとしたXにつき、一貫して仕事を継続したい旨の意向を表明していたもので、合意解約の事実は認められず、O弁護士はXを解雇する旨の意思表示をしたものとされる。

▼ 法律事務所職員の配偶者が相対立する立場の法律事務所に勤務する弁護士である場合、抽象的な可能性の問題としては、情報漏洩等の危険性を完全に否定できないが、当該事務員は職務上知り得た事実について、弁護士と同等ではないとしても、当然に一定の雇用契約上の秘密保持義務を負っているのであり、通常はこの義務が遵守されることが期待できると言うべきである。

▼ 本件においては、(1)同一市内には弁護士が900名以上おり、利害対立の場面はそれほど多くはないと考えられ、情報漏洩の危険等はいまだ抽象的と言えること、(2)仮にそのような場面が実際に生じたとしても、何らかの措置を講じることによって、弊害の危険性を回避することは十分に可能であると考えられること、(3)夫婦共働きというあり方がすでに一般的なものになっている今日、上記抽象的な危険をもって解雇権行使の正当な理由とすることは、社会的に見て相当性を欠くと言うべきであることから、本件解雇の理由は合理的なものとは言えず、O弁護士の行為は不法行為に該当する。

1)原判決を次のとおり変更する。
2)O弁護士はXに対し、144万2153円(賃金3ヵ月分相当104万余円、慰謝料30万円、弁護士費用10万円)およびこれに対する遅延損害金を支払え。
3)Xのその余の請求(当審で拡張した請求を含む)を棄却する。
4)訴訟費用はこれを5分し、その1をO弁護士の負担とし、その余をXの負担とする。

なお、上記判決に対し、O弁護士は上告したが、最高裁判所は上告を棄却するとともに、上告受理申立てについても不受理の決定をした。

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【神戸東労働基準監督署長事件】最高裁第三小法廷判決(平成16年9月7日)

2006年08月30日 07時55分00秒 | 会社にケンカ!の判決

▼ 本件疾病はXの有していた基礎疾患等が本件各出張という特に過重な業務の遂行により、その自然の経過を超えて急激に悪化したことによって発症したものとみるのが相当である。

▼ Xの業務の遂行と本件疾病の発症との間に相当因果関係を肯定することができるから、本件疾病は労働者災害補償保険法にいう業務上の疾病にあたる。

1)原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
2)K労基署長がXに対してした労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を支給しないとの処分を取り消す。
3)訴訟の総費用はK労基署長の負担とする。

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