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会社にケンカを売った社員たち~リーガル・リテラシー~

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【バイエル薬品ほか事件】東京高裁判決の要旨(平成21年10月28日)

2010年10月27日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ 本件年金制度は支給期間を終身とするもので、当然非常に長期にわたることが予定されているものであるから、経済情勢の変動等により、これを改廃する条項を設ける必要性があること、しかも、本件改廃条項においては「一般経済情勢の変化、会社経理内容の変化または社会保障制度の改正等を慎重に考慮の上、必要と認めるときは」と改廃の事由を限定していることに鑑みると、本件改廃条項には合理性が認められるというべきであり、本件年金規約は、本件改廃条項部分を含めてXとB社との雇用契約の内容になっていたものということができる。

▼ L社は会社分割に伴い、Xに対する退職年金支給債務やそれに係る年金資産を承継したのであるから、それに付随して本件年金規約部分の合意の当事者としての地位も承継したものと解するのが相当であり、L社は本件年金規約中の本件改廃条項に基づき、本件年金規約に基づく合意内容を変更することができる。

▼ 本件改廃条項は、「一般経済情勢の変化、会社経理内容の変化または社会保障制度の改正等を慎重に考慮の上、必要と認める」ことを要件としているが、Xのようにすでに退職している者についてみると、年金支払いの対価部分(労働力の提供)はすでに履行済みなのであり、退職金に係る制度が不利益に変更されても、その代わり雇用が保障されるとか、他の労働条件が改善されたりするというメリットが生じることも考えられないもので、変更は通常受給者側に一方的に不利益なものといえるものであるから、そこでいう必要性の要件は厳密に判断される必要があるというべきであり、その必要性の判断は、B社の地位を継承したL社側の本件年金制度を廃止する必要性の程度と、その代償として採られた一時金支給の相当性の程度とを総合して判断していくべきものである。

▼ L社において、会社の利益の中から年金受給者1人あたり年間約80万円を負担し続けることは、厳しい経済情勢、国際競争の下で、将来的には困難になって、年金給付額の減額も検討せざるを得なくなる恐れがあったところ、同社による本件年金制度の廃止の判断は本件改廃条項に定める一般経済情勢の変化、それに伴う会社経理内容の変化、国の社会保障制度の改正に基づくものであるということができ、相応の必要性、合理性は十分あるといえる。

▼ 本件年金制度の廃止の代償措置として採られた一時金支給については、その支給額をXが受給する年金総額を今後の生存の確率に基づき算定した上、それを年1.5%の運用利回りで現在価額に割り戻した額で算定しており、本来受け取るはずの退職年金の総額と理論上、計算上は等価に等しいといえるもの、あるいはむしろ低利で現在価額に割り戻していることからすると、受給者の側に有利に算定されているものということができるのであるから、受給者の側では一時金支給になることにより一時に多額の税金を支払わなければならない等の不利益を被ることを考慮しても、本件一時金の支給は本件年金制度廃止の代償措置として相当なものであるということができる。

▼ L社とXとの退職金給付に係る合意内容は変更されたというべきであるから、Xの退職年金請求権は、年金一時金請求権に変更されたものと認めるのが相当であるところ、これはL社らの供託により、消滅したものというべきである。

1)本件控訴に基づき、原判決を取り消す。
2)Xの請求(当審で追加した予備的請求も含む)をいずれも棄却する。
3)訴訟費用は、第1、2審とも、Xの負担とする。
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【東京都自動車整備振興会事件】東京高裁判決の要旨(平成21年11月4日)

2010年08月18日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決

▼ 本件降格処分は懲戒処分として行われたものではなく、T法人の人事権の行使として行われたものであり、このような人事権は労働者を特定の職務やポストのために雇い入れるのではなく、職業能力の発展に応じて各種の職務やポストに配置していく長期雇用システムの下においては、労働契約上、使用者の権限として当然に予定されているということができ、その権限の行使については使用者に広範な裁量権が認められるというべきである。

▼ 本件降格処分については、その人事権行使に裁量権の逸脱または濫用があるか否かという観点から判断していくべきであるところ、その判断は使用者側の人事権行使についての業務上、組織上の必要性の有無・程度、労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するか否か、労働者がそれにより被る不利益の性質・程度等の諸点を総合してなされるべきものであるが、それが不当労働行為の意思に基づいてされたものと認められる場合は、強行規定としての不利益取扱禁止規定(労組法7条1号)に違反するものとして、無効となるというべきである。

▼ 不当労働行為の意思に基づいてされたものかどうかの認定判断は、本件降格処分を正当と認めるに足りる根拠事実がどの程度認められるか否かによって左右されるものであり、処分を正当と認める根拠事実が十分認められるようなときは、不当労働行為の意思に基づくものであることは否定されるというべきである。

▼ 会員の会費によって活動がまかなわれ、会員に対するサービスを業務とするT法人にとっては、Xの窓口対応、電話対応の悪さに関する会員の不満、苦情に対処して何らかの対応措置をとるべき業務上の必要性が大きいことは容易に看取できること、また、他の職員を指導したり、仕事の上で模範になるべきポストに会員から苦情が続出している者を就けておくことが組織上の観点からふさわしくなく、Xは副課長としての能力・適性に欠けると判断したことが、合理性を欠く判断であるとはいえないことが明らかである。

▼ これらの点に、本件降格処分は副課長から1ランク下の係長に降格するだけのもので、役職手当上の不利益もわずか本給額の1%の違いにすぎないこと等を総合すると、T法人が本件降格処分をしたことにつき、裁量権の逸脱または濫用があるとは認め難い。

▼ 本件降格処分には十分な根拠が認められるから、本件降格処分がXの組合活動を嫌悪して、不当労働行為意思からされたものであるとは認め難い。

1)原判決中、T法人敗訴部分を取り消す。
2)上記取消しに係るXの請求をいずれも棄却する。
3)訴訟費用は、第1、2審ともXの負担とする。

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【関西外国語大学事件】大阪高裁判決の要旨(平成21年7月16日)

2010年04月14日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ K大学においては、助教授ないし准教授から教授への地位の変更は、新規採用ではなく、同大学との間で労働契約上の権利を有する地位を保ったまま、一般企業における職制上の地位を変更するがごとくに職務上の地位を変更するものというべきであり、労働契約上の権利を有する地位には継続性が認められる。

▼ 助教授ないし准教授にあった者が一定の要件を満たした場合に教授に昇格することを定めた規定を見出すことはできず、就業規則等に基づく公正な処遇として教授に昇格する請求権が存在する旨のXの主張は採用することができない。

▼ 助教授ないし准教授の地位にある者の教授になることの希望は、抽象的な期待に留まり、未だ不法行為における被侵害利益として保護するに値しないと見る余地が多分にあるが、あらゆる場合に教授への昇格がK大学の完全な自由裁量に服するとまではいうことはできず、学問上ないし教育上極めて顕著な業績があるなどして社会的、客観的に教授への昇格が当然視されるような場合においては、教授への昇格の期待は具体性を有するに至り、それにもかかわらず教授への昇格が行われないときは、上記期待は、不法行為における被侵害利益として保護され、少なくとも損害賠償請求の方法で救済されるべき対象となり得るというべきである。

▼ 一定の年限、助教授ないし准教授の地位にあった者を教授に昇格させる慣行があったとまでは認められない。

▼ Xに研究上、教育上一定の業績は認められるものの、外国語大学たるK大学において、顕著な業績があったとまで認めるには足りず、他に社会的、客観的に教授への昇格が当然視される場合に該当するとまで認めるに足りる的確な証拠はなく、ひいてはXに具体的な教授への昇格の期待権の存在を認めるに足りる証拠はなく、Xを教授に昇格させなかった判断について、これが明らかにK大学の裁量を逸脱したものであるとまでは認められない。

1)本件控訴を棄却する。
2)控訴費用は、Xの負担とする。
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【X堂事件】東京高裁判決の要旨(平成20年9月10日)

2009年07月22日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ AのYに対する各言動は、全体的に観察すると、Yにおいて自己の性的行動等に対する揶揄(やゆ)または非難と受け止めたことも、やむを得ないものというべきであり、Yをいたずらに困惑ないし恐怖させるものであったというべきであり、Aにとって、主観的にはYに対する指導目的にもとづくものがあったとしても、全体として到底正当化しうるものとは認めがたく、また、就業時間終了後の発言等も、当日の飲食自体がAとYとが店長と契約社員との関係にあったことを抜きにしては考えられないものであったことに照らすと、就業時間終了後の出来事であったことを理由にAの言動が店長としての立場と無関係のものであったということはできない。

▼ AのYに対する各言動は、全体として受忍限度を超える違法なものであり、そのことによって、YがAの下で働くことに困惑ないし恐怖を抱いていたことが認められ、そうした困惑ないし恐怖感が消失することなく継続する中で、18年7月13日にAの態度や形相からAに対する恐怖感と嫌悪感を再び強くし、本件店舗での就労意欲を失ったのみならず、再就労に向けて立ち直るまでに相当の時日を要する状態に陥ったものと認めることができ、Aの各言動は、Yに対する不法行為となる。

▼ Aの各言動は、いずれも男性であるAがX堂の経営する店舗の店長としてその部下従業員で女性であるYに対して職務の執行中ないしその延長上における慰労会ないし懇親会において行ったものであり、X堂の事業の執行について行われたものと認められる。

1)原判決を次のとおり変更する。
2)X堂はYに対し、169万5616円(慰謝料50万円、逸失利益99万5616円、弁護士費用20万円)およびこれに対する遅延損害金を支払え。
3)Yのその余の請求を棄却する。
4)訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む)は、第1、2審を通じてこれを4分し、その3をYの負担とし、その余をX堂およびA(補助参加人)の負担とする。
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【中央労働基準監督署長事件】東京地裁判決の要旨(平成19年3月28日)

2009年04月01日 07時50分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ 本件会合は、業務の円滑な遂行を確保することを目的とするものと言うべきであり、一般には本件会合への参加が任意であるとしても、少なくとも事務管理部次長として、これに対応することを部長から命じられて毎回出席していたYにとって、本件会合への出席は主催する事務管理部の実質上の統括者としての職務にあたる。

▼ Yは、午後9時過ぎから居眠りをしているが、飲酒量が通常に比して多量であったとは言えないことや当日は風邪をひいていたこと等からすれば、午後10時15分頃に帰途につくまでの間、一時居眠りをしたとしても、それは飲酒の影響を考慮しても、一時的な休息をとったものとの範囲を出るものではなく、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほどのものとは言えない。

▼ Yは、飲酒後帰途についているが、飲酒の影響で本件事故が生じたとまで認めることはできず、本件事故が通勤災害であることを否定した本件処分は違法である。

1)C監督署長がXに対し、12年12月15日付でした労働者災害補償保険法に基づく療養給付、遺族給付、葬祭給付についての不支給処分を取り消す。
2)訴訟費用はC監督署長の負担とする。
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