京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

秋、醍醐寺に花見とは

2018年10月18日 | こんなところ訪ねて
伏見区の醍醐寺。春は醍醐寺の桜会。醍醐寺の花見行列の主人公は秀吉ですが…。

この秋に、醍醐の花見とは〈水晶の蓮の蕾〉でした。その中に、金色に輝く5.5cmの阿弥陀如来像が入っている、というものでした。
蓮の台座から生える茎を模した筒の上に、蓮華の蕾の形の水晶があり、その中に阿弥陀如来の小像が納められているのです。総高36cmです。

体の表面には金箔が貼ってあり、水晶をくり抜いた中に納められていたため、製作当時(鎌倉時代前期)のままの輝きを残しているようです。
ガラスの屈折が考慮されていて、実際の像は水晶を通してみる姿よりも幾分大きくふっくらとつくられているのです。しかも、このようにガラスを精巧にくり抜き、磨く技術は鎌倉期にはなかったとのことで、相当に質の良い水晶であろう、と。
朱色の唇。その左上に、小さくまるく朱が飛んでいるのが拡大写真でわかります。なんと、「仏師の筆の誤り」だそうな。

この〈茎〉にあたる筒は、茎の先に付けて水晶の中に納めた像が動かないように、長さも、細工もそれぞれに工夫を施した5本の細木を寄せ合わせて作られているのです。寄木細工のように組まれる図解があり、仏師の知恵に「なるほどーっ」とためいきばかり。
この仕組みを解明するには時を有したそうです。私はそれをただ簡単に、すごいなあ~と深く感嘆するばかりです。

 

何度も立ち位置を変えては衣のたたみ方、足元、衣紋、体の線、お顔と拝見。くり抜いた水晶の美しさ、たった5,5cmの優れた作りの像に見とれてきました。良いものを見せていただきました。

久しぶりの醍醐寺でした。「醍醐寺の五重塔の相輪のところに落書きがある」。先日読み終えた『屋根屋』(村田喜代子)での話です。受付の女生としばし歓談…。
コメント (4)
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