京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

心を変えて、と

2017年02月15日 | 日々の暮らしの中で

明日は孫娘のマラソン大会があるようです。

私は別の目的での大阪行きの日です。余裕がないと言い訳にして、ちょっと休みたい気分もあるのですが…。
勉強したり、本を読んだり、感動したり…のうちに、身の内に埋もれていた気持ちは小さな刺激を受けて、膨らんで、自然と力が湧くのですから…。

「識転変」。転機に合わせて心を変えなければ、今を大切に生きられなくなってしまう、と。




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「道の先の風景」

2017年02月13日 | 日々の暮らしの中で
一条戻橋の早咲き桜のつぼみが、いまにも咲きそうなほどの気配に思わず足が止まりました。
車で通り過ぎるだけではわからない街の筋すじです。表札に書かれた「姓」を見ては、そのお宅の由緒を勝手に想像したり、家の造作にあれこれ注文を付けてみたり、初めて知る、読めない地名に驚かされ…と、いつも何かしら発見があって、そうしたことをゆっくり楽しみながら一緒に歩ける友人がいます。


朝、なにげなく手に取った長田弘の詩集に、こんな一節がありました。(「散歩」)
 「街にかくされた、みえないあみだ籤の折り目をするするとひろげていくように、曲がり角をいくつも曲がって、どこかへゆくためでにでなく、歩くことを楽しむために街を歩く。とても簡単なことだ。とても簡単なようなのだが、そうだろうか。どこかへ何かをしにゆくことはできても、歩くことをたのしむために歩くこと。それがなかなかできない。この世でいちばん難しいのは、いちばん簡単なこと。」

今日は、目的の場所に向かって、友人の案内を得ての道すがらの楽しみでしたが、「道のさきの風景がくるりと変わる」、「どの道も、一つ一つの道が、それぞれに違う」街歩きを、この友人となら、ぼちぼちでも長く楽しんでいきたいものだと思っているのです。

   しゃれた詩を書く 月曜日
   しゃかりき推敲の 火曜日
   いきなり消します 水曜日
   むっつり無口な  金曜日
   なんにも書けない 土曜日
   どうどうめぐりの 日曜日
   出口なし
 
こちらは「Pathography」(パソグラフィー)と題された英文の詩の谷川俊太郎訳で、その抜き書きなのですが、つたないものを書き上げようとこの一週間、ようやく入口を見つけてスタートラインに立ちました。
そんな日々を過ごしていましたので、久しぶりに友人とお昼をご一緒し、大徳寺の塔頭・龍源院(りょうげんいん)を訪れて歩いた時間は、気持ち新たに、明日からの励みにつなげてくれそうです。まだまだ、しゃかりきな推敲が続きます。指先から、どうにかこうにか言葉を紡いで…。

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狐の嫁入り

2017年02月06日 | 日々の暮らしの中で

傘を広げたりすぼめたり、天気雨が降る中のウォーキングになりました。

うっかり蹴飛ばしてしまってから追いかけて、拾い上げてみたところ無患子(ムクロジ)でした。熊野古道を歩くツアーに参加していて8回目に当たる2011年5月、芳養(はや)王子で見つけて覚えました。まさか、でした。一昨日も歩きました、その前日も。しかし、です。何年、何回とこの道を通っていても、ムクロジの木も葉も知らずにいては、発見もないわけです。
いくら探してもこの3つ、大事に持ち帰って一つを割ってみました。ナイフを入れると外皮からベタッとした汁がわずかに手についてきます。「石鹸になる」とか…。 黒いのは熊野の地の記念品です。
午後の1時間をウォーキングにあてて順調に経過、中。これからの季節、目を凝らして歩く日を増やしたいです。

一昨日は、池のはたで、一頭のシカが赤ちゃんを抱っこした父親らしき人の横でじっとしていました。奈良公園かと思うような光景。ここでは人間のそばを離れずにいるのを見たことがありませんでしたから。と、悲鳴に近い叫び声があがり、通り過ぎようとした足が止まりました。
「あかーん!! そばにいったらあかーん!!」振り返ると、1歳過ぎくらいの女の子がシカのすぐそばに立っているのです。
あの叫び声に、心臓はドキドキ!  こんなに人間の中に入ってくるなんて…。

「イノシシに注意してください」という看板を初めて見かけ、(注意しろって言われてもねー、出てきたらどう気をつければいいのよ)と一人ぼやきながら歩いていた直後の出来事でした。こんな公園の外周で、イノシシやシカと共生するのも難しいことですわ。
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春立ちぬ

2017年02月04日 | 日々の暮らしの中で

        春立ちぬ逆立ちでもしてみるか     前川弘明

明るい日差しに包まれて、次第に気温も上がってきた。春立ちぬ。そこかしこに春の気配を感じる今日、春の証を探ってみれば、積もった枯葉の下からのぞく緑の葉っぱ、紫陽花には固く膨らんだ大きな芽吹きもあるし、南の方は霞んで見えた。
14℃の電光表示を見かけたが、春は名のみ。そろそろかなあ~とその足音に胸焦がすと遠ざかってしまう。じらされて、それでも待つのはいいものだ。季節は必ず移り行く。

たまった資料などを整理していたら、山本兼一の『夢をまことに』の舞台風景を紹介した冊子が出てきた。
京都新聞に連載された作品だった。近江国、姉川のほとりにある国友村(現在の長浜市)の鉄砲鍛冶の家に生まれた国友一寛斎が、飛行船や潜水艇まで作ろうとし、日本で初めて反射望遠鏡を完成させる話が展開される。からくり仕掛けが好きでしようがなく、好奇心旺盛な一寛斎と物づくりに魂を込める国友の職人たちの、「夢をまことに」と手繰り寄せる日々…。

   努力が報われる
   ……とは限らない
   けれど
   努力をしているそのときこそ
   しあわせ で たのしい とき
   《夢には力がある。強い力がある》
   至幸のときは その力の中にある

冊子にはこんな言葉が並んでいた。
私自身にも、ちょっとしたとっかかりがつかめて、救われた思いで一息ついたことがある。
《夢には力がある。強い力がある》。希望があります。よい「春」となりますように。
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奈良で一日

2017年02月01日 | こんなところ訪ねて

奈良市の新薬師寺から盗まれていた薬師如来像(香薬師)の右手が発見され、奈良国立博物館で一般公開されるとした新聞記事の切り抜きを残しておきました。合わせて、興福寺の国宝館が耐震改修工事で休館するために、「仏頭」は同寺の東金堂に80年ぶりに戻され還座開眼法要が営まれたとか。堂内で拝観できることも知りました。いつか奈良に行こうと機会を待ちました。

         

日本史の資料集などで見慣れている「仏頭」です。こちらは火災で頭部だけが残り、再建された東金堂の本尊の台座に納められたとか。それから500年後の1937年に発見されるという経緯があります。納まるところに収まって、ずっとここがいいのではないかと思うのですが…。東部の総高98.3センチ、ということは、八頭身ということはないにしてもです、まあいかばかりの大きさに。

          手首近くで切断された「右手」は長さ8.6センチとありましたから、10センチにも満たないそのサイズを指で描き想像しました。が、実際に多くの展示物の一角に見い出したときは、ハッとするほど小さなものでした。いたわしい。ですが、見惚れます。その前に立って、しばらく目を向けていたのですが、何かおしゃべりしたくなってきます。
展示されている「なら仏像館」には、他にも壊れた像の一部など数多くが収蔵、展示されています。「右手」の持ち主、香薬師の受難の経緯を知るので、見る者には尚更強い心入れが生まれるのです。本体はいずこに。

           せっかくです。友人と二人ぶらぶら、東大寺三月堂まで足を延ばしました。
素晴らしいお堂の中に、不空羂索観音像と日光・月光両菩薩像に出会ってみたくて。2012年、三月堂の改修工事の際に東大寺ミュージアムに移され公開されたのを拝見して以来で、私は5年ぶりになります。何度も東大寺を訪れていながらお堂の中に入るのは長いことありませんでした。若い時の記憶ではもっと薄暗がりだったはず。その違いはLED、ライトが変わったせいだろうと堂内にいた方が言われます。

井上靖が昭和46年1月半ばにここを訪れていて、随筆を残していました。(『まほろばの国を尋ねて』収)
「底冷えのする寒い日の午後、三時を少し回った時刻であった」「堂内は冷蔵庫にはいったように寒かった」。
「奥の障子扉から入っていて、その光線を受けていた本尊不空羂索観音像の両脚が金色に光って見えていた」という描写があります。私にも本尊の腰から下が金色に輝いて見えたのですが、それはライトのせいだったのです。大きな違いです。自然光だけでは無理なのでしょうか。腰を掛けて長いこと対面。「仏像の拝観は冬が一番ですね」と堂内の方と意見が一致。「寒いですけど」。

「世にも贅沢なものの置かれてある贅沢な空気に触れるだけのことである」が「贅沢な気持ちになれる」と記す井上靖の思いを共感します。
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