伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

行政経営、地方政治、そのほか人生にプラスの楽しいこと eメールアドレスkucctada@mail.goo.ne.jp

外国人児童・生徒の「就学は義務ではない」問題

2015-05-31 19:12:13 | 外国籍児童
立教大学佐久間孝正教授によれば、
日本国憲法や教育基本法は、日本「国民」に対し教育の義務をうたっているので、
それを根拠に「外国人の就学は義務ではない」と、
外国籍児童・生徒を不就学へ追い込む構造
があります。

しかし、驚いたことに日本国憲法が公布された時点では、
在日朝鮮人たちの国籍はまだ未定だった
のです。
戦時中、朝鮮は日本に併合され、朝鮮人は日本帝国臣民として
日本人と同化されていました。

また、ユネスコの「学習権宣言」や、
日本も批准している「子どもの権利条約」では、
教育の権利を人間生存にかかわる基本的人権と捉えています。

外国人児童・生徒の不就学は、全国的なデータすらとられていません。
総務省によれば、2001年時点で外国籍学齢児童・生徒の人数は約10万6千人。
その内、義務教育学校に在籍するもの約6万8千人、
各種学校在籍者2万6千人とみており、1万2千人の外国人の子どもたちが
どの学校にも通っていない恐れがあります。



(戦後のながれ)

戦後、日本「国民」へ就学の義務を定めたのは、
1946年公布・翌年施行の日本国憲法や、1947年施行された教育基本法などですが、
この時点では在日朝鮮人の「国籍」はまだ決定していませんでした。

1945年の衆院選挙法改正委員会で旧植民地出身者の選挙法が議論されたとき、
ある大臣は
「内地(今の日本国内)に在留する朝鮮人に対しては、日本国籍を選択しうる
 ことになるのが、これまでの(他国の)例であり、今度も恐らくそうなる
 と考えています」と答えている。
アメリカの関係者も
「事情が許せば、朝鮮人は日本または朝鮮のいずれかの市民権を選ぶのかの、
 明確な選択権が与えられるであろう」と述べている。

1947年、日本国憲法施行の前日に「外国人登録令」が施行され、
「朝鮮人は当分の間これを外国人とみなす」とした。
当時は検討中であり、外国人とは結論付けていなかった。
サンフランシスコ平和条約発効以前の段階では、法的には日本の植民地支配は
継続していることになるため「朝鮮人は引き続き日本人」の状態であった。
そのため1947年、文部省は在日朝鮮人児童・生徒に日本の学校での就学を義務付け、
朝鮮人子弟の学校も各種学校として許可した。

1952年サンフランシスコ平和条約により、
在日朝鮮人が「日本国籍を有するもの」から「日本国籍を有しないもの」に変わった
これをうけて文部省は1953年、日本国籍でないものに義務教育を施す必要はないと通知。
好意的に入学させても義務教育無償の原則は適用されないとした。

このときの日本政府は、在日朝鮮人がいっときも早く祖国に帰国することを望み、
外国人のまま長期に滞在し続けることは望まなかった。
彼らの滞在は一時的な例外として適用してきた施策が、
今日の外国人児童・生徒の増加、多様化、流動化の時代になっても生きている
ところに問題の根源がある


今日、外国人児童・生徒の就学問題を議論するとき、
学校現場で憲法や教育基本法を根拠にして、彼らには「就学義務はない」という言説が、
当時の歴史的な状況抜きに一人歩きしている。
これはまさに外国人児童・生徒が不就学へ追い込まれる構造的な問題です。



(外国人集住都市会議)

伊勢崎市や太田市も加盟しているこの会議では
次のような宣言も出しています。

教育部会報告(豊田宣言)
多文化共生をめざした教育体制づくり


1 現状
1990 年代以降、日本で暮らす外国出身の子どもが急増している。
国内の公立小・中・高等学校等に在籍する日本語指導が必要な外国人児
童生徒数は、2003 年現在、約 1 万 9 千人で、文部科学省がこの統計を
取り始めた 1991 年と比較して 3.4 倍に増加している。外国人集住都市
における公立小中学校の日本語指導 が必要な外国人児童生徒数は、
2004 年現在、合計で 2,547 人となっている。

文部科学省は、これまで外国人児童生徒のための日本語指導教材の
作成や教員の加配などの施策を実施しており、文化庁においても、地
域の状況に応じた日本語教育の推進に力を入れてきた。一方、外国人
児童生徒の多い地方自治体でも、独自に日本語指導等を担当する教員
や非常勤講師、日本語指導協力者の配置などを行ってきた。また、草
の根の市民団体による日本語支援や学習支援教室は、全国に広がりを
見せている。

しかし、こうした取り組みにもかかわらず、外国人児童生徒の教育
環境について、いまだ大きな改善が見られないことは、外国人の子ど
もの不就学問題が常に取り上げられることからも明らかである。「児童
の権利に関する条約」を批准してすでに 10 年を経た日本にとって、不
就学問題の解決は緊急な課題である。

外国人の急増した地域では、ここ数年の間にブラジル人学校など、
外国人学校が次々と生まれている。こうした学校は本国政府の認可を
受けたものもあり、不就学の子どもの減少に貢献をしている。しかし、
その財政基盤は弱く、多くの課題を抱えている。

今後のさらなる少子高齢化、そして生産年齢人口の急減によって、
在住外国人の増加と定着傾向に拍車がかかるものと見込まれる。しか
し、現在の日本の公教育制度は、日本人のみを対象としており、外国
人児童生徒の存在を想定していない。こうした教育のあり方は、今ま
さに根本的に見直す必要がある。

学校に外国人児童生徒が増え、国籍や民族の異なる子どもたちが共
に学び、共に遊ぶことは、豊かな人間形成につながる可能性を秘めて
いる。多文化共生をめざす教育を受けた子どもたちの中から、将来、
異文化理解やコミュニケーション能力に秀でた人材が育ち、地域社会、
ひいては日本社会の発展に大きく寄与することだろう。

自治体にとっても、同じ地域で共に生活する外国人住民は、地域を
支える大きな力であるとともに、多様な文化をもつまちづくりのパー
トナーである。「教育による人づくり」は、多文化共生社会の実現に向
けてのまちづくりの原点であり、外国人児童生徒の教育方針の確立は、
今、まさに緊要な課題である。


(参考)
外国人集住都市会議 関係資料
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 外国人のこどもの不就学 | トップ | 本日から 自転車のルール改正 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

外国籍児童」カテゴリの最新記事