師走になった額の絵は、谷内六郎さんの「町の灯」。
昔の日本のお母さんが持つ大きなお釜の真っ黒いススの上に、イルミネーションのように描かれた町の灯が美しい。
町の灯(文・谷内六郎)
釜のススがチチチチチと燃えるのは、いつか行ったおじさんの家から見た町の灯に似ています。
おじさんはタバコの吸いがらでももったいないから捨ててはいけないとおばさんにおこっていた、おばさんはタバコの吸いがらなんかキタナイと言っていた、だんだん声高にケンカみたいに言い合うので、ボクは悲しくなって窓から外を見た、町の灯がチカチカと悲しそうに見えた、だいたいボクが遊びに来て泊まっているのも邪魔なのかもしれないと思った。
今夜にでも帰ろうと思ったけど電車賃ももっていない、ボクは歩いてでも帰ろうと決心した、でもそんな心配はその翌日にはすっかりなくなった、おじさんがボクにグローブを買ってくれたからだ、あの日の町の灯は今ではなつかしいものとなった。
家の小さな生け垣の、赤い山茶花が満開。
一枝折って一輪挿し。