爛漫日記

インターネット古書店 独楽知の、春爛漫ではなくて、秋爛漫?の日記です。

都築響一『夜露死苦現代詩』

2006-12-20 23:15:26 | 私の本
すごく素敵な本だった。

「はじめに」の冒頭はこう始まっている。

< 夜の国道を走る。ヘッドライトに照らされた歩道橋に、スプレーで殴り書きされた「夜露死苦」の文字が一瞬浮かび上がり、頭上に消えていく。
 なんてシャープな四文字言葉なんだろう。過去数十年の日本現代詩の中で、「夜露死苦」を超えるリアルなフレーズを、ひとりでも書けた詩人がいただろうか。>

だから都築響一は、<ほんとうにドキドキさせてくれる言葉を生み出してくれる、現代詩のアウトサイダーたちを僕は探しに行きたい。>と、雑誌『新潮』で毎月連載したのがこの本になったようです。

痴呆老人たちが発する独り言
駄菓子屋の点取り占い
玉置宏の話芸
32種類にもヴァージョンのある「夢は夜ひらく」
エミネムに代表されるヒップホップ詩
ワープロ誤変換の笑える傑作文
ラップに特化したダメレコーズというレーベルの日本語ラップ詩など

どれもおもしろかった。

一番強烈に印象に残ったのは、死刑囚が詠んだ俳句を集めた『異空間の俳句たち』だった。

<菊生という朝鮮人の囚人は昭和25年6月15日に、強盗殺人の罪に問われて死刑を執行されたが、そのたった5ヶ月前の1月末から俳句の指導を受けはじめた。それまで日本語を話すこともたどたどしく、書くことはもちろんできなかったし、読むことすらあいまいだったのが、生まれてはじめて筆を持ち、連れてこられた異国の言葉と格闘し、別れに際して詠んだのが、

  つばくろよ
  鳩よ雀よ
  さようなら            >          

「あとがきにかえて」は、「相田みつを美術館訪問記」で、

<便所と病室にいちばん似合うのがみつをの書だと、多くの人が知っている。立派な掛け軸になって茶室に収まるのではなく、糞尿や芳香剤や消毒薬の匂いがしみついた場所に。>

私も相田みつを美術館へ行ってみたくなった。



コメント
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