岩城法相は平成27年2015年10月9日(金)、法制審議会総会で、「性犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問」をしました。
平成16年改正刑法の衆議院法務委員会の附帯決議「4 性的自由の侵害にかかる罰則は、強盗罪などの法定刑との均衡を考慮して、検討する」などをもとに、第2次安倍内閣の松島法相(当時)が昨年10月に設けた「性犯罪の罰則に関する検討会」の最終とりまとめを受けたものです。
法案提出の具体的なめどの明示はありませんが、提出は2016年秋の臨時国会以降になると予想されます。
まず現行刑法では、第22章「わいせつ、姦淫(かんいん)および重婚の罪」を定めています。第174条から第184条まで。
公然わいせつ、続いて、わいせつ物頒布(はんぷ)、強制わいせつ、強姦(ごうかん)、準強制わいせつおよび準強姦、集団強姦。そして、これらの未遂罪。さらに、強制わいせつ致死傷、淫行勧誘(いんこうかんゆう)、重婚(じゅうこん)を定めています。
強姦罪(刑法177条)は、暴行または脅迫を用いて、13歳以上の女子を姦淫した場合に成立するとし、13歳未満の女性に対しては、手段のいかん、同意の有無を問わず、姦淫した場合は成立します。懲役3年以上。未遂も処罰されます。
法制審のたたき台となる、検討会の最終とりまとめは、ヒアリングをへて、次のように論点を整理しています。
・強姦罪と強姦致死傷罪の法定刑を引き上げる方向の意見が多数だった。
・非親告罪化すべし。現行法で親告罪とされていることで、立件、訴追という手続きでの責任やイニシアチブが被害者に負わされており、心理的負担になっている。
・肛門性交と口淫を、姦淫行為として取り扱うことに反対は少なかった。
・手指や異物の膣・肛門への挿入は、姦淫行為として取り扱うことには反対が多数だった。
・陰茎を膣・肛門に挿入する行為に加えて、挿入させる行為についても処罰することに、肯定的な意見が比較的多かった。
・地位または関係性を利用した性的行為に関する何らかの規定を設けるべきとの意見が多数を占めた。
その一方、
・配偶者間の強姦罪の成立については、とくだん明文化の必要はないとの意見が多数を占めた。
・性向同意年齢の引き上げについては、いずれかの意見が多数を占めるには至らなかった。
としており、法改正はないと思われます。
以上のとりまとめに、法相が「強姦罪と強盗罪が同一に行われた場合の規定の整備」を加えて、諮問しました。
前法相は記者会見で「スケジュールもあわせて審議してほしい」としており、国会への改正法案提出までにはかなり時間がかかるかもしれません。意見がある人は今のうちに法務省に届けた方が、数年後と思われる法案採決に前後して反対運動をするよりも、強い政策実現力を持てるでしょう。
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