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ミステリ感想-『涙香迷宮』竹本健治

2019年06月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
連珠、かるた、ビリヤードと多彩な趣味人でもある黒岩涙香の隠れ家が発見された。
そこには涙香の作ったいろは歌が48首あり、しかも暗号が隠されていた。
史上最年少で本因坊となった牧場智久が謎に挑む。

2016年本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞候補、このミス1位、文春3位、本ミス4位


~感想~
さわりだけ聞いて間違いなく自分には楽しめない作品だろうと思っていたが予想通りだった。
もともと暗号物にほとんど興味がなく、正直言って何が面白いのかさっぱりわからない。
オリジナルのいろは歌を50首以上使用したものすごい労作だというのはもちろん理解できるが、そこに面白さは全く感じられない。
暗号に付き物の作者に対する賛辞もうるさく、「さすが涙香」とか「涙香は天才だ」と繰り返されるが、もちろん作者は竹本健治であり、すごいことはわかるが自画自賛には正直引く。
終盤に出てくるある趣向への「こんなこと、人間にできるものなのか?」が最たるもので、日本語くらい語彙の多い言語なら、多少の不自然さを許容するならこのくらいは十分に人間業の範疇ではなかろうかと冷めた目で見てしまう。

いちおう殺人事件も起こるが添え物程度の扱いで、登場人物の区別もほとんど付かず、はっきり言ってどうでもいい。
暗号といろは歌そのものを楽しめるかどうかが鍵であり、これがまたこのミス1位になってしまったと聞き、「ノックス・マシン」や「独白するユニバーサル横メルカトル」や「ニッポン硬貨の謎」と全く同じことが繰り返され、このミス上位だからいっちょ読んでみるかと、せっかくミステリに親しむ機会を得るはずだったライト層の読者をドン引きさせ、未来のファンを失わせてしまったのではなかろうか、と思えてならない。

また余談だが文庫版では恩田陸が解説をしており、解説は著者の思想が如実に出ることがあるが、やっぱり一般大衆に絶望しディスってて笑った。

最後に、作中で答えが明かされないクイズへの、自分の答えは↓文字反転↓
幸徳秋水に「開戦を支持する記事を書けと涙香に脅されても屈しなかった」と箔を付けさせるため


19.6.7
評価:★★ 4

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