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ミステリ感想-『シートン(探偵)動物記』柳広司

2011年09月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
悪魔と恐れられる巨大な狼との知恵比べの最中、のどを食い破られた死体に遭遇する「カランポーの悪魔」。
カラスの宝物からダイヤを見つけたことで奇想天外な盗難事件に巻き込まれる「銀の星」等、全7編収録。
自然観察者にして『動物記』の作者シートンが、動物たちをめぐって起こるさまざまな難事件に挑む。


~感想~
作者の真骨頂はスパイ小説や戦争小説ではなく、こうした偉人伝の改作にあると思っているのだが、これは内容的には一息といったところ。
というのも主人公のシートンが、これまでの哲人ソクラテスや、神の不在を解き明かしたダーウィンのような奇人・変人と比べればきわめて常識人のため、ちょっとした動物雑学を交えた小ネタ短編集になっているのだ。
しかも他の偉人伝では、多少のトリックの弱さや話の矛盾は、虚実取り混ぜた物語の面白さと、大胆にアレンジした奇人・変人の吃驚な振る舞いで覆い隠していたのだが、元が「動物好きな優しいおじさんの一代記」のため、事件発生と同時にネタが割れてしまうような、トリックの弱さを全くごまかしきれていない。
せめてトリックにもう一捻りがあれば、だいぶ印象は変わっただろう。


11.9.8
評価:★★☆ 5

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