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ミステリ感想-『四元館の殺人』早坂吝

2021年07月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
犯罪AI以相はオークション形式で自身の手伝う犯罪を募集する。
探偵AI相以は犯行を阻止するため、犯行現場と推理した四元館へ向かう。
そこは四つの発電施設に囲まれ、四をかたどった異形の館だった。
探偵AIシリーズ第三弾。


~感想~
前二作はもう誰も覚えてない21世紀本格に挑戦するような、本格と最新技術の融合だったが、本作は見取り図付き(最初から全被害者が載ってる親切設計に笑った)の異形の館で、密室あり、吹雪の山荘あり、謎の住人ありの古き良き館ミステリが繰り広げられる。
もちろんこのシリーズがただの館ミステリで終わるわけがなく、矢継ぎ早に起こった連続殺人の謎が、隠された伏線や些細な手掛かりで紐解かれていくのだが、推理がどんどん斜め上の方向にすっ飛んでいき、とんでもない所に着地する。
いやそれがアリならなんでもアリじゃねえか!? というちょっとやりすぎ感もある代物なのだが、その大仕掛けとシリーズの特色を掛け合わせ、問答無用で納得させる上手さの方がより目につき、すんなり受け入れられた。大胆不敵で豪快なトリックと、このシリーズに期待する物のどちらも満点回答で出された良作である。

そして驚くべきはこんなことを30年、いや20年前にやっていれば間違いなく年間ベスト級の大仕事で、館ミステリの金字塔の一つに数えられたろうが、これだけやっても現代ミテリでは「おっ今回は思い切ったな!」くらいの印象に落ち着いてしまうことだ。
全くの余談だが、去年の陳浩基「網内人」や本作のような、21世紀本格の正解が続々と出ているのだから、くだらない陰謀論なんかからは早く目を覚まして、御大にはこちらへ戻ってきて欲しいものである。


21.7.3
評価:★★★☆ 7

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