~あらすじ~
自身のミスから二人の死者を出してしまい、PTSDに苦しむ刑事・仙道孝司は無期限の療養生活を命じられた。
徐々に回復していく彼は様々な事件への私的な捜査を依頼される。
2010年直木賞
~感想~
作者には「笑う警官」、「制服捜査」など捜査の本筋から外された警官の活躍を描く作品は数多いが、その中でもダントツで地味な一作。
直木賞の選評を見ても「これまでの力作と比べると地味で小粒だけどでも功労賞だし」と消去法で選んだ様子で、それならこの先いくらでも傑作を書ける作家なのだから、無理に選ばず今回は受賞なしでいいじゃないかと思わずにいられない。ただでさえ一般層以外には「直木賞(笑)」と思われてるのに、自らなけなしの権威を下げて何がしたいのだろうか。
また内容にもいくつか不満があり、なにぶん休職中の刑事の私的な捜査のため、現場に入るのにも一苦労……しそうなものだが、この主人公は人脈を活かしてたやすく情報を得てしまうのがまず不可解。警察機構が大勢で捜査した数日後にひょっこり現れた部外者が、ほとんどの場合24時間以内に次々と手掛かりを入手し、他の捜査員をゴボウ抜きで真相にたどり着くのも無理があるし、まず間違いなく真相だというところまでは明かされるものの、私的な捜査の限界で結末はぼかされ、動機その他は置き去りにされるのも物足りない。
中でも5編目の「博労沢の殺人」は僕の読解力の低さを差し引いても、あまりにも説明不足で事件の全容を語りきっているようには思えない。
もっとも短編の分量かつこの設定で結末まで描くには多少の無理は必要だろうが、ならばなぜ短編にしたのだろうという疑問は残る。
純然たる刑事小説でありながらこのミスその他ランキングの常連である作者だが、本作は直木賞の他に何もランキングや賞に絡んでおらず、他の傑作群と比べるとやはり一段落ちる作品であろう。
余談だが選考委員の五木寛之は、選評にあたって作中で使われていない文章を採り上げ論じてしまう失態を演じ、自ら選考委員を辞去したという。
単純ミスや思い込みだとしても「読んでいなくても選評できる賞」という印象を与えてしまったのだから当然だろう。
14.10.6
評価:★★ 4
自身のミスから二人の死者を出してしまい、PTSDに苦しむ刑事・仙道孝司は無期限の療養生活を命じられた。
徐々に回復していく彼は様々な事件への私的な捜査を依頼される。
2010年直木賞
~感想~
作者には「笑う警官」、「制服捜査」など捜査の本筋から外された警官の活躍を描く作品は数多いが、その中でもダントツで地味な一作。
直木賞の選評を見ても「これまでの力作と比べると地味で小粒だけどでも功労賞だし」と消去法で選んだ様子で、それならこの先いくらでも傑作を書ける作家なのだから、無理に選ばず今回は受賞なしでいいじゃないかと思わずにいられない。ただでさえ一般層以外には「直木賞(笑)」と思われてるのに、自らなけなしの権威を下げて何がしたいのだろうか。
また内容にもいくつか不満があり、なにぶん休職中の刑事の私的な捜査のため、現場に入るのにも一苦労……しそうなものだが、この主人公は人脈を活かしてたやすく情報を得てしまうのがまず不可解。警察機構が大勢で捜査した数日後にひょっこり現れた部外者が、ほとんどの場合24時間以内に次々と手掛かりを入手し、他の捜査員をゴボウ抜きで真相にたどり着くのも無理があるし、まず間違いなく真相だというところまでは明かされるものの、私的な捜査の限界で結末はぼかされ、動機その他は置き去りにされるのも物足りない。
中でも5編目の「博労沢の殺人」は僕の読解力の低さを差し引いても、あまりにも説明不足で事件の全容を語りきっているようには思えない。
もっとも短編の分量かつこの設定で結末まで描くには多少の無理は必要だろうが、ならばなぜ短編にしたのだろうという疑問は残る。
純然たる刑事小説でありながらこのミスその他ランキングの常連である作者だが、本作は直木賞の他に何もランキングや賞に絡んでおらず、他の傑作群と比べるとやはり一段落ちる作品であろう。
余談だが選考委員の五木寛之は、選評にあたって作中で使われていない文章を採り上げ論じてしまう失態を演じ、自ら選考委員を辞去したという。
単純ミスや思い込みだとしても「読んでいなくても選評できる賞」という印象を与えてしまったのだから当然だろう。
14.10.6
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