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ミステリ感想-『樹霊』鳥飼否宇

2006年09月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
植物写真家の猫田夏海は北海道での撮影旅行中、「神の木が数十メートル移動した」という話を聞き、古冠村へ向かう。
役場の青年の案内で夏海が目にしたのは、テーマパークのために乱開発された森だった。
その建設に反対していたアイヌ代表の議員は失踪。村では、ナナカマドが謎の移動をするという怪事が多発していた。
"観察者"鳶山の眼は全ての謎を見抜けるのか。


~感想~
大木移動の謎、失踪の謎、足跡の謎、墜落の謎、謎は多種多彩にそろっている。が、それぞれのトリックは非常に小粒。メインであろう移動の謎は、ある有名なトリックの応用で、うまくさばいてはいるが目新しさは足りない。
小粒なトリックたちが連携して、ひとつの大きなトリックを形作っているわけではなく、謎が分散してしまった印象。ひとつひとつ取りだしてみれば細かいトリックが個々に散らばっており、衝撃は薄い。
濃いキャラたちや、アイヌという特異な素材は、物語を退屈させないが、トリックやプロットへの貢献度は低い。動機も弱いなあ。全体として、これまた未完成な作品といったところ。
自然派作家の面目は保ったが、あの鳥飼否宇の新作長編にしては地味に小さくまとまりすぎ、名前が足を引っぱったのかもしれない。


06.9.6
評価:★★☆ 5

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