~あらすじ~
画家志望の忍は、ある日スーパーで偽札の使用を疑われる。10分前に「自分」が同じ番号のお札を使い、買物をしたというのだ。
混乱する忍は、現れた警官・加納に連行されてしまう。だが、連れられた場所には「自分」と同じ容姿・同じ行動をとる奇怪な存在「バイロケーション」に苦悩する人々が集っていた。
第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
~感想~
「日本ホラー小説大賞」をとったのが不思議なくらい本格ミステリとして非常に優れた作品である。
全盛期の西澤保彦のSFミステリのような、と表現すれば、かつての西澤ファンには最もわかりやすいだろう。
いわゆる、その世界でしかありえないルールに基づき、特異なルールにのっとった論理的なミステリであり、かつての西澤ファンは今すぐ買い求めていただきたい。
設定そのものはホラーというよりも、新しい切り口のドッペルゲンガーを描くSFなのだが、物語の展開と結構がまごうかたなきホラーになっている。
主人公が巻き込まれるバイロケーションにまつわる恐ろしい事態はまさに悪魔的であり、もしこれが自分の身に起きたらと置き換えてみるがいい。絶望以外の何物でもない。
そしてその事件自体が、本格ミステリとして見れば一本の芯が通った、論理性の塊であり、全編にわたって伏線が張りめぐらされた綱渡りでもあるのだ。
4ページ前でやめておけばよかった野暮ったい結末だけは小さな瑕疵だが、これだけの傑作に対してそんな重箱の隅をつつくことこそ野暮というもの。これが他のどの賞にもベストにも引っかからなかったとは全く信じられない。
一発限りの破格のデビュー作となるのか、期待の新鋭の誕生となるのか、次の作品はまだか。
今後の期待度込みで9点を進呈したい。
11.11.14
評価:★★★★☆ 9
画家志望の忍は、ある日スーパーで偽札の使用を疑われる。10分前に「自分」が同じ番号のお札を使い、買物をしたというのだ。
混乱する忍は、現れた警官・加納に連行されてしまう。だが、連れられた場所には「自分」と同じ容姿・同じ行動をとる奇怪な存在「バイロケーション」に苦悩する人々が集っていた。
第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
~感想~
「日本ホラー小説大賞」をとったのが不思議なくらい本格ミステリとして非常に優れた作品である。
全盛期の西澤保彦のSFミステリのような、と表現すれば、かつての西澤ファンには最もわかりやすいだろう。
いわゆる、その世界でしかありえないルールに基づき、特異なルールにのっとった論理的なミステリであり、かつての西澤ファンは今すぐ買い求めていただきたい。
設定そのものはホラーというよりも、新しい切り口のドッペルゲンガーを描くSFなのだが、物語の展開と結構がまごうかたなきホラーになっている。
主人公が巻き込まれるバイロケーションにまつわる恐ろしい事態はまさに悪魔的であり、もしこれが自分の身に起きたらと置き換えてみるがいい。絶望以外の何物でもない。
そしてその事件自体が、本格ミステリとして見れば一本の芯が通った、論理性の塊であり、全編にわたって伏線が張りめぐらされた綱渡りでもあるのだ。
4ページ前でやめておけばよかった野暮ったい結末だけは小さな瑕疵だが、これだけの傑作に対してそんな重箱の隅をつつくことこそ野暮というもの。これが他のどの賞にもベストにも引っかからなかったとは全く信じられない。
一発限りの破格のデビュー作となるのか、期待の新鋭の誕生となるのか、次の作品はまだか。
今後の期待度込みで9点を進呈したい。
11.11.14
評価:★★★★☆ 9