小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『六色の蛹』櫻田智也

2024年06月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
狩猟のさなかに起こった銃殺事件。25年前の未解決事件と驚くほど状況は似ており、被害者は自ら注意喚起していたはずの白いハンカチを提げていて…白が揺れた
季節外れのポインセチアを欲しがった少女。1年後の再会を約束したが現れず…赤の追憶
工事現場から見つかった土器と遺体。学芸員は現場を荒らす不自然な指示を出し…黒いレプリカ
ピアニストの父が遺した楽譜が一枚消えた。話を聞いた魞沢はあることに気づく…青い音
他2編。


~感想~
「蝉かえる」で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞の二冠を制したシリーズ待望の3作目。
前作は虫をタイトルに織り込みホワットダニット縛りだったが、本作では色がテーマでホワットダニット限定ではない。しかし期待には十二分に応えてくれた。
主人公の魞沢泉(えりさわ・せん)のとぼけっぷりが数倍になっている気はするが、推理力は健在。どころか本作は魞沢の主人公ぶりがえらいことになっており、身体を張った犯人との対決から古畑任三郎ばりの決め打ち、壮大な勘違いなど八面六臂の活躍。そのうえ書き下ろし2編では●●●の悩みまで吐露して見せるのだからたまらない。
あらすじを描けなかったラス前「黄色い山」は冒頭の「白が揺れた」の正統続編であり、完全決着していたはずの物語が再びクローズアップされるとともに新たな謎となんとも言えない真相が浮かび上がる。
優れたミステリ短編であるのみならず、優れた連作短編集でもあり、さらに優れた人間ドラマで、とどめに優れた探偵譚でもある贅沢な一冊であり、あのただでさえ大傑作の「蝉かえる」に続く作品でここまでのクオリティと、これほどの広がりを見せてくれたのには感嘆するばかりである。
量産が利く作風ではないが、櫻田智也もしかしてゆくゆくはとんでもない所まで行ってしまうのではなかろうか。


24.6.8
評価:★★★★☆ 9
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今週のキン肉マン #454 閉じ込められた正義!!

2024年06月03日 | 今週のキン肉マン
・なぜ殺さないwww
・これを聞けるのはネメシスだけだ
・そいつ億年単位でむちゃくちゃ鍛えただけだからなんの参考にもならないと思うぞ
・剥き出しの脳みそをダイヤモンドの硬度まで鍛える奴だぞ
・3階のバカに愛着を抱くファナティック
・これはサイコマンじゃないな!
・かわいそうなシングマン
・ネメシス全然ヒールなので首を掻っ切るポーズもするw
・吸い込まれるようにエレベーターに乗るネメシスww
・これが男の戦いのオマージュはオタク特有の考えすぎでは
・ファナティックがイスを蹴ってどける所、ネメシスがバンテージを巻き直す所などいちいち絵が上手い。動きが見える
・鳥山明亡き現在こういう何気ない動きの描写が一番上手いのゆででは?
・ウォーズマンより先にこっちが試合開始?
・ネメシスはさすがに勝機がないからな…
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ミステリ感想-『妃は船を沈める』有栖川有栖

2024年06月01日 | ミステリ感想
~あらすじ~
夜の港に飛び込み車中で溺死した男には多額の保険金が掛けられていた。
妻は催眠ダイエットを生業とするがアリバイが有り、借金した友人の元保険屋は足が不自由で、その息子は決して泳げなかった。
さらに数年後、関係者の自宅で男が射殺され…。

08年本ミス7位


~感想~
火村英生シリーズ長編。長編だが2つの中編をつなぎ合わせた構成で、その趣向に関してはあとがきならぬ冒頭の「はしがき」で説明されるが、前半を発表した後にそれにつながる後半を思いついたそうだ。
火村シリーズとしては犯人特定に一撃で至る鋭い推理こそ見ものだが、前半パートでそれはやっちゃいかんだろうというがっかりな禁じ手、というか単にアンフェアな箇所があるのが残念。それを認めたらミステリとして成り立たないと個人的には思う。
また猿の手をめぐる議論は重度のミステリ中毒らしい、しかしそれゆえに納得はするが面白くはないもので、作中では火村が主張するがどちらかといえば作家アリスの方が言いそうだと思った。


24.6.1
評価:★★☆ 5
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6月の新刊情報

2024年06月01日 | ミステリ界隈
7日 実業之日本社文庫
東川篤哉 野球が好きすぎて

13日 角川文庫
エラリイ・クイーン 境界の扉 日本カシドリの秘密 ※新訳
伊吹亜門 幻月と探偵
佐藤究 テスカトリポカ
辻村深月 闇祓
米澤穂信 黒牢城

14日 講談社文庫
五十嵐律人 原因において自由な物語

19日 角川書店
京極夏彦 了巷説百物語

19日 早川書房
芦沢央 魂婚心中

19日 創元推理文庫
市川憂人 ボーンヤードは語らない

20日 集英社文庫
道尾秀介 N

26日 集英社
結城真一郎 難問の多い料理店

26日 新潮文庫
結城真一郎 #真相をお話しします

28日 東京創元社
今村昌弘 明智恭介の奔走
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ミステリ感想-『にわか名探偵 ワトソン力』大山誠一郎

2024年05月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
警視庁捜査一課の和戸宋志は、周囲半径20メートルの人々の推理力を底上げする特殊能力「ワトソン力」を持つ。
和戸の周囲で起こる事件を、居合わせた面々がワトソン力による推理合戦で解いていく。


~感想~
大山誠一郎にとってワトソン力は一つの発明である。
もともと典型的なパズラーを得意としていた作者が、舞台と登場人物と事件だけ数ページで説明したら後は延々と推理パートを描けるおかげで筆はイキイキと乗り、誰が最終的な探偵役になるかわからない目まぐるしい推理合戦も実に楽しい。
どれもこれも期待通りに粒揃いなので個々の短編について詳しく言及しないが、個人的に最も好みだったのは冒頭の「屍人たちへの挽歌」で犯人特定の流れが実に美しかった。
また書き下ろしのラスト一編はボーナストラック的内容で、無理くり連作短編集としてつなぎ合わせる荒業かつ、それまでの各編と異なり無から次々と伏線を取り出しては無為の推理を繰り広げ笑わせておいて、油断したところに重たい一撃を叩き込んでくる見事なものだった。


24.5.28
評価:★★★★ 8
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今週のキン肉マン #453 最強の男を閉じ込める方法!!

2024年05月27日 | 今週のキン肉マン
・まさかここでダンベルが来るとは
・全く気付かないザ・マン面白い
・何ポーズ決めとんねん
・墓守鬼がサイコマンコールして歓迎したの目に浮かぶ
・ファナティックこれでサイコマンの容姿も知らないは無理がある
・命だったダンベル
・ネメシスも不老不死を授かってるはずだがどうなってるんだろうか
・ということは悪魔将軍も固まってる
・ザ・マン、ジャスティスマン、悪魔将軍の強すぎ3人の封印に成功
・飛行中に固まったシングマンかわいそう
・シングマンはまだサンシャインにかっ飛ばされて空を飛んでいるという風潮
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ミステリ感想-『最悪』奥田英朗

2024年05月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
近隣住民の騒音への抗議に苦しむ工場長。
その日暮らしからヤクザの怒りを買い命の危機に陥ったチンピラ。
上司のセクハラと妹の引きこもりに悩む銀行員。
重ならないはずの3人の運命が交錯する。

99年このミス7位、文春9位、吉川英治文学新人賞・候補


~感想~
伏線のカタルシスも見事なオチも意外な結末もない伊坂幸太郎だった。
直木賞作家の筆力で延々と気分が悪くなるだけの話をしかも三通りも描く中盤まではタイトル通りに「最悪」で、3人の運命が交錯する場面までは良かったが、結末が実にいただけない。期待される着地のうちで最も無難な、最もつまらない、最も何も起きない軟着陸で、これだけの長編のオチとしては「最悪」の部類である。
オチが命の群像劇でこれは無い。完全に無い。ストーリーもチンピラがただただ愚かなために成立しているだけなのも残念だった。
というか個人的にはいったい何をどう楽しめばいいのか、何がどう面白いのか全く理解できなかったのだが?
たぶん唯一の「最悪」という言葉が誰から出たのかが面白いのか? だったら全然後発だが「忍者と極道」の方がはるかに処理が上手い。
とにかく自分にとっては全く口に合わない、面白さすらわからない一冊だった。


24.5.23
評価:★ 2
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今週のキン肉マン #452 五大刻の暗躍!!

2024年05月20日 | 今週のキン肉マン
・ペシミマン全然気づかない
・頭も弱そうだ
・行けるぞウォーズマン!
・オニキスマン戦で自分は悪だったと語ったウォーズマンが希望の光を論ずる
・絶望を教えてやるペシミマンと希望を教えてやるウォーズマンの対比
・試合前に形勢を五分以上まで戻した
・ウォーズマンは今クロエの姿でオニキスマンの胸当てを持っている
・ロビンは鎧を失い五大刻の足止めに向かっている
・オニキスマンの胸当てはケビンマスクの鎧そっくり
・満身創痍で劣勢のウォーズマンとロビン交代し鎧を渡すのでは?
・むざむざ交代できないと言うウォーズマンに正体を知りながらロビンはクロエとして接して交代する展開
・ここでネメシスパートに
・サイコマンではなくまずグリムリパーと呼んでしまうのいいね!
・本人をよく知るネメシスが別人と考えるその正体は
・囚われのジャスティスマン!
・ファイティングポーズで固まってるから負けたわけではなく罠にはめられた
・ファナティックといえどもページ外で倒せる相手ではない
・次回数ページでハワーーでタンク破って出てきてもおかしくないからジャスティスマンはすごい
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今週のキン肉マン #451 ウォーズマンライジング!!

2024年05月13日 | 今週のキン肉マン
・一番手ウォーズマン!
・パピヨンマンに続き時間超人が実力を見せそうな試合順
・ウォーズマン読み切り読んだような読んでないような…
・量産型クロエwww
・クロエのデザインここからなの!?
・ペシミマンむちゃくちゃしゃべるじゃん
・ニキニキwwwww
・なんJ民みたいな笑い声でだいぶ株が下がった
・まさかのクロエ変装!!!!!
・不思議なほどに馴染む姿――は絶対流行る(※流行った)
・死ななければいいやと思ってたウォーズマン戦が超面白くなった
・無口キャラかと思ったら全然そんなことなかったペシミマンもだいぶ株下がったし行けるぞ!!
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ミステリ感想-『ぼんくら』宮部みゆき

2024年05月11日 | ミステリ感想
 


~あらすじ~
江戸の町のどこにでもある長屋の一つだった鉄瓶長屋に次々と起こる大小さまざまな事件。
若き差配人・佐吉の奮闘むなしく一人、また一人と住民は去っていき、のんびり屋の同心・井筒平四郎はその裏に何かを感じ取り、美少年の甥の弓之助らとともに探りを入れる。

00年文春9位


~感想~
江戸時代が舞台だがそこは時代小説を何度となく書いてきた国民的作家なので心配無用。専門用語も適宜説明が加えられ読むのに支障はない。
文春9位とミステリ的に評価されたのも納得で、冒頭から殺人や日常の謎に分類される事件が次々と起こり、裏にはもちろん何かが隠されている。
一癖あるしかし憎めないキャラ立ちした登場人物がいきいきと描かれ、文庫版で上下巻を少しも飽きさせずに読ませてくれ、勧善懲悪とはいかないどこかやりきれない物語を、末尾の「幽霊」でしかるべき人物がしかるべき人物へやることをやるのが実にお見事。宮部みゆきは本当に物語の着地が上手い。
ランクインしていないが続編もあるそうなのでいつか読んでみたいと思う。

なお直前に読んだ米澤穂信「Iの悲劇」が大小さまざまな事件により住民が次々と去っていき裏に何かがあるプロットまでは同じだったが、全くの別物だったことを付記しておく。


24.5.11
評価:★★★☆ 7
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