内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

私のなかの「フラッシュバック」的なもの

2023-09-15 17:59:39 | 雑感

 『明鏡国語辞典』には、「ピーティーエス-ディ【PTSD】」が立項してあって、「生命の危険を感じるような恐怖や絶望を体験したあとに継続して起こる、不安・うつ状態・パニック・フラッシュバックなどの障害。心的外傷後ストレス障害」と説明してある。
 この説明のなかの「フラッシュバック」を同じ辞書で引いてみると、第一の語義は映画の技法としてのそれで、第二の語義は、「過去の麻薬使用時の幻覚・妄想や、災害・事故などの強烈な体験の記憶が、あるきっかけで再発すること」となっている。第二の語義でいつごろから使われるようになったのかはわからない。
 ジャパンナレッジのなかの『日本国語大辞典』には、驚いたことに、上掲の第一の語義のみで、第二の語義がない、と思ったら、「フラッシュバック現象」が別に立項してあり、そこには、「薬物乱用による中毒で幻覚や妄想などの症状が生じるようになると、治療により回復したようにみえても小さなきっかけで幻覚・妄想などが再び起こる現象」とあった。
 『現代心理学辞典』(有斐閣)では、「フラッシュバック」の項はただ「⇨心的外傷後ストレス障害」と別項送りなっているだけ。その項のなかに、「症状には,①心的外傷的出来事が再び起こっているように感じたり行動する(フラッシュバック)」とある。
 私自身は、上掲の定義に当てはまるようなフラッシュバックの体験はないが、まったく突然かつ不随意的に、遠い過去の嫌な体験あるいは一場面がふと蘇り、なんで今こんなことが思い出されなくてはならないのかとしばし不快な気分になることはときどきある。
 その過去の嫌なことそのことが今の気分を不快なものにするというよりも、なんでこんなつまらないことが何十年経っても記憶に残っているのだろうかとうんざりするのだ。自分で自分にうんざりするというよりも、自分のなかの制御できない部分に不意打ちを喰らわされることに対して、いい加減にしてくれ、と言いたくなる。
 日常生活に支障をきたすわけでもなく、取るに足りないことと言えばそれまでだが、私のなかにも「フラッシュバック」的なものを引き起こす素因はあるということなのだろうか。