毎年夏の終わりから秋口にかけての季節の変わり目は、これから一年あるいはそれ以上フランスで留学生として過ごそうという人たちと留学を終えて本国に帰っていく人たちとが入れ替わる時期でもある。私の職場や身近でも、その入れ替わりが毎年繰り返される。
これから一年を過ごす留学生たちには、その一年が楽しく充実したものであれと願い、そのために自分に手助けできることがあれば、喜んで力になる。留学を終えて帰国する人たちには、フランスで過ごした一年の経験が学問的にも人間的にもこれからの人生の良き糧となっていくことを心から願い、その遼遠なる前途にエールを送る。
彼らの留学中にこちらで知り合い、それがきっかけで帰国後も付き合いが続くこともある。その中から、今でも消息のやりとりがあり、機会に恵まれればフランスあるいは日本での再会を喜び合えるような、私にとって大切な関係も生まれた。
それらの人たちの留学後の活躍を知るのは嬉しい。幸いなことに、私がこちらでいくらかでも親しく付き合うことができた人たちは、ほぼ全員、帰国後にしかるべきポストを得ている。もちろんそれはそれらの人たちにそれだけの実力があるからにほかならない。
しかし、楽しいことばかりではない。悲しく痛ましい結末の記憶を消すこともできない。自分の無力を深く恥じざるを得ないこともあった。何年振りかに再会して、その心の醜いまでの変貌振りを目の当たりにし、人はここまで堕落できるのかと愕然としたこともある。
今日、また一人、フランスを立ち去る人がいる。充実した良き一年の留学生活であったろうと思う。帰国後さらなる研鑽を積み、日本に拠点を置きつつ、国際的に活躍できる研究者になってほしい。それだけの素質を持っているのだから、きっとそうなるだろう。
私は、これからも、来る人たちを迎え、去る人たちを見送る者として、「ここ」にとどまり続けるだろう。