朝7時半羽田発関空行のANA便で帰阪。大阪もやはり暑い。でも、もうこの猛暑にも慣れてきた、と強がりを言っておく。でも、実に、暑い。
キャンパス内のゲストハウスに一旦荷物を置きに戻ってから、国際センターに例の学生とそのホスト・ファミリーとの間のトラブルについて、その後の経過を担当者に聞きに行く。その担当者から東京にいる私にメールで問題の報告があった翌日、私の方から当の学生宛に相当厳しい内容のメールを送り、ホスト・ファミリーの言うことをもっとよく聞くように強い調子で注意しておいた。普段からコミュニケーション障害のある学生で、相手がフランス人であっても、なかなかまともな会話が成立しない。授業中はいつも独り他の学生たちから離れて座り、この3年間、彼が他の学生と話しているのを私は見たことがない。成績もパッとしない。その学生が今回の日本語研修への参加を希望してきたとき、正直驚き、かつ不安に思った。フランスでフランス人同士であってもコミュニケーションが難しいのに、日本という、まったく異なった文化と生活習慣の国に来て、しかも日本語能力も低いとなれば、コミュニケーション上何か問題が発生しないほうが不思議だろうとさえ思った。とはいえ、本人がそれでも日本に行こうと思うのだから、きっとそういう自分の殻を打ち破りたいという気持ちもあるのかもしれないと、参加を希望通り認めた。
しかし、やはり問題は発生した。「想定内」などと呑気なことはいっていられない。迷惑を被っているのは、3週間朝晩の食事も含めて面倒を見てくださるホスト・ファミリーなのだから。今回のことが理由で、もうこりごりだなどと思われてしまっては、いつもホスト・ファミリー探しに苦労されている受け入れ大学にも申し訳が立たない。今日、当の学生が午前中の日本語の授業を終えて教室から出てきたところで、呼び止め、事情を聴く。担当者の話によると、ホスト・ファミリーが相当厳しく本人に直接注意してくださったようで、それによって本人の態度にも改善が見られ、そこへ私からのメールも入ったこともあり、見たところ、何が問題なのかはよく理解できているようだった。もうホスト・ファミリーには丁寧に謝ったし、これからは気をつけると本人は言う。「これからプログラム終了日まで私もずっとキャンパスにいるから、どうしてもうまくコミュニケーションが取れない場合は、私に相談するように。そのための引率なのだから」と伝えて別れる。
これは普段からの印象でもあるのだが、何か心の深いところに傷があり、そのことに本人はそれとして気づいてはおらず、結果として、他者への恐れからなのか、いつもこわばった話し方しかできず、それゆえ他者との関係がうまく作れない。本人もそれはわかっており、きっと苦しんでいる。でも、自分ではどうすればいいのかよくわからない。つい独り合点の反応で会話を躓かせてしまう。今回の問題がこれで解決したかどうかわからない。これからプログラム終了まで経過を見守りつつ、場合によっては私が直接ホスト・ファミリーと話し合う必要も出てくるかもしれない。
こんな時にはちょっと気分転換したい。都合のいいことに、キャンパスから徒歩数分のところにスイミングスクールがある。先週土曜日にその前を通りかかったときに、掲示板に月極のフリーコース会員というのがあるのを見つけ、スタッフに説明を受けておいた。料金設定もまあまあ良心的だし、そのスタッフの対応がとても丁寧かつ気持ちのいいものだったので、今日の学生との面談の前に、入会手続きに行った。その時は、月会費の他に入会金というのを請求され、合計1万円を超えてしまった。フリーコースのある日に毎日来ても9回しか来られないから、ちょっと高いとも思ったが、普段のパリでの習慣を維持するためにはそれくらいの出費は仕方ないだろう。面談を済ませた後、本日のフリーコースの時間帯に合わせて再度プールに行く。すると受付で、さっき入会手続きのときに対応してくれたスタッフに呼び止められ、スイミングスクールの責任者に私のケース、つまり1月間だけの入会について報告したところ、そのような特殊な場合には入会金は取らなくていいし、月4回のみのコースの料金でいいと言われたとのことで、ほぼ半額を返金してくれた。これはまったく嬉しい「想定外」。しかも、フリーコース用の1コースを事実上独占できて、一時間自分のペースで泳ぐことができた。これは私にとってとても贅沢な時間。ゲストハウス滞在中、皆勤を目指す。