三日月の寝台で、月の少女はそっと目を開きました。
しんと冷えた静けさに満たされた夜。
少女はふっと、溜息を吐きました。
どうしてかしら。声にならない声で呟きます。
きらきらと光る星達の囁きも、少女の心を満たしてはくれません。
通りすぎる流星の、涼やかな眼差しにときめきを感じることもありません。
瞳を上げるとそこに、紅く燃える光が見えました。
こんなにも遥か遠くにいるというのに。
その暖かさが美しさが気高さが、少女の胸を貫くのを感じました。
少女はそう―――恋をしているのです。
叶わない恋だと分かっていても・・・それでも少女の瞳は追いかけてしまうのです。
ひまわりが見上げるように、うっとりと。
誰にでも優しく抱き締めるような眼差しを向ける、光の少年。
月の少女は、太陽に恋をしているのでした。
真昼の空で、少女は寝台から伸ばした足をぶらぶらと揺らしました。
地上では、小さな電気達が沢山、綱渡りをしています。
黒い線の上を、一歩一歩踏みしめながら。
それでも驚く程のすばやさで歩いていきます。
一人の電気が、彼女の視線に気付いて顔を上げました。
「やあ。」
彼は上手にバランスを取りながら、彼女に挨拶をしました。
「こんにちは。」
彼女も笑顔で挨拶しました。
でも、なんだか上手く笑えません。
そんな彼女の様子に、敏感に彼は気付きました。
「どうしたの?元気ないみたいだけど。」
「うん・・・ちょっとね。」
言いよどむ彼女の顔を見て、彼はふっと笑いました。
「好きな人が出来たんだろう?」
少女は吃驚して声も出ません。
彼はにっこりと笑いました。
「太陽に恋するものは多い。そんなに不思議なことじゃないさ。彼ほど雄大な存在はいないもの。」
「そう・・・そうなのよね。同じ空にいるのに、私は見つめるだけ。それが辛いの。」
少女は重い溜息をつきました。
そんな様子をじっと見ていた彼は、少しだけ悪戯っぽい微笑みを浮かべて言いました。
「大丈夫。近いうちに、彼に会えるよ。」
「本当!?いつ?」
「そう・・・多分数週間すれば・・・きっと。ニンゲン達が噂してた。真昼に夜が訪れる日が来るって。」
「真昼に夜?」
「うん。僕も、それ以上は分からないんだけどね。」
電気の青年は照れたように笑いました。
本当でしょうか?
いつもただただ遠い存在だった太陽の少年に会える?
何度も夢に見たことです。
それが叶えられる・・・まるで不思議な御伽噺を聞いたような心地がしました。
電気は笑って手を振って行ってしまいました。
月の少女はそれを、ぼんやりと見送りました。
ある日の夜。
少女は、彼女を呼ぶ声で目が覚めました。
見ると、あの電気の青年がいました。
「なあに?」
「あのね、いいことを教えてあげる。」
「いいこと?なんなの?」
「明日、彼に会えるよ。」
「明日?」
途端に、少女の目がぱっちりと開きました。
「本当に?本当に彼に会えるの?」
「うん。間違いない。」
少女は半信半疑でしたが、それでも嬉しさでぽーっとなりました。
太陽の少年に会える。
それは夢の中の人に会うような、とても現実感のないことでした。
ああ、それでも。
彼に会えるのであれば。
月の少女の胸は、痛い程高鳴っていました。
息をするのも苦しいほど、彼女は太陽の少年に恋をしていたのです。
「明日・・・。」
少女は、噛み締めるように呟きました。
待ちに待った朝が訪れ、少女はそっと空の軌道を歩いてゆきます。
前方を見ると・・・軌道の先に・・・太陽の少年がいるではありませんか。
少女の胸が躍りました。
電気の青年の言葉は正しかったのです。
とうとう少年と会えるのです。
少女は嬉しさのあまり体が震えるのを、止めることが出来ません。
ゆっくりとゆっくりと、踏みしめるように近づいていきます。
段々と彼女の体は熱くなってきます。
それもそのはず。少年は太陽です。
近づくにつれ、その熱はどんどん強さを増していきます。
それは熱いというより、痛みでした。
眩しくて閉じようとする瞼を無理にこじ開け、彼女はそれでも進んでいきます。少年が優しい微笑みを浮かべているのが、微かに見えました。
少女は、自分の体が焼けて溶けていくような気がしました。
意識が霞み、視界がぼやけ、それでも足をなんとか前へ前へと進めます。
やがて。
少女は少年の前へとたどり着きました。
何か言わなければ―――そう重いながらも、貫く痛みに声が出ません。
震えながらも、そっと少女は手を差し伸べようとしました。焼ける手は重く、微かにしか上げることが出来ませんでした。
それでも、少年には彼女の想いがしっかりと伝わってきました。
「やあ。」
鈴を鳴らしたような、奇麗な声が聞こえました。
幻でない証拠に、少年は微笑んで自ら手を伸ばし、少女の手を取りました。
「やっと会えたね。」
ええ。そう言いたいのに、体が動きません。少女は微かに首を動かしました。
「ずっとずっと君に逢いたいと思ってた。遠くから・・・遥か遠くから、君を見てきたよ。」
本当に?
「白く美しく光る君の姿が、この孤独な天空の中で唯一僕を慰めてくれる存在だった。」
優しい少年の言葉に、少女は微笑みました。
嬉しさで胸が一杯になり、耐え切れないような痛みや眩しさを忘れました。
「君が・・・。」
その後の言葉は聞こえませんでした。
少女は体に強い力を感じました。軌道が動いているのです。少女はなんとか踏みとどまろうとしました。でも、体力のない体ではどうにもなりません。
少しずつ、少しずつ、少年から引き離されていきます。
少女は懸命に少年を掴もうとしましたが、もう小指すら動かすことは出来ませんでした。
その時少年の体がふっと動いて、少女に覆い被さりました。
少女は眩しさのあまりに目を瞑りました。
珊瑚色の少女の唇に、激しく燃えるような熱を感じました。
でもそれは、一瞬のこと。
「大丈夫・・・また会える・・・。」
囁くような、少年の声が聞こえます。
「何年・・・何十年・・・何億年の先に・・・僕達はまたここで、短い逢瀬を交わそう・・・。」
子守唄のように波うちながら、少年の言葉が少女を包み込むのを感じました。
少女は頷き、ぎりぎりに保っていた意識を手放しました―――。
三日月の寝台に横たわりながら。
少女は相変わらず、遠くの太陽を見つめています。
それでも、その口元には微笑みが浮かんでいます。
激しい火傷をおった少女の唇も、ようやく完治しました。
でもそんなことは、ちっとも気になりません。
「約束があれば、会えると分かっているなら、辛くはないわ。」
呟く少女の目が、きらりと光ました。
そうして目を閉じて、暖かい眠りの中へと沈んでいきました――――。
書いていて、おしりのあたりがムズムズムズ・・・。
ちなみにこの話、どういう意味か分かった方いますかね~?
これですね、日食の話なんです。
太陽に月の影が降りて出来る日食の、それも皆既日食を童話ちっくにして描いてみました。
分かり辛いかな~と思い、皆既日食の写真をUP。
やっぱり分からないかな~と思い、後書きを追加。
なんとなく、日食=太陽と月がキス、というイメージが浮かんできて、それで月の少女と太陽の少年という恋人同士の物語が浮かんできました。
いや、しかし。
恥かしい。
やっぱり腹黒い人間に、純愛はムズカシイのであります。
鳥肌が立ってしまってしょうがないでありますにょろ☆
でも童話か~ ぶっちゃけ そういう見方はしなかったな~(現実的スパイスのファンタジー系かと) すまんス
文章の羅列とかじゃなくて ぱっと見で 見やすい言葉で言葉少なで もっと色々たりない感じw(あくまでイメージ)←批判ではなく個人的思った事の話
ついでに 日食をクレヨンちっくにするとか
(くどいようだが 自分イメージワールドで言いたい事言ってるダケで批判ではない)
でもすごいのは 「一人の電気」!!
キミだ!!! イイ電気っぽいしww
>腹黒い人間に、純愛はムズカシイのであります
・・・ソンナコト ナイコト ナイヨ
じゃ無かった(汗) 無いよ
イヤ イヤ マ・・マジ・・デ・・デ?
でも、そう、自分も「童話」と書きつつ、明らかに「子供向けの童話」ではないなと思いました。
でも、ファンタジーという程夢一杯でもないしなあ・・・・と思い、なんとカテゴライズすればいいのかちょっきり悩みましたとも(笑)
まあ、大人向けの「童話」ってことでヒトツw
>でもすごいのは 「一人の電気」!!
改めて見ると「一人の電気」って変な表現ですね(苦笑)
なんかですねー、電線の中を電気が駆け抜けていく様を具象化した時に、「綱渡りする青年」なんて素敵~~と思って書いたんですよ。
それに電気なら情報屋っぽいしなあ・・・とねw
>・・・ソンナコト ナイコト ナイヨ
>じゃ無かった(汗) 無いよ
このカタカナがとても「棒読み」っぽくてスイナー(★∀★╬)
怒ってないですよー。
ないですよー。
ほほほほほ。
あっち チョロチョロ こっちチョロチョロ
して 戻ってきたら もう返答しとる==\(*´Q`*)/
って事で って あれ?
>(★∀★╬)怒ってないですよー。
・・・い いやだな~ もう
>ないですよー。
(0д0∥)・・ね ねん押しとる
>ほほほほほ。
(゜Д゜;∬アワワ わ 笑ってる・・・ビクビク
ふ~ん えい ← 小石投げた&幼児退行のフラグ回収ww
わ~い 蝶々 蝶々~~~脱兎
ε=ε=ε(ノ^∀^)ノ ~~ ◣◢
ではなぜ察知出来たか!?
斜め45度上空で見てましたから~~~。
勿論嘘です (☆∀☆)タブンネw
相変わらずの小粋なコメントありがとうございます。
嬉し楽し。
また是非とも来て下さいまし~~~。
マッハで私もログインしますのでww