2024年09月11日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア漁業庁長官 漁業分野における政府間協定 ロシアの一方的不利益は現時点で検出されていない]
ロシア上院は、2024年8月、漁業分野におけるすべての政府間協定について、ロシアにとっての利益の有無の分析を促進するようにロシア農業省と漁業庁に対し勧告した。
上院議長ワレンチナ・マトヴィエンコは、この作業の遅れを指摘、「冷静かつ徹底的な検査」を実施するように指示、関係部局が外務省に提案を送付、外務省は調査結果により、国益に反し、非友好国等に一方的な特権を与える条約の破棄案の作成が求められた。
この件についてロシア漁業庁長官シェスタコフは、2024年9月3日から同6日までの間、ウラヂオストクにおいて開催された第9回東方経済フォーラムの枠組みの中で、これまで様々な協定を分析したが、ロシアが一方的な不利益を被るものは検出されなかったと語り、現在は、この作業を行っていないと加えた。
また、多くの異なる2国間協定が存在し、その中には、隣接海域の“またがり資源”の共同管理の合意も含まれていて、これがなければ、当該資源が破壊されていた可能性があるとノルウエーとの合意を例示、ロシアにとって極めて重要だと言及した。
ロシア上院は、2024年3月6日、英国との漁業協定の破棄法案を採択した。
2022年3月に英国が貿易での最恵国待遇を停止したことへの報復として、バレンツ海での英国漁業の権利を剥奪する当該法案が提出され、同年2月21日、ロシア下院を通過していた。
ソ連政府とグレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国政府は、1956年5月に漁業協定を締結した。
この協定は5年間を期間として締結され、永久延長の可能性があり、一方の当事者が破棄するまで協定は有効である旨が規定されていた。
英国はコラ半島の沿岸、カニンノス岬の東側の本土沿い、およびコルグエフ島沿岸のバレンツ海水域で漁業に従事する権利を取得していた。
一方で、英国漁船がソ連海域で操業したのは1980年代末までだけだった。
ソ連崩壊後、ロシアがその法的後継者となったため、協定は引き続き有効であった。
上院では、英国漁船が2000年以降ロシア海域で漁業活動を行っておらず、当該協定が実質的な意味を失っていることも指摘された。
また、2000年以降、ロシア漁船も英国海域での操業がない中、当該協定が一方的なものであり、ロシア漁船に同様のまたは相応の権限や利益を与えていないことが指摘された。
マトヴィエンコは、当該採択にあたり、協定を破棄する決定の正しさを強調し、漁業分野におけるすべての政府間協定について、ロシアにとっての利益の有無の分析を開始することを提案した。
これを受け、シェスタコフは、マトヴィエンコが漁業分野におけるすべての政府間協定について、ロシアにとっての利益の有無の分析を開始する提案をしたことを支持すると表明したが、一方で漁業協定のメリットやデメリットの問題は複雑で、バランスのとれたアプローチ、包括的な検討をする必要があると強調、各国がロシアEEZに入域し、単純に操業を行うことを許可するという協定を結んでいないと説明して、同時にロシア漁業者が相手国EEZに入域するものや、 金銭補償と引き換えに漁業権をロシアが提供するという協定も存在しており、 儲かるか儲からないかという問題は常に諸刃の剣だと言及した経緯がある。
また、それより先の2023年6月、シェスタコフは2国間漁業協力協定の維持の有益性を指摘し、相互の入漁ばかりでなく、またがり資源の管理からもこれが重要であることに言及している。
シェスタコフは外交政策の状況が、漁業分野における国際協力にも強い影響を与えていると指摘、“魚に境界はない”という定立が、相互関係と互恵協定を維持するための合理的な根拠として機能していると述べ、漁業と水棲生物資源の保護の分野におけるロシアの協定を履行するために多くの取り組みが行われてきたことを評価、2国間政府間協定の枠組みの中で、ロシアの伝統的な相手国と協力を維持して、さらにこれを発展させると加え、あらゆる制裁にもかかわらず、多くの非友好国を含む漁業協力の主要相手のすべてと2国間漁業委員会が開催され、こうした協力はロシアにとって重要でかつ有益だとの意見を明らかにしていた。
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