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元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「雨族」 断片50-園の内側、赤い空~6.魚:kipple

2010-01-24 12:13:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片50-園の内側、赤い空
      6.魚


 魚とは何だろう。

 知っているか? 魚は古代キリスト教のシンボルだったんだ。

 私は、魚を喰えない。

 目がいやだ。

 ヌルヌルしている。

 生くさい。

 しかし、殆んどの日本人はまるで復讐でもするように魚に固執して喰いまくる。

 彼らは神を殺し、毎日自殺しているのだ。

 西洋文明への見せしめなのだ。

 ベティは、私が、

「奴が、クロエを殺し、僕が奴を殺した」

 というと、目玉の大きな魚を納豆に混ぜて、もぐもぐしながら、

「だんびらは使ったの?」

 と言った。


 だんびらは柱時計の下に、ゆらゆら、ゆれていた。


 私は、小さく首を振って、

「僕は、論理的には殺したが、物理的には何もしていない。奴は僕の二重身なんだ。奴に物理的な死が訪れるなら、僕は消えてしまう」

 と言った。


 ベティは、カチカチと歯を鳴らした。

 何か言いたそうだったが、言うと、地球が、ガラガラと崩れていきそうだという風に、口をつぐんでいた。

 私は、頭が痛くなった。

 まるで、地球を、後頭部に猛スピードでぶつけられたようだった。


 ビルが鉄球で砕かれるように。






断片50     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片49-園の内側、赤い空~5.失意:kipple

2010-01-23 19:55:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片49-園の内側、赤い空
      5.失意


 私が正午に私の可愛い女の子のマンションに行くと、私の可愛い女の子は、すでに死後硬直が始まっていた。

 私は再び昨夜の夢の感触に襲われ、目を細めた。

 強烈な光に包まれたように思ったのだ。

 私の可愛い女の子は、舌を巨大ななめくじのように突き出して死んでいた。

 絞殺だ。

 犯人は言うまでもないだろう。

 これで、私の一世一代の冒険計画は、オジャンになった。

 彼女なしでは何の意味もない。

 さて、私はこれからどうするのだ。

 日常に戻り、日々を生きる。

 私は再びコンピュータ・プログラマの生活へと戻るのだ。

 機械との単調なたたかいへと。

 私は匿名で警察に電話して殺人を知らせると、37万円を富士銀行の私の普通預金口座に入れて、私の別の私の可愛い女の子の待つ白いアパートへ帰った。

 私には、私の可愛い女の子が、まだ3人いた。

 殺されたのは、クロエ。

 残りはベティと今日子と「イパネマの娘」。


 私のアパートにいるのは、ベティだ。






断片49     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片48-園の内側、赤い空~4.決意:kipple

2010-01-22 19:58:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片48-園の内側、赤い空
      4.決意


 さて私は金のために私の可愛い女の子を奴に売った訳だが、気になるのは、奴が死に際に残した言葉だった。

「どうでもよかったんだ。」

 奴は、どうしてこう言ったのだろう。

 奴は“どの娘でもよかったんだ”と言ったのかもしれない。

 私には、そうじゃあないのだ、どうでもよいわけにはいかない。

 しかし、たいていの場合、世の中は、どうでもいいようにできているのだ。

 知的生命体が何かの利益のために血まなこになっている時は、そのニュアンスは少しは薄れるにしろ、それだって、傍から見りゃどうでもいい。

 宇宙は、どうでもいい。

 運命に、くだらん介入は無意味なのだ。

 私たちは、すでに全てが決められている。

 私が、いつどこでどの女と交わるかも、とっくの昔に決定されているのだ。

 とにかく、私は金を手にする事ができた。

 数えてみると、37万円だった。

 私の可愛い女の子は奴にとって、それだけの値打ちがあったのだ。

 私には、その事に関しては、つまり、宇宙の法則に反して、どうでもよくはなかった。

 少なくとも私は私の可愛い女の子を愛していたからだ。

 しかし、奴は私以上に私の可愛い女の子を愛していたのかもしれない。

 しかるに、私は思う、奴の言葉は、ウソッパチだ。

 しかし、死んだ奴の事は、どうでもいい。

 いかに、しぶとく存在しようと、私の世界にすでに奴は、いない。

 私は、これから、この金で、私の可愛い女の子と冒険の旅に出るのだ。


 人殺しと、幻覚剤とSEXが自由な地上の楽園へ






断片48     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片47-園の内側、赤い空~3.殺人:kipple

2010-01-21 20:51:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片47-園の内側、赤い空
      3.殺人


 待ち合わせの時間に30分遅れて奴はやってきた。

 奴は深夜の労働を終え、自分の住み家、この高層ビルのてっぺんにある、掘っ立て小屋に帰ってきたのだ。

 奴はジーンズの尻ポケットをできものの様に膨らませ、チェックの何ヶ月も洗っていないようなシャツを着ていた。

 そして、そのいでたちで、奴は塵一つ付いていないピカピカに光る革靴をはいているのだった。

 奴は私に出会うなり煙草をねだり、煙の中から疲れた声で神妙に言った。

「どうでもよかったんだ。」

 私は夢の感触を思い出し、少しふらふらした。

 私も煙草をくわえ、マッチ棒で火を付けながら言った。

「俺にとっては、そうじゃない。」

 奴は1/3も吸わぬうちに、コンクリートでもみ消して、あくびをした。

「うるせえよ。金はやるから、俺にからむなよ。」

 彼は言った。

 私は奴の汚らしい尻ポケットからつかみ出された数十枚の1万円札を受け取り、奴を殺した。

 実際のことろ、私は奴を殺してはいない。

 しかし、私は私の世界から奴を抹殺した。

 私にとってもう奴は存在しない。

 見えない。

 何もない。


 私は朝の銀色の光の中に消えて行った。





断片47     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片46-園の内側、赤い空~2.去年マリエンバートで:kipple

2010-01-20 19:50:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片46-園の内側、赤い空
      2.去年マリエンバートで


 私は奇妙な夢から目覚めると、とにかく立ち上がり、VTRデッキのスウィッチを入れて、テープを再生し、夢を思い出そうとした。

 私はカーテンを開け、ウェットスーツのまま、インスタントコーヒーにミルクをたっぷりと入れて、カフェ・オ・レを作り、白い丸テーブルに座り、ぼんやりとキャメルマイルドをくゆらせて、夢の事を考えた。

 VTRデッキはアラン・レネの「去年マリエンバートで」を再生していた。

 しばらくして私は夢の中の出来事を思い出そうとする努力をうち切った。

 何も思い出せなかった。

 ただ、何か、背中に蝋で付けた羽が溶かされていくイカロスのような、落下の前兆のようなものを感じただけだった。

 落下。

 私は嫌な気分だった。

 私は、今日、高層ビルの屋上で顔も見たくない奴と待ち合わせをしていたのだ。


 ベティは、まだ寝ていた。





断片46     終


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「雨族」 断片45-園の内側、赤い空~1.ポルターガイスト:kipple

2010-01-19 19:20:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片45-園の内側、赤い空
      1.ポルターガイスト


『うすら寒い』

・・・

「爽快です。」

 洪水の様に押し寄せる光の向こうのどこかから、はっきりと声が聞こえた。

 あまりにも厖大な光量のために私は自分が立っている場所を正確に見定める事ができなかった。

 それより、いったい、私は立っているのか、それとも寝そべっているのか、それさえも正確に把握する事ができなかった。

「爽快です。」

 再び、パッサリとキャベツを真っぷたつにするような切れ味の良い声がした。

 私は質問してみた。

「質問に答えてくれるかい。」

 この質問は相手にある程度の動揺を与えたようだった。

 それが、どんな種類のどんな形の動揺だったかは、まったく分からない。

 とにかく相手は何かの狙いを外されて、戸惑いを見せた。

 それというのも、圧倒的な光の中にポッカリと古い井戸のような穴が口を開けたのだ。

 穴は斜め右前方に突如として姿をあらわした。

 それと同時に大量の光は、ドクンドクンと脈打った。

 私はなんとなく私の姿勢が分かってきた。

 私は、うつ伏せになって光の床に寝そべった形で光に包まれていたのだ、たぶん。

 私は穴をよく観察した。

 穴は、ちょうど私が通り抜けるのに必要なだけの広さを有していた。

 そして、よく分からないが、どうやら穴の向こうは海のようだった。

 穴いっぱいに、さざ波をたてている海面のようなものが見えるのだ。

 しかし、いったい海面は、その穴から、どのくらいの距離をもって隔てられているのか、私にはまるきり分からなかった。

 穴に密着しているようにも見えるし、何100メートルも離れているような気もするのだ。

 そこで私は、時折、白く光るさざ波の大きさに注目してみる事にした。

 しかし、それも、あまり私の観察に役立たなかった。

 穴いっぱいに現れるさざ波もあれば、目に見えぬ程、小さなものもあるのだ。

 私は、幼い頃に見たランプの灯を思い出した。

 夕暮れから薄闇をへて、夜に至るまで、祖父の家の軒先に吊るされたランプの灯は、小さくなったり大きくなったりした。

 子供の頃の私には、時の変遷と、人間によってともされた「作られた光」に対する不定形な錯覚に、異様な程の幻想性を感じさせられたのだ。

 さて、私のする事といえば、もうひとつしかなかった。

 その穴に身を投じるのだ。

「爽快です。」

 また、あの声がした。

 私は、こう言って、オルフェが鏡に飛び込むように穴に入った。


『「プラーグの大学生」という映画を観たことがあるか?』






断片45     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片44-「うぶ」:kipple

2010-01-18 23:51:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片44-「うぶ」


 「うぶ」なものについて。

 「うぶ」とは何か。

 僕は「うぶ」が好きだ。「うぶ」の仮面は憎む。

 飛び交う「うぶ」の群れは、ゾッとする。

 「うぶ」は群集の片隅でひっそりとベンチに座って何かを待っている。

 「うぶ」とは、「うぶ」を解放しようと望みながら、解放についてのポイントと、その後を想像力で補い、現実のプレッシャーに対して、びくびくしている状態だ。

 解放されてしまった「うぶ」は、どうなるのか?

 「うぶ」は以前と違う「うぶ」に変容していくか、極小の「うぶ」になり、殆んど消え入りそうになって、その後の存続を図る。

 「うぶ」は質と量を変える。

 僕らの「うぶ」は、僕らのものだ。

 僕は「うぶ」は出来たら質量とも変わらずに残されていけばいいなと思う。

 が、経験というものは「うぶ」を解体し、定着させる。

 「うぶ」は、僕らの人生において、心の疲れに関わる重大な要素である。

 僕たちは少なくとも、未経験状態の「うぶ」を感触として、又、幻想として、内部に留めておくべきなのだ。


 何故ならば、僕らは昆虫とは違うからだ。






断片44     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片43-避難所:kipple

2010-01-14 00:29:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片43-避難所


s・いずみ

押し入れに閉じ込もって出ない

豆電球を押し入れの奥のコンセントで微かに光らせ暮らす

両親が引き出そうとするたび自殺未遂

12才になったある日 民生委員の人たちが引き出そうとする

“ぎゃあああああ~”抵抗し脱出


公園

優しくカッコイイお兄さんに声をかけられる

今度はそのお兄さんに言葉巧みに拉致監禁される

明るく綺麗な小部屋に閉じ込められる

彼女は人類の平和を祈る

“どんな人も全て助けて下さい”


監禁お兄さんは他の監禁幼女の罠にハマり死ぬ

8人の幼女が監禁され毎日延々と繰り返される性行為や性的拷問に耐えていた

s・いずみを残して幼女たちは脱出

s・いずみは自ら鉄格子の中に入り手錠と足枷をし、隅の便器に首輪の鎖を繋いではだかのまんましゃがみこんだ

“みんなを助けて下さい全ての人を許して下さい”


s・いずみは18才になっていたが誰が見ても5~6才に見える

やがて脱出した幼女たちが警察に保護され監禁場所にやってきた警官に引き出される

パトカーの中で警官に性的行為を強制されビデオ撮影される

隙を見て逃げる

高速道路から飛び降りる

木とボロ小屋でバウンドし傷だらけになるが助かる

気づくとボロ小屋の中年男が傷の手当

男の名はキップル?“えふ”?

男は何も言わず何も聞かずカップ麺やノリベンをくれる

s・いずみはそこで過した

栄養がつき一年後には見違える美女に

小屋の男は近所では嫌われもので変人扱い

ある日近所の主婦たちに少女を監禁してると通報され、やって来た警官に射殺される

警官がs・いずみを強姦してるところに帰ってきたので、小屋の男は撃ち殺された


s・いずみがすんでのところで殺されそうだったので止むを得ませんでした!ケイシセイ閣下!

よし!君はよくやった!その発砲は百パーセント正当性がある!


s・いずみは警察かんたちが話してる隙に逃げ出す

あっさりと畑を横切って県道に出た

東京方面に歩きはじめた

誰も追ってこなかった

あのオジさんは何発も何発も胸や背中や顔や頭を撃たれてたからもうしんじゃったかな

“ありがとう”

そして国道を東京方面に歩いて行った

顔に泥を塗り土の上をころげまわって服を汚した



朝靄の中






断片43     終


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「雨族」 断片42-ゴースト料:kipple

2010-01-13 22:25:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片42-ゴースト料


人生   とある初秋の一日

二十歳だと言って公園から付いてきた女の子

目覚めると女の子が紙クズだらけの部屋で寝てる

携帯が鳴る

{先生、話が}編集者からだ

また先生の作品として出させて欲しいとか言うか何度言っても分からぬか、あの編集者


生徒手帳に14才だと?え?

昨夜怪しいし腰も痛いから嫌だ、そこらへんで勝手に寝れ!と言ったが、どうにもあっしのポコチン触ってくるので、こっちも立つし、フェラされチロチロ一生懸命舐めるんで、ほらもっと擦って口の奥まで思いっきり入れとか、結局何度かその子の口に白液ぶちかまし、顔にぶちまけ何だか申し訳無くなり、部屋の隅にいついてる老人ジョーにあっしのケータイにかけさせバイブレーションでその子があっしの顔に押し付けてくるマンコに当てて“ああ、だめか”なんて言ってると老人ジョーに笑われた“ばかな、何でも機械に頼るからだ、ぶはは”

んで老人ジョー寝てるんで手にしてたウイスキー奪って、自称二十歳よ、どこから湧いて着いてきたんだか知らぬが行くとこなきゃしばらくこのボロ屋におればいい

とウイスキーのみながら今度はちゃんとポコチン立てて、その子、自分のマンコにアロマオイル塗り、“うぷっ、これ、イランイラン、うぷっ、ホホバオイルに混ぜた”とか言いながら、あっしのチンポコつかんでヌルヌル塗り、自分のマンコに入れて、血だ、処女かこの子


で起きて原稿の束持って駅前のルノアールに行き

あっしの名前でちゃんと出したいと言うので、まだ分からぬかと口論

怒って原稿くしゃくしゃにして捨て店出るも編集者追いかけてきて、わかったか二十歳も過ぎたブタババアのマンコは、あっしが嫌だってんのが分からんか

やっと分かった?おや黒いスーツに茶パツにパンツ丸見えミニか黒スーツ系最近多いな、ぴっちんぴっちん(^ε^)

タメグチでいい!ってんだよ、このブタババア

なんだよオサルジジイ

で原稿必死に拾い集めていつものように小切手

50万

おい、そこの編集者!ここの!ミートソース有り難う!

編集者・洋子さんは戻ってって、伝票を取ってレジで清算


帰りに「みずほ」の普通口座に預金した

これで、何ヶ月か暮らせんだろな

ジジイのジョーと処女マンコに何かお土産でも買って帰るか?

いせやで焼き鳥買って帰った


今度のあっしの原稿は誰の作品になるのかなぁ~

なんて意外な人気作家の作品になってたりすると、も~う最高!

若い頃なんか何ヶ月も笑えた

最近はどうでもいいや

でも楽しいな

まだまだ当分やめられませんわ

ああ!綺麗な夕焼けだなぁ~!

♪いぃ~のち短しぃ~恋せよ乙女ぇ~♪っとくらぁ!






断片42     終


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「雨族」 断片41-風のなかで眠る女:「8章・時の猫」:kipple

2010-01-12 01:30:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片41-風のなかで眠る女
           「8章・時の猫」


 5年前だ。

 5年前の6月10日に私は彼女と出会った。

 細い雨が、くじらの歯のように私の庭と空をつないでいた。

 彼女は、その繊維質の雨を、くぐり抜け、くぐり抜け、滲み出すように姿をあらわした。

 そして、私は彼女に発見された。

 彼女は無言で耳を澄ますようにして、上半身をかかげ、何やら高貴さを漂わせながら、じっと私を見据えていた。

 私も、彼女を発見した。

 彼女は、ゆっくりと小雨の中を私に向かって歩いてきた。

 私は煙草を消し、庭と居間を、2つの空間に遮断している曇ったガラス戸を開き、2つの空間を1つの世界に繋げた。

 彼女は、すばやくあたりをうかがい、真っ正面に私と向かい合い、

「ニャー」

 と言った。

 さて、5年前に私は、このようにしてクロエと出合ったわけだが、5年前といっても、私は自分の近辺に起きたごく少数の出来事以外は何ひとつ正確に思い出せない。

 あの時、クロエは、雨族からの救出とか人類滅亡の阻止とか、そんな事を言っていたような気がするが、それもよく憶えていない。

 私は、5年前の6月10日時点では、26才であり、無職であり、独身であり、ニコチンとアルコールの重度な中毒状態であり、一日に10錠以上の精神安定剤と抗鬱剤を飲んでいた。

 その年には、私の友人が2人死に、クロエは組成変更により、その本質を女から猫に変えた。

 その猫は、今も、小高い丘の上の草原で私と暮している。


 もちろん、その猫は、ガチャ目である。






断片41     終


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