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元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「雨族」 断片60-ぷーたろー:13年後~②:kipple

2010-02-03 12:50:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片60- ぷーたろー
             13年後~②


 約束通り、1時に中野サンプラザ前に着いてしまうと案の定、まだ誰も来ていなかった。

 階段に座って煙草を吹かして空を見ながら待っていると、15分遅れで、けだるそうに陽炎の中からユウちゃんが現われた。

 僕らは顔を見合わせて驚き合った。

「よく、黒い背広なんて持ってたなぁ」
 とユウちゃん。

「この10数年間、何故か葬式だけにゃ事欠かなくてな。身内も知り合いも次々と死んでゆくもんだからさ。ユウちゃんこそ」

「俺のはオヤジのを借りたんだ」

 ユウちゃんは32才だが、まだ働かず自宅で、ぶらぶらしている。何度か就職にはトライしているのだが、面接で、いつも落とされている。

 彼の父親は、かなりの有力者なので就職しようと本気で思えば、コネで、わけなくできるのだが、ユウちゃんはコネだけは卑怯だから絶対イヤだと断わり続けている。両親も兄弟も、もう何も言わないらしい。

 仲間の中では、僕はユウちゃんとの付き合いが一番長い。大学時代からだから、もう13年くらいになる。

 2人で煙草を吸いながらしゃがんでいると、マユミとチカが一緒にやってきた。彼女たちは今年で30才だ。2人ともサングラスをかけ、喪服を着てケラケラ笑っている。

 彼女たちと、いつ知り合ったか、僕はよく憶えていない。3~4年前、どこかのパーティでだったと思う。2人とも仕事を持っている。フリーの翻訳者だ。僕はマユミが動、チカが静と、とらえている。

「パイクったら、死ぬ前に私に『明日は俺の誕生日なんだよ』って電話してきたのよ」
 とマユミ。

 パイクとマユミは不安定な恋人同士だった。それは皆、知っていた。

「そんでね、プレゼントに僕に花を添えてくれって言うの。そしたら、これでしょう。ひどい奴」
 とマユミ。

 チカは、ボーッと派手なピアスを弄くりながら空を見てる。ユウちゃんは話にふんふんと相づちをうっている。僕はチカの端正な横顔を見ながら、ふんふんと相づちをうっている。

「彼の着てた服、私のなのよ。まったくバカな奴。30才までに花を咲かせるって、本当に真っ赤な血の花を咲かせたわ。絶句ね」
 とマユミ。

 話していると、コージが現われた。コージは31才のフリーターだ。小柄で女の子みたいな、綺麗な顔をしている。

「やったね。パイク。俺、ちょっと、羨ましいや」

 とコージは言ってチカのピアスに指を突っ込んでヘラヘラしている。

「ユウちゃん、あと誰が来るの?」
 と僕は聞いた。

「あと、2~3人来るはずだけど・・・もう2時になるな。あてにならないから行こうか?」
 とユウちゃん。

 そこへ、ぬっとターボーが現われた。背が高く、いつもスナフキンみたいに帽子を被っている。でも顔は、けっこう可愛く、サンリオのキャラのターボーに似ているところからターボーと呼ばれている。

 しかし、ターボーは35才で仲間の中では最年長だ。正体不明の男という印象が強い。彼は大学を出て、1年間サラリーマンをしたのち、ぶらぶらし続けている。

 彼の収入源は主にギャンブルである。表向きは。ターボーはあまりしゃべりたがらないが、麻薬の取り引きもしている。コカインのみを扱っている。その取り引きが、どのようなものなのか、彼は絶対にしゃべらない。僕らも聞こうとはしない。彼は彼なりに一線を画しているのだ。

 ターボーは遅れてきて、シャーシャーと、このように言う。

「お前ら、まだ、ここにいたのかよ。もう誰も来ねえよ。さ、行こうぜ。終わっちまうぜ」

 それじゃという事で我々は中野サンプラザを後にしてパイクの実家に向かった。

 歩いているとチカが僕の手をひっぱって言う。

「ねえ、今夜、サンプラザで「たま」のコンサートやるのよ。帰りに皆で見てかない?」

 ユウちゃんとコージは乗り気になっていた。

 僕もチカに貰った「しおしお」というアルバムが気に入ってたので、まんざらでもなかった。






断片60     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片59-ぷーたろー:13年後~①:kipple

2010-02-02 16:50:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片59- ぷーたろー
             13年後~①



                  13年後


 月の表面を、ふわふわと漂いながら、僕は気持ちよく地球を見上げていた。地球は僕を笑っているように見えた。腹が立ってきた。

 僕は月面から巨大な砂まみれのハンマーを持ち上げて地球をぶち割ろうとしていた。両腕で、思いっきりかかげて、せぇ~の、えいっ!

 そこで電話に起こされた。

 午前7:00だ。

 朝っぱらから、かかってくるのは、いつも碌な用件じゃない。僕は受話器をアゴで肩に固定しながらデパスという安定剤を2錠飲んだ。

 デパスがないと一日は始まらない。

 電話はユウちゃんからで、パイクが昨日、派手に自殺したという事だった。

 正午ぴったりに彼は自分の10Fのマンションのバルコニーから女装して飛び降りた。

 遺体は昨夜、彼の実家に運ばれ、通夜が行われ、今日葬式が行われる。首から上は信じられない程、きれいに無傷で、首から下はグチョグチョだったそうだ。

 パイクの実家は中野なので、午後1時に中野サンプラザ前に集合する事になった。ユウちゃんが、親しかった友人に片っ端から連絡すると言った。

 パイクが去年よく口にした事を思い出した。

「俺は30才になるまでに何か、でかい事をやるんだ。あのウメ川みたいによぅ」

 僕はパイクの誕生日なんか知らないので、彼が果たして30才になっていたのか、それとも、その前だったのかわからない。

 でも、パイクは、よくやったよ、と僕は思う。自分で自分を殺すってのは、やはり、でかい事だと思う。

 僕は、ひげを剃りながら内心、パイクに拍手を送った。

 でも、ぶらぶらしてる仲間が次々と消えてゆくのは少し悲しい。淋しい。

 ひげを剃り終わって、つくづく自分の顔を見た。もう若くない。いつの間にか気付いたら僕も33才だ。

 大学を出てからもう10年以上だ。10年間。無職。アルバイトさえした事もない。

 何をしたのか思い出せない。おそらく、たいした事は何ひとつしていないからだろう。無為。無能。極楽トンボ。穀潰し。パイクもそうだった。でも、まだパイクの方が、マシかもな。

 パイクは、ちょくちょくアルバイトをして金というものを産出していたし、薬もやらなかった。

 でも、何がマシかなんて考えるのは無意味だ。

 僕は外出のしたくをしてから正午近くまで青く透みわたった空を見ていた。

 僕は、いつも空ばかり見てる。真夏の空。でかくて、ぶ厚い真っ白な雲が動く。

 正午になって、クロエが起きてきて顔を洗い始めた。

 僕が、「ちょっと用事ができたもんで行ってくるよ」と言うと、クロエは「はあ」と言って歯を磨き始めた。

 クロエとは一年位前にレンタル・ビデオ屋で知り合った。お互い常連で、いつしか口をきくようになったのが始まりだった。

 そして僕も彼女も、熱病にとりつかれたように我を忘れてお互いを求め、半年前から、このマンションで一緒に暮らしている。

 しかし今は、その熱病も去り、何となく、だらだらと、しらけた生活が繰り返されている。

 僕と彼女には、大きな違いがある。

 彼女は仕事をもっていて、その収入で、しっかりと自分の生活を支えている。一緒に生活していても僕の金は、一切受け取らない。一度も社会に出た事のない僕は世界が狭い。堂々と社会を渡り歩いているクロエは世界が広い。

 と常識は言う。大口定期預金の金利と株で生活してきた僕とは、そこらへんが、ずいぶん違う。

 でも、ひょっとしたら僕の世界の方が純粋で正常で、彼女の世界の方が汚れていて異常なんじゃないかとも時々思う。

 小さな違いだって無数にある。服の好みや、食の好みや、暇のつぶし方や、シャワーの使い方から、歩き方まで。でも、それらはたいして重要な事じゃない。

 人生は生きて老いて死ぬという点では全ての人間に冷酷にして平等なのだ。違いなんて些細な事さ。


 彼女は女、僕は男、彼女は一般的、僕は非一般的。





断片59     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片58-ぷーたろー:序:kipple

2010-02-01 15:38:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片58- ぷーたろー
               序



                 1986年。

                   

 僕がまだ20才だった頃だ。妹が15才だった。時々、この時間は永遠に続くのだと錯覚した頃だ。

 僕は大学の休みを利用して、しばらく旅に出ようと思っていた。特に何の問題は無かった。金黄の輝やきの中で、ゆらめいているような時期だった。


 それは不思議な夜だった。珍しく濃い霧が、この真夏の都市にたちこめていた。

 僕は、僕の愛すべき妹と夜のドライブをしていた。僕は妹を、病院から郊外の両親の家に送っていくところだった。

 妹は盲目だった。おまけに足も不自由だった。世界は冷酷にして不平等であり、それは、平等という幻想を基盤にしている。

 僕は、それを思うと、いつも「くそくらえ」とつぶやく。

 妹と両親は、それから2年後に不幸な事故にあって死んでしまう運命だった。

 幸福な事故死というのも、ひょっとしたらあるのかもしれないが、妹と両親の場合は間違いなく確実に不幸な事故死であった。

 月や星の光を感じたいと言う妹を両親が近くの公園に連れていった。

 そこで、妹と両親は33才の男にサバイバルナイフで、めった突きにされ、殺された。

 3人を殺した後、その男も自分の首にサバイバルナイフを突き刺して自殺した。

 その男の動機は誰かを道連れにして死にたかったというものだった。その男は『社会に適合できず、生きてゆく力を失った。死にたいが1人で死ぬのは淋しい』と、遺書を残していた。

 僕はひとりぼっちになり、かなりの遺産を相続した。

 妹はフォーレの曲が好きで、その濃い霧の夜も、フォーレの「ペレアスとメリザンド」をながしながら国道を、ひたすら走り続けていた。

 僕は「レクイエム」の方が今夜は合うんじゃないかと言ったが、妹は許さなかった。妹は、その組曲の大ファンだった。

 青や黄や赤の流線光が、次々とフロントガラスを半円形に横切る中で、妹は、ある夢の話を始めた。

「その夢の中のお兄ちゃんは、今より、ずっと年をとっているの」
 と妹は言った。

「それで、1人ぼっちで淋しくて、何故だか南の島の夜風に吹かれて砂浜をさまよっているの」

「新婚旅行にでも行って時計でもなくして、探しまわってるのかな」
 と僕は言った。

「ちがうの。夢の中の私はちゃんと歩けるから、お兄ちゃんのあとを、ひょこひょこと追いかけまわして、“いったいお兄ちゃん何を探しているの?”って聞くの。それでも、お兄ちゃんは、何かを探すのに一生懸命で、私の方を振り向こうともしないの。相手にしてくれないの。それで私は、お兄ちゃんの体を力一杯うしろから抱きしめて、もう一度聞いたの。“何してるの?”って」

「南の島、夜、涼しい風、静かな波の音、きれいな星空。さて僕は何をしてたの?」
 と僕は言った。

「お兄ちゃんは大きな声で言うの。“放っといてくれ、邪魔しないでくれ、お前さっきの大爆発が聞こえなかったのか?まっ黄色に輝やいていた、まん丸の月が、さっき物凄い音で、くだけ散ったんだ。月が無くなったんだよ。大変な事だ。僕は月の欠けらを探しているんだ。早く全てを集めて復元しないと、二度と月は以前のように美しく輝やかなくなっちまう。月の欠けらを探すんだ。欠けらから完全に輝やきが失せてしまう前に。”ってね。そして私を、ふりほどいて再び、ふらふらと、樹々や波間や砂の中を、真剣な顔をして探し始めるの」

「ふーん。昨日、見たの、その夢」
 と僕は聞いた。

「毎晩よ。ここ、3週間、毎晩、同じ夢。なんだか気味が悪いの」

「僕は年をとって、南の島へ行って、月の欠けら探しをするのか」
 と、僕は言った。

「たぶん、そうよ。この夢の事、憶えておいてね、お兄ちゃん」
 と妹は言った。

「南の島で月のかけらさがし」

 車は霧深い都市圏を抜け、郊外の細い曲がりくねった道に入って行った。


 霧の向こうに、うっすらと、大きな青い月が見えた。





断片58     終


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「雨族」 断片57-ぷーたろー:序の序:kipple

2010-01-31 15:56:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片57- ぷーたろー
             序の序


 僕たちは唯、皆でぶらぶらと楽しく過ごしていたかったんだ。


 夕陽の中で自由に笑っていたかった。


 それだけだった。




 テーマ曲 ぷーたろー


 (作詞・作曲・歌・kipple,1983年作ノーマル・ピッチ版)

注:初出版は自作曲を張り付けたが、ここの復刻版は未定。




断片57     終


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「雨族」 断片56-真に偉大な雨族を出現させるために:kipple

2010-01-30 18:51:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片56-真に偉大な雨族を出現させるために


 そもそも「究極ペット」って何なのですか?

“「究極ペット」?知らねぇなぁ。髪の長い女だって?風の中で眠ってる?だから知らねぇなぁ。他、当たってくんねぇか?”

“「時には晴れの無い子のように海を見つめていたい」?分からねぇなァ。

 「雨族言葉にご用心」?そりゃぁ湘南の方じゃねぇか?

 レインスペクターってぇのは聞いた事があるような気がするぜ、それなら八王子の方の族かもな。そっち方面当たってくれねぇかなァ。

 で、あんた、雨族の何なのサ ”


♪ミナトのアーメ、アメアメ、アメゾク~~!♪



 僕は!今こそ出現の時を待つ真に偉大な雨族に関する伝説の数々を伝えるべきだと思う!

 よって、この物語を書こうと決めた訳だ!

 199X年に真に偉大な雨族があらわれると伝承が語っている!

 都心に出現すると伝えられている!

 そのためには、幾つかの選ばれた雨族たちにふりかかった晴れの呪いを解除してゆかねばならない!

 しかし、雨族たちには連帯意識が欠如しているので、雨族外のオピニオン・リーダーがオルグらなければ、雨族たちの呪いを解除する事は難しいだろう!

 ゆえに、真に偉大な雨族の出現は実現されずに終わってしまう!



「でも、いったい、真に偉大な雨族って何なの?どこが真に偉大なの?」

「それは雨族とは何かという説明から始めなければならないんだ!真に偉大な雨族は、ひょっとすると人間以外かもしれないよ!それは空中に広がっていくような感じさ!皆の心の中に割り込んでゆく、世界中のね!要するに世界中の若い世代が全て雨族化してゆくことになるんだ!」

「まあ!人類メツボウ!」

『真に偉大な雨族』の出現=人類絶滅の一歩

 彼女は黒板に、こう書いた。僕は少しムッとした。

「それは、そうかも知れないけど、少し違うよ!」
 と僕は言った。

「人々が平等な悲しみに包まれれば、何かが変わるよ、たぶん!」

「どうして人々が悲しみに包まれなければ、いけないのかしら」

「だって、不公平じゃないか!雨族の人生は物凄く悲しいんだ!物凄く退屈で苦しいんだ!」

「あなた、自分が、そうだからって、雨族以外の人は悲しくも苦しくもないと思ってんのぉお?雨族も普通の人も充分、生きる事は平等に苦しいと思うわ!あなた考え方が選民思想してるわ!勝手よ!自己完結よ!

ちがう!苦しみの深さと広さが、まるで違う!僕らは愛されることも、愛することも、ないんだ!ブチッと、人生のある時点で愛を感受する心のサーキットがちぎられてしまったのだぁぁあああ!



 真の最も偉大な雨族は、まだ現われておりません!

 その時期じゃぁ、ないんです!

 愛する事は苦しいから、誰もが避けはじめ、幻想の中に真に偉大な雨族たる自分自身を見い出すのですよ。

 其の国の事かい?それなら聞いてる。


「雨族って、正確な定義づけが、あるのかい?」

「さあ?」

 僕が、はじめて雨族を見たのは、1985年7月21日の朝だ。場所は湘南。

 僕自身、何の疑惑も神経の歪みもなしに、きちんと社会の競争システムに馴染んでいけるとは、まるで思ってはいない!

 でも、君は自分の事を雨族だとは考えていないだろう?いや、考えたくないのだろう!

 真の最も偉大な雨族は、そろそろ現われる!

ふっ!それは、君じゃないのかね!ズドーン!

 雨族は真に偉大な恋愛によって解除される。

 よって真に偉大な恋愛を僕は望んで信じていたが、それは一方的な幻想だった。

 そこには規律がある。盲目的な規律がある。

 君が全てという原則だ。

 過去も未来も振り切り、君が全てで、他人は、いない。

 ところが、君が、それを、あらかじめ破っていたので、僕の幻想は地上に落ちた。地に落ちた。

 憎しみや嫉妬がムクムクと湧き上がり、悲しくなった。

 自分が空しく、裏切られた気分になった。真に偉大な恋愛の夢は終わった。

 後は、もう真に偉大な恋愛を望まず、地上レベルで誰とでも遊ぶことにした。

 それを、君は認可した。気にしないと言った。

 そして、僕はより、ダムの決壊を感じた。



 そうして、僕は皆と遊びはじめた。雨族同士で、ぷ~らぷら、と。





断片56     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片55-風のなかで眠る女:「10章・ライブハウスをヤレ!」:kipple

2010-01-29 18:34:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片55-風のなかで眠る女
         「10章・ライブハウスをヤレ!」


「都心で何をやるって?」

「遠い昔、静かに失われた時の底に、深く深く眠り続ける犯罪だ」

「どういう事?」

「ライブハウスを、やっつける」

「それが、どうして静かに失われてしまった・・・何だっけ・・・時の底に深く眠る犯罪なの?」

「簡単には説明できないけれど、これは僕の逆襲劇なんだ。散弾銃とプラスチック爆弾を用意する」

「わかった」

「そう、仇討ちさ」

「何に対する?」

「僕の失われた真に聖なる幻想に対する」

「どうやる?」
と、マユミ。

「とにかく、3人でやるんだ」
と、僕。

「あたし、抜ける。イミないもん」
と、チカ。

「じゃ、2人でやるんだ」
と、僕。

「どうやってよ!」
と、マユミ。

「プラスチック爆弾は僕の戦争マニアの叔父さんから調達できる。散弾銃は弟が免許を持っている。僕と弟はそっくりだ。散弾銃を買える。明日の夜までにそろえる」

「決行時刻は明後日の午後7時半。演奏中でなければ意味がない」

「血は流れるのかしら?」

「血は流れる」

 チカは、ぷぅっと頬をふくらませて、くちびるを突き出したまま、僕のアパートを去って行った。

 その後、僕はマユミにあたりまえの質問をされた。

「どうして、ライブハウスを、ヤらなきゃならないのか、もっと詳しく説明してよ」

 僕は少し考えたけど、すぐに途轍もない混乱におちいった。

 僕は、その理由を思い出したくないのだ。

 胸が、だんびらで、バッサバッサと切り裂かれるみたいだ。

 涙まで出てきた。

 声は、かすれて出てこない。

「もう、いいわ、わかったわよ。忘れるがいいわ」

 僕は苦しみながらも声を絞り出した。

「ライブハウスは象徴だ。問題は別にある。別のものに付随する厖大なものの中の一つが、ライブハウスなんだ。僕は、その、厖大なものが内包する無数の呪いを1つずつ、物凄く憎み、逆にこっちも呪っているんだ。だから、代表としてライブハウスに死んでもらう」

 僕がそう言うとマユミは、何やらケータイで話をしており、とろぉ~んとした表情で仕事があるからと去って行き、結局、一人で決行する事になった。


 *** *** *** *** *** *** ***


 無数の中の、そしてかなり重要でやっかいな、この呪いは実際的にはクロエがもって来た。

 クロエと出合った、あの夜に、僕は内心、ライブハウスを殺す事を決意していた。

 そして、ライブハウスに散弾銃とプラスチック爆弾で死んでもらう決行前夜、僕はクロエとアパートで、話し合った。

 もちろん、現在のクロエを作った男、クロエがライブハウスで出会ったギタリスト、5年間クロエと徹底的に愛し合いクロエを完膚なきまでスポイルした男、僕の前の男、クロエに飽きて恋愛関係を一方的に解消した男、その男がクロエの全部に何から何まで、すっかり居ついてしまっているという事についてだ。

 その事が雨族たる僕の心を、巨大なだんびらで、バッサバッサと切り刻み続けるという事。

 しかし、本当の問題は、僕の内部にあると言う事も、分かりすぎるくらい分かっている。

 だから、僕は半分、納得はした。

 何回か頭を上下左右に振り回し、デパスを1mgと抗鬱剤を何錠か飲んだ。

 それを、クロエはじっと見ていた。

 僕はクロエに言った。

「嫉妬は憎しみだ。そして僕はとても弱いんだ。僕は、おそらく本質的に、雨族的呪いにがんじがらめに封じ込まれている」

「また、呪いね。あなたは呪いのスペシャリストね。いいわ。それは、それとして、これから、どうするかよ。私とあなたは協力して、癖になってしまった、それらの呪いを解き放たなければいけないのよ。問題は、あなたが私と組む気があるかどうかよ。まず、そこから初まるわ」

 身体中が波打っているような気がした。

 僕は選ぶのが嫌いだ。

 いつも何もしないできた。

 だから、明日こそ、必ず、ライブハウスを殺してやろうと思った。


 しかし、次の日、散弾銃とプラスチック爆弾で武装した僕は、ライブハウスの前を通り過ぎるだけで、あっさりと何もせずに終わってしまった。


 風のなかで眠る女が、僕の確執を削除したのだ。





断片55     終


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「雨族」 断片54-風のなかで眠る女:「9章・風の高原Ⅳ」:kipple

2010-01-28 18:45:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片54-風のなかで眠る女
            「9章・風の高原Ⅳ」


 僕は空のてっぺんから雲の合い間を滑空し、海に向かって滑降してゆき、丘の上の風の草原で心地よさそうに眠っている彼女を観察する。

 それが永遠に続くものと思っていたが、唐突に終わった。

 とても強い何かの作用に、この世界は共振した。

 風景は揺らぎ、この閉ざされた世界に巨大な裂け目が入った。

 そして、その裂け目から、彼女は出て行ってしまった。

 僕の風の丘から、僕の風の高原から、彼女は去ってしまった。

 彼女の見ている夢の中へと。

 物質世界の僕のいる現実の中へと。

 でも、巨大な裂け目の入ったこの世界に、たった一人で取り残された僕は、泣いた。

 ずっと昔から、世界の初めから、僕は空から落ちてきて、風のなかで眠る女を観察し続けてきたんだ。

 僕は、いらなくなった、残骸になった、裂け目の入った、がらんどうの世界の中で、一人、泣き続けた。

 風のなかで眠る女の気持ちよさそうな寝顔を思い出し、ずっと泣き続けた。

 亀裂の入った風景は色を失い、丘の上の風は止んだ。

 僕は未来永劫、こうして、これから、ひとりぼっちで泣き続けるのだろう。

 誰かが救われるためには、誰かが犠牲にならなければ、ならないんだ。

 そう。だから、僕が救われるためには、僕が犠牲にならなければならない。


 そんな事は分かっていたんだ。





断片54     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片53-園の内側、赤い空~●裏面・骨子●:kipple

2010-01-27 18:19:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片53-園の内側、赤い空
      ●裏面・骨子●


 私はベティーと暮している。

 ベティーが帰って来ない。

 林の中でベティーが死んでいる。

 一日だけ、今日子が私のアパートに泊まる。

 一カ月分の電話代が、37万円。(いったい、誰がどこへ電話をしたのか?今日子か?)

 NTTに37万円の内訳の詳細調査を依頼。分からない。

 奴から電話があるが、私にとって奴は死んでいるので、奴の声は聞こえない。

 奴は、「俺はベティーを殺した。次は今日子だ」という。

 私は再び、絵を描く。今日子が林の中で死んでいる絵を。

 私は、「イパネマの娘」と共に冒険の旅に出る。放浪の旅だ。目的は無い。とにかく南へ。

 私たちは出発の日、絵の通りに今日子が林の中で死んでいた事実をニュースで知る。

 私は冒険の旅を取り止め、高層ビルの屋上の奴の小屋を焼く。

 しばらくして、写真が届く。奴が「イパネマの娘」と南国で笑っている写真だった。



 私は写真を片手にシャングリ星人の「ラ」と語り合う。

 「ラ」は酔ってほがらかに言う。

“いやぁ~又、失敗だねぇ。君の二重身の方がうわてだったね。見事に君の雨族脱出計画を失敗させてみせた。でも、見てごらんよ。この世界の夜は美しいねぇ。色で溢れている。昼はモノクロの世界だもんね。白と黒とグレーと。君に見えるかい?しかし、グレーは殆んど無く、黒と白がこの世界全体を支配しているんだ。夜は闇に赤や青の光が滲む。そして、ハイウェーには滲んだオレンジの僕のUFOが飛ぶ。”

 私は言う。

“ありきたりだ。全て。”

 「ラ」は言う。目玉をクルクル回しながらストローでカンパリソーダを吸いながら。

“君は選んだわけではない。追いつめられて、こういう暮らしをしているわけでもない。ただ、そうなのだ。君には職もない。ルールもない。社会的規制は、ないんだよ。君はね、故郷を求めている。しかし、故郷は、どこにもない。
 時間が始まり、そして、終わるまで、どこにもない。”

 話が噛み合わない。意味がよく分からない。

 どうでもよくなり、私と「ラ」は、その美しい色で溢れた夜の屋上で、線香花火を一緒にやる。

 しみじみと。


 さよなら、クロエ。さよなら、ベティー。さよなら、今日子。

 そして、さよなら、もう一人の私を選んだ「イパネマの娘」。





断片53     終


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(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片52-園の内側、赤い空~8.さよならベティー:kipple

2010-01-26 19:47:00 | 雨族(不連続kipple小説)

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               「雨族」
     断片52-園の内側、赤い空
      8.さよならベティー


 次の日、私は出勤した。

 一日中、私はフローチャートを書くフリをして、無意味な言葉と、無意味な絵を描いていた。

 しかし、夕暮れになり、そろそろノータリンどもが夜食を買いに行きはじめると、私の無意味であふれたノートは意外な事に何かしら、意味を持ちはじめたようだった。

 私は、文字と絵で、見事にでたらめに塗り潰されたA4の無地の用紙を、離したり、近づけたり、斜めにしたりして、よく観察してみた。

 私が、でたらめに描いた文字や絵は、良く見ると何か一つの言葉に形を変えているみたいだった。

 それらは、うねうねしながら、ぐるぐる回って、滲んだようになって膨らんだり縮んだりしながら、どんどん、どんどん、一つの言葉に変わっていった。

 私は凝視していた。

 窓から見えるバチバチと火の粉を散らすような激しい夕暮れの太陽が、私を真っ赤に染めていた。

 やがて、私が描いた全ての無意味な文字や絵は、一つの言葉に変形した。

 そして、電子顕微鏡で覗いた極小の病原体がうねうねと分裂を繰り返すようにして、あっという間に無数に増殖し、A4ノートを埋め尽くした。


雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族雨族


 そして、私は、その「雨族」という言葉で埋め尽くされたA4ノートに、静かに滲み込むように、ゆっくりと吸収されていった。

 あらがう気はまったくなかった。

 私は間違えたのだ。

 クロエは殺してはいけなかったのだ。

 奴は、私の可愛い女の子なら誰でもいいと思ったんだろう。

 まあ、いい。

 私が消えれば、奴も消えるし、この世界も消えるだろう。

 心残りがあるとすれば、それはベティーだ。

 他の私の可愛い女の子は、ルトガー・ハウアーの事なんか、ちっとも語ったりしなかったよ。

 だけど、ベティー、君を殺して、クロエと一緒に冒険の旅に出れば、きっと、私は雨族のどしゃぶりの中に吸いこまれて消滅する事は無かったと思うけど、これで良かったと思うよ。

 奴は私の二重身だからホントは間違えるなんて事はないのさ。

 私がクロエではなく、ベティー、君を望んだんだよ。

 そして、私も私の二重身も私の可愛い女の子たちもノータリンばかりの会社も、月も地球も太陽も、あっちもこっちも宇宙も全部、この世界は一瞬にして、消滅した。


 さよなら、ベティー。   また、いつか、どこかで






断片52     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片51-園の内側、赤い空~7.ルトガー・ハウアー:kipple

2010-01-25 20:16:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片51-園の内側、赤い空
      7.ルトガー・ハウアー


 私は、会社へ行きたくなかった。

 プログラムを作る事はそんなに嫌ではなかったが、ノータリンどもに会いたくなかったのだ。

 会社員は全てノータリンだ。

 奴らの中にいったい、何人、ユイスマンスの「さかしま」を読んだ奴がいるだろうか?

 奴らの中にいったい、何人、アート・リンゼイのキュービック奏法にシビレタ奴がいるだろうか?

 奴らの中にいったい、何人、「テオレマ」のテレンス・スタンプに感動して涙にむせんだ奴がいるのだろうか?

 奴らの中にいったい、何人、小学生のうちにマルクスの「資本論」を読破し、石原莞爾の「世界最終戦争論」に胸をワクワクさせた奴がいるだろうか?


 ・・・1人もいないだろう。

 私は社会の中で悲しいひとりぼっちの青年なのだ。

 ベティは言う。

「ルトガー・ハウアーは天才よ。目よ。目が全てを演じてるわ」

 私も、そう思う。

 あれ程。異常者の似合う俳優は滅多にいない。

 私は会社を休む事にした。


 ベティーと一緒に「ヒッチャー」を観に行く事にした。






断片51     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)