木の実幼稚園のゆかいな仲間たち

愛媛県松山市にある『木の実幼稚園』の先生たちによるBlog

第46回 大寒マラソン大会

2023-01-23 11:55:00 | Weblog
2023.01.20


かすかに雨粒が落ちていて

空には薄墨のような雲が広がり

何度も天気予報に目を運び直すような

大寒に相応しい 寒々とした夜明けでした。


過去2年、出口の見えないコロナ対策により

2年連続で観覧をお控え頂きましたが

ご来園時間の分散等の一定の対策を取りつつ

実に3年ぶりとなる保護者観覧での大会運営となりました。


今年は記録係を務めさせてもらい

スタート前の子どもたちの様子

公道へ出ていくスタート直後

そして、走り終えるゴールの瞬間を見ることができました。


今日はずっと曇りの予報だったのですが

スタートの時間が近づくにつれて

空は陽光が差し込む好天に変わり

子どもたちが気持ちよくスタートを切れるよう

背中を押してくれるようでした。


公道を走り抜けてゴールに帰ってくる頃

スタート前に寒さで縮こまっていた子どもたちの顔は

すっかり別の顔になっていました。

転んだかな? 寒かったかな? しんどかったかな?

涙があふれている顔もありました。

走り切った 爽快な顔もありました。

走ることが楽しかったのか 笑顔もありました。


大寒マラソン大会・本大会は

単に大会ではなく

子どもたちにとって

「続けることの大切さ」

3歳児であれば

「先生や友達と一緒に最後までがんばり、『できた、やれた!』という

 自信につなげていく」という願いが込められていたり、

4歳児・5歳児であれば

「自らの目標をもち、時に競争意欲をもって自分のペースで取り組み、

 それぞれの達成感を味わう」という願いも込められています。


そのように、健康な体を育むだけでなく、

3年間のマラソン活動の継続や、

練習会や大会という体験の場や

それに向けた準備期間において

一人ひとりの子どもが いろいろなことを心の中で育んだり

或いは 消化したりしながら、

心の成長を促すことが

この活動の願いです。


記録表の公開と共に

今年も、マラソン大会にまつわるちょっとした

寄せ書きをさせて頂きます。


今回は 3人の人物について。


一人は、年中の女の子。


この子は

筆者の自宅近くに住んでいて

時折見かけることがある子です。

ある日 停車中の車中で電話していた私の前を

近所のスーパーからの帰りかな?という様子で

その子がお母さんと一緒に

タタタタッと目の前を走り過ぎていきました。


この子のその時の顔は

笑顔で一杯でした。

走ることが大好きなんだなぁ・・・と思うと共に、

隣を走っていたお母さんも笑顔で走っていらっしゃったことが

とても印象的でした。


いつか大きくなった時、

「よく一緒にスーパーから走って帰ったね」なんて

今を振り返ったりされるんだろうなと、

親子の温かみを感じたシーンでした。


この女の子は

今年 先頭でゴールに帰ってきました。

お母さんと走っていた時のような笑顔ではなく

子どもたちがふとした時に見せる

真剣な眼差しでした。

キラキラしていました。

彼女なりに

きっと自分の目標や「こうなるといいな」というイメージをもって

大会を迎えたんだろうなと、

記録を取りながら心の中で拍手を贈りました。



次の登場人物は

年長の男児2人です。


この2人

実は年少の頃から1位と2位を競ってきました。


年少でも年中でも優勝した男の子が、

プレイコートでサッカーをしていた時に

こんな一言を口にしたことを耳にしたことがありました。

「(サッカーでは)しんじゅ君には勝てんのよ。」

この「しんじゅ君」こそ、

年少と年中のマラソン大会で2位だった男の子です。

どうも、サッカーをしながら「この子には勝てない」という評価を

自分の中でしたのでしょう。


今年度の2回目の練習会で

「しんじゅ君」が優勝しました。

「しんじゅ君には勝てんのよ」とつぶやいていた彼は

実は年少からの全ての練習会と本大会で、

一度も負けたことがありませんでした。

でもその彼が、初めて負けました。


「しんじゅ君には勝てんのよ」

それに似た感情が

心の中でかすかにでも芽生えたかもしれません。


我々も 少し緊張しながら本大会を迎えました。

2週コースを走り切り

ゴールテープを切ったのは

年少でも年中でも優勝していた

よしみつ君でした。

しんじゅ君という存在を心の中に感じながら

その存在を乗り越えて

この日、

大会3連覇という園のマラソン史に残る結果を

彼は残したのでした。


ゴールテープを切って目の前を通り過ぎる よしみつ君 に

「おめでとう」と心の中で叫び、

わずか数メートル後ろからゴールに入った

しんじゅ君に

「ありがとう」と心の中で感謝しました。


しんじゅ君、

君がいたことで

よしみつ君は いろいろな気持ちになり

それを自分なりに消化して

きっと努力もして

自信だとか 達成感だとか

目には映らないステキなことを

大きく膨らますことができたよ。

だから、「ありがとう」。

きっと君も

表彰式に見せた少し浮かない表情と裏腹に

心の中に なにかの感情を抱え

そして消化していたんだよね。

そんな経験の一つ一つが

君が大人になるまでに成長する一つ一つの種になるよ。


こんな2人のように

コースを走り切った子ども一人ひとりにドラマがあります。


記録表を見るだけでも

練習会から本大会への道のりの中で

最後尾のタイムが上がっていることがわかります。


マラソンコースを知り、

先生、ご家族、もしかすると友達と

いろいろな会話を挟みながら

「自分なりの目標を描く」ことや

「最後まであきらめずにがんばること」を体験しながら

頑張ろうとした子どもたちの足跡です。


幼少期における大会という競い合いの経験や目的は

順位や結果というものだけではなく、

いろいろなことを感じ、知り、学んでいる彼らが

健康な体づくりと共に

人間形成に必要な大切な要素を

自分自身で体験し、消化・吸収していくことです。


だから 大会だけでなく

子どもたちが1年間、2年間、3年間

走り続けてきたことに

心から拍手を贈りたいです。


(追伸)
体育部の保護者の皆様

そして 補助役や新聞部の皆様

今年もまた大会運営におきまして

子どもたちの安全や近隣住民の交通へのご配慮を頂き

ありがとうございました。

おかげさまで、無事のうちにマラソン大会を執り行えました。

改めまして、深く感謝申し上げます。


  


第46回 大寒マラソン大会  完



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