木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

合憲限定解釈の二要件(2)

2011-09-09 15:48:47 | Q&A 憲法判断の方法


   2 解釈の限界

私「あー、その論点か・・・。
  そうだねぇ、合憲限定解釈っていうのはさ、『解釈の限界』っていうものを
  どう考えようか、っていう問題と深く深く係っているんだ。」

ツ「ああ、解釈の限界か。いやだよね。あの論点。
  ほら、うちの分野でも、いろいろいやげな論点があってさ。」

 こういうとツツミ先生は、ケラケラ笑った。嫌なことを思い出した時の反応である。
 ツツミ先生の専攻は民法である。
 私法業界の人は、されもが、来栖三郎先生に発端する法解釈論争の扱い方に難渋しており、
 ツツミ先生も、その難渋っぷりを思い出したようである。

私「解釈ってのは、その法文と呼ばれるインクの染みから、
  意味、もう少し言うと、法命題や法命題群を導き出す作業だよね。」

ツ「そうだな。ある法文から導かれうる法命題に限界はあるか、っていうのが、
  『法解釈の限界』っていう論点だよ。
  この論点については、来栖やら、CLSやら、ケルゼンやら、ドゥオーキンやら、
  ウィトゲンシュタインやら、とにかく、いろいろな議論があるな。」

私「そうだね。この解釈の限界っていう論点については、
  自然科学的限界と、社会科学的限界を区別すべきだ、
  っていう指摘がある。」

ツ「そりゃそうだ。そりゃ区別せにゃあかんよ。」

  ツツミ先生が、こういうと、煮魚定食が運ばれてきた。
  ピンクのクラゲ亭の人気メニューである。
  ツツミ先生は定食を見て、思い出したように
  「あと、コーラ」と追加注文をした。
  ちなみに、私は、から揚げ定食である。

   2-1 法解釈の自然科学的限界


ツ「で、あれだろ、法解釈には自然科学的限界はないっていう話になるんだろ。」

私「そうだね。AIという音を、愛という意味で理解する言語(日本語)と
  タマゴという意味で理解する言語(ドイツ語)があるように、
  あるインクの染みの形(文字)や音には、無数の意味の付け方がある。」

ツ「うんうん。憲法9条を時効取得の条文だと理解することも、不可能じゃないよね。
  確か、ウィトゲンシュタインがそんなこと言ってたな。
  それを紹介する先輩の論文もあったよね。
  来栖さんの議論もそういうことを言いたかったわけだし、
  法解釈に限界はない、っていう主張はだいたい
  法解釈には自然科学的限界はないっていう意味なんだよね。」

   こういうとツツミ先生は、私のから揚げを一つ奪い、食べた。
   あまりのナチュラルさに、目を丸くしていると、
   ツツミ先生は、
   「いやぁ、キムラ先生はキャパシティが違う」と意味不明の発言をした。

私「ただ、別に自然科学的限界がないっていうのは、当たり前で
  比較的どうでもいい問題だ。問題は、社会科学的限界だよ。」

ツ「そりゃそうだ。
  『我々は、自然科学的には壁にマヨネーズを塗ることができるが、
   そのような社会的事実は観察されない。
   その要因を探るのが社会科学だ。』
って、ケインズも言ってる。」

 たぶん、ケインズはそんなことは言っていないが、
 的を得た言葉である。

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