木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

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実証研究がまたれる

2012-10-15 15:28:33 | ちょっと一言
最低賃金というのは、なかなか面白い概念です。

よく、経済学をちょっとかじった人が、
「最低賃金制度を導入すると、雇用が減る」
なととおっしゃいます。

例えば、最低賃金を時給1000円にすると、
企業は、経済合理的に行動する限り、
労働価値が1000円を下回る人を
解雇したり、雇い入れなくなったりするから、
雇用が減る、とこういうからくりです。

まあ、その通りだろうと思われますよね。
最低賃金制度を廃止すれば、
その労働の価値が最低賃金を下回る人
まで雇用を広げられるので、雇用は増える
とこういうわけですね。

それに、最低賃金がなくなっても、
労働者は困らない。
労働者は、自由競争市場では、
自分を一番高く売る人のところを選ぶはずだから、
労働価値が1000円を上回っているなら
1000円以上の賃金のところを選べるはずだ、
とこういうわけです。


いやあ、シンプルでわかりやすい理屈ですね。
最低賃金制度が、諸悪の根源のような気がしてきます。

さてさて、他方、労働法を勉強すると、
最低賃金制度は、労働者と雇用者の交渉力の差から
説明されるわけです。

たとえば、労働価値が1000円を上回る人でも、
雇用者の方が交渉力が強いでしょう。
人々が職場を変えるのは、経済学者が言うほど
自由でもノーコストでもない、というわけです。

そんなわけで、そういう人も
それを下回る賃金を強制されてしまう可能性が高い。

そういうことを防ぐのが最低賃金制度の趣旨です、
てなわけです。

これはこれで、なるほど、と思わせる筋の通った理屈です。


というわけで、ちょいかじりの経済学者と
労働法の説明のどちらが正しいかは、
理屈だけを見比べてもよくわからないわけで、
実証研究が必要なわけですね。


ただ、この人の労働価値はいくらだ、という認定は
すごく難しく、それを調査するのは簡単ではなさそうです。


社会科学の道は奥が深いものですねえ。