人間、勘違いの思い込みというのは恐ろしいもので、
苛烈な批判というのは、だいたい、そこから生じる。
私の友人トミナガが、
昔ものすごい勘違いで内田光子さんを批判していたわけであるが、
トミナガの言い分はこうである。
「いかに内田がすごいピアニストでも、
練習をみせるだけで2万円とるのはいかがなものか?」と。
確かに、練習で、2万円は高い。
すごい話である。
必然的に、私は次のようにつっこむことになる。
「っえ?マジ?てか、それどこでやるの?」
「サントリーホール、火曜日の19時からだって。」
サントリーホールで19時から、公開練習・・・。
さすがに不自然である。
「それ、どこで観たの?」
「ほら、このチラシをみろ。」
チラシをみると、内田光子リサイタルとある。
リサイタルなので、多分、練習ではなく、れっきとした公演である・・・。
・・・。
トミナガの発言は、完全に意味不明であるが、
私には、十分に理解できる話であった。
このトミナガという男は、その昔、
「リハーサルルーム」という看板をみて、
「こんな狭い部屋で、公演をやるのか。
大変だな・・。
市もホールをつくるならもっと考えるべきだ。」と呟いていたことがある。
つまり、この男は、リサイタルとリハーサルを勘違いしやすいという
天性の才能を持っており、
リハーサルルームの設置者や、内田光子さんに対する批判の際に、
この才能を大いに開花させたのである。
思い込みは、怖い。
これが、考察の端緒となる。