健康優良児様からの質問です。お答えいたします。
この回(憲法判断の方法(6)適用違憲戦法の盛衰)の
ロジックを徹底するなら、アメリカみたいに、
まずは当該事案における違憲性を審査して、
違憲性が認められれば、その部分を結果的に法令上の瑕疵(違憲)として切り取っちゃう。
そして、当該事案を超え、法令そのものの違憲性は検討しない。
このほうが、はるかにスマートな議論になるんじゃないでしょうか?
>はい。これはですね、いわゆる処分審査(部分審査)という手法です。
こういう手法は、アメリカに限らず、ドイツや日本でも、
事案の特性に応じて、とられている手法です。
下記(2)処分審査の例をご参照ください。
結局のところ、「卵が先か鶏が先か」という議論になるのかもしれませんが、
日本の裁判所は法令では(暫定的にであれ)合憲であることを確認し、
それを前提に当該事案における違憲性を審査しようと考えているわけで、
このような考え方の順序自体をひっくり返すのって、
ちょっと違うんじゃないのかなって疑問に思いました。
>うーん、これは、ちょっと違うと思います。
日本の裁判所は、事案の特性に応じて、法令審査と処分審査を使い分けているので、
そうした日本の裁判所が特定の審査方法だけをとっているという審査方法の理解は、誤りだと思います。
ちょいと、日本の裁判所の審査方法の例をあげましょう。
(1)法令審査の例
例えば、明確性が問題になる徳島市の事例等だと、
この法令により基礎付けられ得る処分
(だ行進への処罰、人数の多いデモへの処罰etc)のうち
これは違憲で、これは合憲だから、この部分に限定解釈しよう
と、法令全体を審査→合憲限定解釈して、事案に当てはめてますよね?
これ、法令審査の例です。
ちなみに、この場合、当該事案の処分=だ行進への処罰(を基礎づけている法令の一部)も含め
法令全体に審査が及んでいるので、
当該事案の処分=例えばだ行進への処罰(を基礎づけている法令の一部)を
あらためて審査する必要は、ないのです。
(試験答案によく出てくる
法令審査+処分審査の二段階審査の前段の審査内容は、
ここでいう法令審査とは全然違う性質の法文違憲審査っていう審査です。
『急所』33頁)
(2)処分審査の例
また、立川ビラ判決の事案なんかですと、
刑法130条の合憲性の審査なんかしないで、
いきなり、その事案の処分の審査をしているはずです。
こういう例は、ほかにいくらでも挙げられます。
なので、健康優良児様のおっしゃるところのアメリカ型審査は、
日本の裁判所でも、かなりポピュラーな審査方法です。
そもそも法令審査をするというのは、
たいてい「法令が合憲である限り、当該事案では勝ち目がない」って考えた原告が、
しかたなくそれこそ「切り札」のようにして主張することであって、
法令審査→適用審査という順序を過大に一般化し、
そのうえで「適用=処分だけ違憲戦法」には深刻な問題があるって批判するのって、
理論上はともかく、憲法実務(?)的に正しいんでしょうか??
>うーんとですねえ、ご指摘いただいている憲法判断の方法(6)の記事は、
既に、特定の審査方法(法令審査や処分審査等)による違憲審査が終わって、
違憲部分が発見、画定された(第二段階終了)後に、
違憲部分をどう除去するか(第三段階)っていう問題に関するもので、
法令審査などの審査方法の話とは、全く関係がないのです。
つまり、
法令審査・処分審査などの<審査の方法>と、
適用違憲・法令違憲などの<違憲部分の除去方法>とは別箇独立の問題です。
(興味がございましたら、ぜひ『急所』36頁ご参照ください。)
第六回で強調しているのは、
「法令に違憲部分はないが、その適用例における処分は違憲無効」という
違憲部分の除去方法がおかしい、
ということです。
それと、私の記事では、法令審査→適用審査という順序で審査しろ、とは書いておらず、
法令審査、処分審査、法文違憲審査→処分審査のいずれかで審査する、としているはずで、
法令審査の後に、処分審査をやるという方法は、提唱していないはずです。
というのも、先ほど申しましたように、
法令全体が合憲なら、その法令に違憲部分はないことになるので、
適用=処分(を基礎づけている部分)の違憲を主張する意味がなくなるからです。
というわけで、私に、法令審査→適用審査というのを一般化する意図はなく、
むしろ、そんな流れの議論は論理的に無意味 という立場です。
ではでは、また何か御疑問ありましたら、お寄せください。
健康優良児様のおかげで、私の議論の
どういうところがわかりにくいのか、伝わりにくいのか、がわかり、
大変勉強になりました。ありがとうございました。