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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

急所第二問と裁量論

2011-11-30 15:44:08 | Q&A その他
急所演習編第2問について (satoimomoko)
2011-11-10 16:12:29
木村先生はじめまして。「憲法の急所」で勉強させていただいている者です。

第2問の原告の主張について質問があります。
急所97ページでもご指摘のとおり、剣道受講拒否事件判決の調査官解説によれば、「本件は、剣道実技の履修を義務付け強制する措置の当否を直接的に問題とするものではな

い」との記述がありますが、この記述に基づいて、

本件方針によれば、Xの信仰に反する行為をしなければ、進級できない。
よって、事実上Xは、信仰に反する行為を強制されることになる。したがって、本件方針に基づく処分は、Xの宗教的行為の自由を侵害しているといえる。

というような趣旨の主張にして、裁量論を持ち出さないことは、不可能、または筋の悪い主張なのでしょうか。
第2問の解説を読むまでは、「裁量=原告に不利」というイメージだったので、原告側で裁量論を主張することに抵抗感がありまして、以下のように主張してしまった場合は全く点数が入らないのか、気になってしまいました。


お時間がありましたらご回答よろしくお願い致します。


>satoimomokoさま (kimkimlr)
2011-11-10 16:32:15
こんにちは。ありがとうございます。

さてさて、受講拒否の事案ですが、
あれを実際に国家試験に出す場合、
信教の自由で書く答案を0点にする
という採点基準をとることは、おそらく無理だと思います。

というのも、そういう構成で書く人がほとんどだからです。

しかし、それは理論的に正しいということではなく、
そういう構成を0点にすると、
みんなが0点になって差がつかないから
しょうがなく、ということです。


理論的には、急所にも書いたように
退学処分は自由権の直接制約になりません。

それでも自由の制約だというのであれば、
自由権の概念に変更を加え
保護範囲と制約論のとこで一大勝負です。

また、おっしゃる通り、裁量拘束という土俵は
原告に有利とは言い難いのですが、
ういう土俵で戦わなくてはならない場面もあるということかと思います。


これが回答になりますが、実践的には
自由権の侵害になる!と主張し、
制約がなくても裁量論と
二段構えをとるのがいいのでしょうね。
急所の論証例は、あくまで一例で、
あの問題では、自由権の典型侵害とは違うよ
ということを強調したくて
ああいう論証になっております。

ご回答ありがとうございました (satoimomoko)
2011-11-10 18:57:07
木村先生

早速のご回答ありがとうございました。とてもすっきりしました。
急所の問題を解いていると、主張の組み立て方だけでなく、ベースとなっている判例の理解も深めることができて、とても勉強になります。

また質問させていただくこともあるかと思いますが、よろしくお願い致します。

>satoimomokoさま (kimkimlr)
2011-11-12 12:05:03
ありがとうございます。それでは、また。

組織規範の根拠法

2011-11-30 15:42:26 | Q&A その他
急所・第2問 水泳受講拒否事件について (mona)
2011-11-09 21:54:43
木村先生、はじめまして。

「憲法の急所」で勉強させて頂いている者です。
まだ、全て読み切れてはいないのですが、「権利の基本手順」がとても分かりやすく、また問題も考えるのが楽しくなるものばかりで、とても面白いです。
こんなに素敵な本を書いてくださって、本当にありがとうございます。

学習していて、2点ほど、分からないことがあったので、質問させてください。

急所・第2問 水泳受講拒否事件について

 検討編では、地公法23条5号を根拠法とされていましたが、この法令は組織規範ですよね?
 木村先生は組織規範も法律の留保論における根拠法たりうるというお立場なのでしょうか?

 仮に組織規範は根拠法たりえないという立場をとると、本件事案はどのように処理することになるのでしょうか。本件方針提示は、法律の根拠がない行政活動(法治主義の

見地から認められる権限分配の原則からは、このような行政活動も論理的にはありうると思います)ということになりますが、処分違憲は法令の一部違憲であるとする木村先

生のお立場からすると、法令がないため処理が不可能ということになるのでしょうか?木村先生のお立場は、組織規範も根拠法たりうるという見解を前提とされているのでし

ょうか?

防御権制約の場合の正当化の判断について

 「目的の正当性」とは、何の(誰の)目的を判断するのでしょうか?
 法令審査の場合は、法令自体の目的をその法令の記載を中心に判断するものと認識しています。処分審査の場合はどうなのでしょうか?
 私は、以前は処分主体の主観的な目的で判断するものと思っていました。しかし、木村先生の処分違憲は法令の一部違憲であるという見解に納得してからは、法令自体の目

的を判断するものだと考え直しました。処分審査も、法令を審査していることに変わりないからです。
 しかし、「憲法の急所」p.12の5の(1)目的の正当性の部分を読むと、処分審査の場合は処分主体の県知事の目的を判断すると解説されています。私の考え方はおかしいので

しょうか。

以上、2点です。
一生懸命考えましたが、どうしても分かりませんでした。

ブログにコメントするということ自体、人生初なので、読みにくいところもあると思います。
また、根本的に勘違いしている可能性が高いので、質問の意味がよく分からなければ申し訳ありません。

よろしくお願いします。


>monaさま (kimkimlr)
2011-11-10 15:19:16
コメントありがとうございます。
とてもうれしいです。

さて、ご質問の点ですが、
第一。

組織規範は、当然のことながら、
法律の留保論における根拠法になります。
法律の留保論というのは、
「この場面の根拠として」
組織規範で十分か、根拠規範まで必要か、という議論です。

いわゆる侵害行政では、
組織規範では不十分であり、
他方、
一般の給付行政や
ぷいらいばしー問題の生じない
行政調査(道路の確認とか)については、
組織規範で十分だといわれます。

第二の点ですが、
まず、「憲法判断の方法」カテゴリーの
「処分審査(まとめ)」をご覧ください。

処分審査(処分審査1)の場合、
目的手段審査の「目的」は、
根拠法の保護法益・根拠法が追及する目的です。

刑罰法規の場合は、目的となる保護法益が
限定されてますが、
行政法規の場合、「公益の実現」とか
「公正な教育」といった抽象的になる場合があるでしょう。

このように根拠法の保護法益が抽象的な場合は、
「この処分は、
 根拠法の目的(公正な教育)を達するために、
 病気の生徒に適切な補助を行うこと
 と解される」
などとして、根拠法の抽象的な目的に包含されるもののうち、
特に、こういう具体的な目的の達成が目的になっている
などとします。

こんな感じでよろしいでしょうか?

お返事、ありがとうございます (mona)
2011-11-10 17:56:01
木村先生、こんばんは。

昨日、急所第2問と、処分審査について質問させていただきましたmonaです。
こんなにも早く、丁寧に回答していただいて、とても感動しています。
勇気を出してコメントをして、本当によかったです。
ありがとうございます。

組織規範が根拠法になるのは当然だったんですね。
法律の留保論は、その上での議論だということを理解していませんでした。
回答を読んですっきりしました。

処分審査の目的の正当性の判断についてもよく分かりました。
急所p.12の「県知事が私利私欲目的で競業者への営業不許可処分をした事例」というのは、処分の根拠法令から抽象的な目的しか読みとれず、「私利私欲目的」も包摂してい

るようにみえる場合が前提となっているのですね。
そうであれば、主観から判断しても法令の目的を審査していることになりますもんね。
とても納得しました。

2点とも、分かりやすく、丁寧に教えていただき、本当にありがとうございます。

これからも、急所でしっかり身になる勉強を続けていきたいです。
ブログの連載も楽しみにしています。
ちなみに1番好きな連載は、ツツミ先生シリーズです。
ライトノベル風で、微妙なニュアンスが伝わって、とても面白いです。
クスクス笑いながら読んでいます。

それでは、お体に気をつけて。
本当にありがとうございました。



>monaさま (kimkimlr)
2011-11-12 12:04:26
コメントありがとうございます。

しばらく放置しておりましたが、
ツツミ先生の連載、復活すべく頑張りたいと思います

ありがとうございました。

急所第五問について

2011-11-30 15:41:23 | Q&A その他
第5章 ペットボトル輸出規制事件について (smile)
2011-11-08 23:04:52
はじめまして。木村先生の憲法の急所を愛読している者です。憲法の急所は,先生が各問題に論証を書いてくださっているため,本当にありがたい演習書です。ありがとうご

ざいます。

第5章 ペットボトル輸出規制事件についての質問を3点よろしくお願いします。

①先生の急所の解説の中には,「立法内容の違憲性と立法行為の国賠法上の違法性を区別している」(小山先生の憲法上の作法・新版P234)在外国民選挙権違憲判決(H

17.9.14)が挙がっていなかったのですが,これを挙げていない理由は,問題との関係で不要と考えられたからでしょうか。
私は,上の判決から本問を考えたとき,本件法律が違憲でも,国賠法上も違法とは限らないから,本件法律の違憲性の検討とは別に,「立法の内容…が国民に憲法上保障され

ている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合」という判例の要件を検討して国賠法上,違法となるか判断するのではないかと思ったのですが,先生が上記判例を

解説で挙げていなかったため,自分の思考のどこが誤っているか気になりました。
私なりに先生が不要と考えた理由を考えてみました。
→上記判例は選挙権に関する判例であり,本件は財産権の場合であるから,事案が違うので射程が及ばない。だから記述する必要なし。

②急所P183の上3行目に「…国賠にせよ,規制違憲の評価が前提になります。」とありますが,必ず違憲の評価が前提になるのでしょうか。
小山先生の憲法上の作法・新版P235では,「なお,国賠訴訟において,裁判所は立法内容の違憲性と立法行為の国賠法上の違法性のどちらを先に審査するかという問題がある

。当該訴訟の解決という点では,国賠法上の違法性のみを審査すればよいようにも見えるが,立法内容の違憲性から審査する例も少なくない。…」
あったため,少し気になりました。
「裁判所」は違憲性を判断しなくても良いが,「受験生」の立場では解答上,違憲性の判断を前提としてしなければならないということでしょうか。

③急所P184Q3の解説では「…②ペットボトルを輸出する権利が侵害されたことになり,これは③憲法29条1項により保障された財産権である」と書かれ,また,P206の

真ん中に「本件立法により憲法29条1項で保障される海外輸出の権利が害され…」と書かれています。
他方,急所P188では,「憲法29条1項が保障する権利とは②既得権を侵害されない権利です。細かいことですが,同項が保障しているのは,既得権そのものではなく,既得

権侵害立法をしないことを請求する権利だという点に注意してください。既得権を保障するのは,あくまで個別の法律です。……Ⅹが有していたペットボトルを輸出する権利

は,民法206条により保障された既得権だということになる」とされています。
ここで疑問なのが,ペットボトルを輸出する権利は憲法29条1項で保障されているのか,それとも,民法206条で保障されているのかという点です。
また,憲法29条1項が保障しているのが「既得権侵害立法をしないことを請求する権利」であるならば,本件における制約の対象は,「ペットボトルの輸出する権利を侵害

しなことを請求する権利」となるのでしょうか。

以上,長々とすみません。また,私の勉強不足のため,重要な点を見過ごしていると思われますので,ご教示頂ければと思います。

お忙しいところすみません。



>smileさま (kimkimlr)
2011-11-09 16:00:36
こんにちは。ご愛読いただけて、うれしいです。

ご質問の点ですが、
たしかに、判例のような国賠違法に過失判断を含むような
枠組みでは、
「法律内容の違憲」=「立法行為の『違法』」にはなりません。

しかし、これは
法律内容が違憲であっても立法行為が「違法」でない場合がある、ということであり、
法律内容が違憲でない場合に、
立法行為が「違法」であることはありえないわけです。

なので、「原告から」立法国賠をする場合には、
法律内容の違憲を主張し、
そのうえで、
国賠法上も違法の評価を受けることを論証する、という流れになります。
国賠法の「違法」要件については、
在外邦人判決のように解釈する方法もありますし、
それにそって書いた方が実務的には良いのでしょうが、
私は、国賠法の違法要素は文節的に考える
宇賀説論者なので、
それを意識して、かなり細かく違法要素を明示して論証しています。

なので、これは権利の性質の違いというより
国賠法の「違法」要件の解釈の違いです。
判例の表現にあわせていただいても
もちろんかまいません。
しかし、原告の立場からは、かならず、
まず、法律内容が違憲、
そして、国賠法上も立法行為が違法の評価をうける
と流すことにはなるでしょう。


第二点ですが、「受験生としては」というより
「原告としては」ということになるでしょう。

立法内容が違憲であることを論証せずに、
国賠法上違法であると論証することは理論的に無理です。

他方、合憲の結論をとる場合、
裁判所は、立法内容が違憲だろうとどうだろうと
少なくとも違法性の意識がない(違憲性の明白性がない)、
という理由で請求を棄却できます。


第三点ですが、あの問題では
「<民法206条により保障された所有物を輸出(処分)する権利>
を奪われない権利」が、
憲法29条1項により保障されていることになります。

なので、おっしゃる通りの理解かなと思います。

ではでは、頑張ってください

ありがとうございます (smile)
2011-11-10 10:38:29
第5章 ペットボトル輸出規制事件について質問させて頂いたsmileです。

お忙しいにもかかわらず、素早い返答をして頂いて本当に感謝しております。

先生の憲法の急所は本当に分かりやすく、周囲の人もみんな購入しています。

またご質問させて頂くことがあるかとは思いますが、どうぞよろしくお願い致します。


>smileさま (kimkimlr)
2011-11-10 15:20:19
ありがとうございます。
ではでは、また何かあったら

憲法上の権利の法益

2011-11-30 15:39:59 | Q&A その他
(K.s)
2011-10-23 19:42:39
木村先生。お仕事大変な時期にごめんなさい

またわからない、というか結構前から友人と意見が対立していることがあります。お時間の都合のいいときに教えて頂けると嬉しいです。

わからないというのは権利の根拠や価値の考え方についてです。例えば、表現の自由なら自己実現や自己統治、営業の自由なら生計維持や個人の人格的価値、があげられると思います。一般論としてはそうなのですが、実際の事件で制約されている具体的な権利をみると、上のような価値に必ずしも結びつかないような価値が認められるような場合

があります。例えば、表現の自由では、今年の新司法試験だとX社のZ機能画像の提供には、ユーザーの利便性や詐欺被害の防止という価値があります。これらは自己統治の価

値に含まれないという意見の方もなかにはいらっしゃるのではないかと思います。営業の自由だと、薬事法判決で問題になった薬局開業の自由は、上の価値の他に、例えば薬

局が少ない地域の住民だと遠くまで買いにいかなければなりませんが、そうした不便が解消されます。身体が不自由で遠くまで行けない方にとったら命の助けにもなります。

言い出したらきりがないですが、こうした必ずしも本人の自己実現とか自己統治、生計維持と関わりない価値を、どう憲法論に組み込んでいけばいいのか、というのが疑問点です。

私の友人は、権利の保障根拠ではそうした事案に即したような個別的な利益を加えて考えるのはダメだとか、目的審査の中の比較衡量のなかで考えたら?といいます。私なん

かは、事案に即して考えたほうがいいと思って、権利の根拠のところで自己実現、自己統治に加え、他にこんなにも大事な価値があると主張して、さらに比較衡量でもそうし

た利益を全部合わせて対立利益と比較すればいいと思っています。

先生。私の考え方は一般的な考え方とは違うのでしょうか??誰が正しいことを言っているのかまったくわかりません先生はどのようにお考えになるのか教えていただけるとうれしいです。
長くなってごめんなさい‥


>K.sさま (kimkimlr)
2011-10-24 14:38:44
憲法上の権利は、特定の法益を保護する観点から、
権利として構成されたものです。

このため、憲法上の権利と公益を考量する場合、
国民の行為が、その権利の保護法益(基本権法益)以外の利益の達成に役立つ場合でも、
それ以外の利益を主張することはできません。

これに対し、公益の側の主張も、秤に乗せよと主張できる利益は、
立法目的の範囲に限定されます。

例えば、窃盗の保護法益は、あくまで財産権であり、
その窃盗犯を処罰することが、
別件の殺人事件の責任を追及することにも役立つような場合に、
基本権との考量で、殺人の責任追及や生命侵害の一般予防
につながるというような主張はできないわけです。

このように、憲法上の権利にまつわる比較衡量の場合、
国民の側は、基本権条項が保護する利益のみを主張でき、
他方、
公権力の側も、
立法目的により特定された保護法益のみを主張できる、
という構造になります。

法的判断というのは、その法規範の保護法益のみを考慮し、ほかを切り捨てよ、という状況で
なされる判断です。
したがって、法学的解釈論としての憲法解釈論としては、
このように答えざるを得ません。
これが、法学者一般が依拠する概念法学の解釈論です。

ただし、法的判断においては、
その事案のあらゆる利益を考量すべきである、
といういささか異端に属する自由法学、さらには、利益法学という考え方があり、
この立場からすれば、
憲法判断の場でもあらゆる利益が考量されることになるでしょう。

というわけで、ご友人との対立は、
概念法学対利益法学の対立だと思えばよろしいかと思います。
この対立は、憲法解釈論というより、
広がりのある法学方法論の対立だと思います

Unknown (K.s)
2011-10-24 17:44:14
ありがとうございます!
先生の御説明は、私の友人は誰も知らなかったみたいなので、私たちは先生とは違う次元で議論してたみたいです‥

一般的な立場にたって、かつ表現の自由の価値を自己実現と自己統治に限定するなら、それらの内容の理解がとても重要ということになりそうですね!

あと、私が使っている刑法の教科書の利益衡量についての記述に、あらゆる利益を天秤に乗せていいのではないか?というような問題提起が書いてありました。今まで何が問

題か全くわからなかったのですが、おそらく、先生の仰られた議論が背景にあるからだなぁと‥今わかりました!

刑法も解決していただきありがとうございました

急所第一問と第二問の違いについて

2011-11-30 15:38:11 | Q&A その他
急所・第1問と第2問との違いについて (hiro)
2011-10-23 17:27:34
木村先生


はじめまして。
現在、先生の『憲法の急所』を使って勉強をさせていただいている者です。

突然ですが、今回はタイトルの点についていくつか気になる点がありましたので、ご質問させていただきたく、コメントさせていただきました。



早速ですが、質問に入らせていただきたく思います。

先生の『急所』の記述によれば、第2問では国家不作為状態が原則であることから信教の自由の制約とは言えない(P.97)、とされています。
これに対して、第1問では、結果的に内心の自由の制約が認められています(P.79)。

この記述の前提として、以下の質問があります。

質問①
行政主体と法関係を持った者に対して、一定の給付の撤回まですると自由の制約がないことになるのに、給付の撤回まではいかず厳重注意などであると自由の制約がある、と

いうようにも読めるのですが、どうでしょうか。

第1問と第2問とでは、どちらも(ある意味では)行政の内部において、公務員としての地位を与えられていたり、学校の施設を利用することが出来ていたりなど、国家からの

作為がなされていて、自己の内心に関連する行為をすること(しないこと)の自由が問題となっているのに、なぜ自由の制約の有無の認定に違いが出るのか不思議に感じたた

め、以上のような質問をさせていただきました。


質問②
第2問で制約が無いと記述されたことが、XにはA高校において宗教的行為(水泳授業の拒否)の自由を有することを前提としているとした場合、端的に、退学したくないのであ

れば宗教的行為をするな、と条件づけられたとみて、同自由が制約されたと認定してはいけないのでしょうか。

第1問でも、戒告処分を受けたくなければ内心に密接不可分に関連する行為をするな、と条件づけられたから内心の自由の制約が認定されたと思い、そのような考え方が第2問

にも応用出来るのではないかと考えたため、②の質問をさせていただきました。


多分、両質問ともに内容に重複があると思いますが、ご回答していただければ幸いです。

それでは、失礼します。




>hiroさま (kimkimlr)
2011-10-24 14:28:32
ご質問ありがとうございます。
おっしゃる通り、端的に言えば、ピアノ伴奏拒否事件・不起立訴訟は、
全て、給付(公務員の地位の付与)の撤回(免職)なしい縮減(戒告歴付給付への変更)です。

この点は「気になったこと」カテゴリーの
「練習でお金をとるのは」の記事もご参照ください。

そういう理由で、伴奏拒否訴訟や不起立訴訟で
最高裁は、権利の「制約」自体を認めていません。

これに対し、学説は、質問2で示されたような
一度雇用された場合には、
公務員の地位を有していることがベースラインとなる、
という議論を前提に、
自由の制約を主張していますし、急所の一問でも
これを前提にした主張を紹介しています。

ただし、最高裁がとっている立場は、
あくまで給付の撤回・縮減は
自由権の制約ではなく、国家の裁量が
広汎に認められる、というものだと思います。

おそらくは、公務員の場面でも自由のベースラインの変動を
認めたくないという考慮でしょう。

こんな感じでどうですか?


ご回答へのお礼及びご回答に対する質問 (hiro)
2011-10-24 18:45:09
木村先生

先日質問させていただいた、hiroと申します。


まずは、こちらの拙い質問の趣旨を真摯に読解していただいた上、それに対して的確なご回答をしていただき、誠にありがとうございます。


確かに、私にも「ある種の思い込みがある」というのはまさにその通りで、とかく何でもかんでも憲法上の権利の制約に結び付けて、それに対する正当化論証を行おうと考え

ておりました。
憲法論としての答案なのだから、憲法上の権利について、自分が理解している違憲審査基準論を展開できなければならないと。


その実、憲法論とは何ぞや、や、憲法上の権利を論じる際の作法、特に違憲審査基準とは何ぞや、といった点について、そもそも理解しているとはいえなかったり、勘違いし

た理解しかないのではありますが…。

改めて、憲法の奥深さを痛切しました。


さて、前置きが長くなりましたが、早速、さらなる質問をさせていただきたく思います。
不躾な前置きに加え、さらに質問をすることになり申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。


質問①
先の先生のご回答によれば、学説では公務員の地位のあることがベースラインとなっていることを暗黙の前提に自由の制約を主張しており、かかる議論が『急所』の第1問でも

展開されている、とされています。
とすると、第1問も、第2問のような論証をすることも可能である、ということでしょうか。


質問②
先のご回答によれば、このような事案の場合においては、『急所』の第2問のような議論を展開することが(その善し悪しは別として)最高裁の立場に則ったものである、と先

生はお考えである、と思われます。
とすると、答案では、学説的なある種の思い込みの議論に則って権利制約を認定するべきか、それとも、自由権の原則に則り制約は認定しないのか、起案の効率性や採点官の

着眼点に配慮すれば、いずれの思考枠組を採用した方がよろしいのでしょうか。

質問②については、かねがね行政法の起案をすることと併せて考えていたことであり、憲法の起案でどこまで行政法的な起案方法を採用しても構わないのか、という点につい

て気になっていたため、質問させていただきました。


またも長い質問になり、しかも、今回の質問は全くもって矮小な答案上の質問となってしまいましたが、ご回答していただければ幸いです


それでは、失礼いたします。


>hiroさま (kimkimlr)
2011-10-24 19:31:15
そうですね。
第一問の類型だと、自由権の直接制約を主張する学説も多いので、
そういう主張の仕方を踏まえたうえで、
「これが成立しないとしても」として第二問のような構成をとるのが良いと思っています。

個別の答案では、ということですが、
まあ両方の構成を示しておくのが無難なのでしょう。

こんなかんじかと。

お礼 (hiro)
2011-10-25 11:17:36
木村先生

丁寧なご回答ありがとうございます。

先生からのご指摘のおかげで、『急所』第1問と第2問との解説の違いに納得がいきましたし、また、それを踏まえた論述についての方針についての悩みも軽減されました。

本当にありがとうございます。

今後は、先生からのご指摘を踏まえ、憲法問題の設定を丁寧にし、それと並行して、通説的見解と厳密な議論の両方にも配慮できるようにし、最終的には具体の問題を見て憲

法論としての論述のウェイトを適切に決定できるように訓練していきたいと思います。


それでは、失礼いたします。


>hiroさま (kimkimlr)
2011-10-25 21:09:35
どうもありがとうございました