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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

ポッドキャストしてます

2014-07-01 10:46:21 | お知らせ
そんなわけで、閣議決定の日を迎えたわけですが、
やはり、憲法論が大事かと思われます。


昨日、チキさんのラジオで、
秋元司衆議院議員(自民党)
小西洋之参議院議員(民主党)とご一緒させていただきました。
秋元先生、小西先生、ありがとうございました。

ポッドキャストはこちら
時間のない方は38分から41分くらいの3分がハイライトです!


議論のポイントは、以下の諸点。


1 憲法9条は?

そもそも、集団的自衛権の行使(でしか根拠付けられない)武力行使は、
憲法9条に違反しないのか?
(個別的自衛権の行使は、日本領域内の平和と安全を守る
 日本政府の義務などから説明できるだろうが、
 他国の自衛援助行為だと、これは9条がかなりキツい)


2 行政権の範囲か? 憲法65条・73条

また、そうした武力行使が仮に9条に違反しないとして、
それは、「行政権」(65条)の範囲なのだろうか?

行政権の範囲を具体化した憲法73条は、
「一般行政事務」(本文)
「国内法律の執行」(1号)
「外交」(2号)

などを列挙するが、

「事務員が行う一般行政」に
対外軍事活動が含まれるというのは、ちょっと無理そう。
(この点は、昨日、秋元議員・小西議員ともに納得してくださいました)
(なお、個別的自衛権の行使は、
 国内の安全保持のためで、防衛行政として
 一般行政事務および国内法律執行に含まれる作用)


対外軍事活動なので、国内法の執行(1号)とは違うし、
「外交」(2号)は軍事とは別の概念。

いったいぜんたい、どこに集団的自衛権の行使の権限が書いてあるのか・・・。
(これが説明できないと、行使は違憲・・・。
 というか、憲法9条で軍事カテゴリーが消去された結果
 憲法第五章がああいう規定の仕方になっている、
 というのが日本国憲法の基本設計なのです)



3 集団的自衛権行使のための手続は?

このように集団的自衛権の行使には、
その根拠や手続がない。

たいていの国では対外軍事作用については
行政・外交とは別の項目を立てて、
例えば、「国会の事前承認が必要」といった手続を規定するのですが・・・。

果たして、政府は、憲法何条から
国会の承認が必要とか、我が国と密接な関係のある国とかという
話を導くのだろうか?

どこにも「集団的自衛権を行使するときは国会の事前承認」と書いた条文がない。

(いや、そりゃやっぱ憲法変えないと、
 ということになるのでは、というのが、
 私と秋元先生、小西先生、チキさんとの上記38分前後の議論です)




と、いざ解釈変更が合憲かという議論になったとき、越えなければならない山はいくつもある。

というか、越えられない山がいくつもある。

いや、これはそもそも山なのだろうか

山だと思っていたものが、実は、宇宙の果ての壁だった・・・

と、ポエムの一つも読みたくなるわけですが、
論戦は、第二ラウンドに入りつつある今日この頃でした。


そして、今後重要な点は、周知のとおり以下の通りです。


1 政策論(山に登るかどうか)と法律論(崖から登るか、道から登るか)は区別しよう

2 正しい法律論・憲法論を戦わせよう

3 立場の違う人と議論するときは、お互いを尊重し、礼儀正しく議論しよう

4 1から3を踏まえて書かれた私の『テレビが伝えない憲法の話』を宇宙的スケールのベストセラーにしよう。

立憲デモクラシーの会イベント

2014-06-20 11:42:59 | お知らせ
ご無沙汰しております。

いろいろあって、しばらく更新できませんでした。

私も呼びかけ人としてお手伝いしております
立憲デモクラシーの会の公開講演会が開催されます。

第一部は、三谷太一郎先生ということで、
まさにマスターヨーダが、ついに立ち上がった的な歴史的講演会です。

(この場合、アナキンは誰で、皇帝は誰なのか
 という問題はあるわけですが・・・。)

第二部では、前田哲男氏の講演もあります。
私は、憲法学の観点からコメントをすることになっております。




<集団的自衛権を問う—— 立憲主義と安全保障の観点から>

7月4日(金) 午後6時~8時(5時半開場予定)

会場: 学習院大学西5号館B1教室(JR目白駅)
(入場無料。先着順。予約は受け付けていません)

第1部
基調講演:三谷太一郎(日本学士院会員・東京大学名誉教授・政治史)
「なぜ日本に立憲主義が導入されたのか:その歴史的起源についての考察」

 コメント:加藤陽子(東京大学教授・歴史学)

 司会: 山口二郎(法政大学・政治学)

第2部

講演:前田哲男(軍事評論家)
「集団的自衛権をめぐる国会論戦を振り返って」(仮)

 コメント:木村草太(首都大学東京准教授・憲法学)

 司会: 中野晃一(上智大学・政治学)


詳細はこちら




また、月曜日にチキさんのラジオに出演しまして、
集団的自衛権の行使がなぜ違憲と言われるのか、
を5分で説明しよう、という企画にチャレンジしております。


ええと、チキさんのベストアシストをうまく決めきれなかった感もあり、
ちょっと補足させていただきます。

1 授権規範が必要なのである

まず、根拠がない云々というのは、どういう議論なのか
というようなことを、メディアの方からもご質問いただいたりしますので
ちょっとまとめておきましょう。


あらゆる団体に共通ですが、
団体は、規約に決められた範囲で活動をします。
(規約が団体に、これやっていいよ、と決めることを
 「授権」といいます)

例えば、野球部は、野球部規約に決められた範囲で活動するので
部費を、
部長の実家の美容室の資金にしたり、
サッカー部の遠征費につかったりしてはいけないのです(当たり前や)。
(もちろん、規約にそういうことをしてもよい
 という授権規定があれば別です。)

そんなわけで、
消防車の出動だろうが、年金の給付だろうが、
営業停止命令だろうが、関連企業への行政指導だろうが、
政府が国家権力を行使をするためには、憲法上の授権が必要です。

例えば、清宮四朗先生の教科書(憲法Ⅰ第三版17頁)等を見ると、
憲法には授権規範としての側面があり、
「憲法以下の全ての法令は」「憲法の授権にもとづいて存立」すると述べています。

(このことは、芦部先生の教科書でも、13ページの註に書いてあり、
 専門的ではあるものの、大学学部レベルの当然の知識といってよいでしょう。)

(統治機構論が必修でない大学だったり、
 統治機構論の講義で、こういう基本を飛ばして、ハイレベルな講義で飛ばす
 先生もおられますが・・・)

で、いわゆる行政活動は、全て
日本国内の公益を実現すること、国民の権利を守ること
という憲法13条が定めた日本国の業務に含まれる活動なので、
憲法上の根拠があるわけですね。


2 個別的自衛権については授権がある

では個別的自衛権の行使はどうか?

ということですが、
日本国への直接攻撃を除去する作用なので、
日本国は国民の自由や権利などを守れと決めた憲法13条により根拠付けられており、
また、
国内の安全確保作用なので、行政権(憲法65条)に含まれる、
と言われているわけです。
(青井先生の『憲法学の現代的論点(第二版)』の論稿など参照)

また、憲法9条もそれを禁じていないと言われているわけですね。
(もちろん、個別的自衛権違憲説もなくはないですが、
 個別的自衛権違憲説をとっても、集団的自衛権の行使が合憲
 ということにはならんですな)

これが従来の内閣法制局・政府解釈のキモです。


3 ところが、集団的自衛権は・・・。

 というところについて、こちらをお聞きください。


4 で補足

でもって、一応、政府は、ある種の外国への攻撃は日本への攻撃なのだ、
だから、個別的自衛権とはなしは変わらん、という議論をするわけですが、

そういう議論をする場合には、

その外国と日本で、防衛の面である種の統一体・連合・連邦・連合国家的なもの
をつくっていることが前提になり、
(それを作ること自体は、もちろん、ありうる一つの政策です)

いくらなんでも、
現状、日本はアメリカの51番目の州ってことにはならないだろうし
そうした国家連合への加盟は、主権のありように大きな変更を加えるので、
当然、憲法改正が必要になります。
(2000年代の学会では、EU化の流れの中で、
 国家統合と各国憲法という問題が盛んに論じられました)


と、こういうわけで、集団的自衛権の行使を容認するための解釈変更は
憲法上無理ではないか、と言われているわけです。

なわけで、行使容認が必要なら、やはり憲法の改正が必要でしょう、が素直な結論だと思われます。

講演会企画のご提案(ご応募お待ちしております)

2014-06-13 12:31:25 | お知らせ
最近、いろいろと考え、次のような企画を提案してみたいと思います。
ぜひ、ご応募ください!

【タイトル】
新国立競技場・集団的自衛権問題を考える
――建築家・法律家からの技術者としての忠告――

【企画の趣旨】
今、オリンピック・パラリンピック開催施設の整備および安全保障政策の整備が、
重要な政治課題となっています。

その中でも、新国立競技場の設計と集団的自衛権の行使容認とは、
それぞれの論点の中心課題であり、
本来であれば、国民に十分な説明をして、納得を得たうえで方針を決めるべき事項です。

しかしながら、
新国立競技場の方針を決める有識者会議、
集団的自衛権行使容認を主張する安倍政権は、
いずれも建築・法律の専門家をほぼ排除した内輪メンバーで議論を進め、
外部の建築家・法律家の議論を一向に聞こうとしません。

これは、国家全体に大きな影響のある政策決定をする者の態度として、あまりに無責任です。

こうした主張は、建築にも法律にも興味を持たない多くの人から見れば、
単なる政治主張の対立に見えるでしょう。
いずれの政治主張にもそれなりの理があるのだから、
「有識者」や「安倍政権」が
意見の異なる建築家や法律家の話を聞かないのもやむを得ない、と映るかもしれない。

しかし、新国立競技場設計過程や集団的自衛権に関する解釈変更に異議を唱える建築家・法律家は、
単なる政治主張として異議を唱えているのではありません。
それに異議を唱える人は、「技術者」としてあり得ないと主張しているのです。

それはつまりこういうことです。
人にはそれぞれ好みがあり、政治主張も異なります。

そうしたものは、個人がそれぞれに選ぶべきで、その選択は尊重されねばなりません。

ただ、そうした選択の自由の背後・基礎には、好みや政治主張を越えて共有すべき最低限のルールがあります。

その最低限のルールを破る選択は、そもそも選択肢に含まれてはいけません。

そして、技術者とは、個人の好みや政治主張の違いを超越する、
最低限のルールを共有する人々なのです。

今、新国立競技場や集団的自衛権行使容認に異議を唱えている建築家や法律家は、
有識者会議や安倍政権による、
こうした最低限のルールの破壊に、技術者として「それは無理だ」と忠告しているだけなのです。

こうした「技術者としての忠告」は、まことに残念なことに、
各種メディアでは単なる政治主張の違いとしてしか報じられません。

そこで本講演会では、現在の新国立競技場や集団的自衛権行使容認がなぜダメなのかを、
政治主張としてではなく、技術的・論理的に紐解いていきたいと思います。

【講演会目次案】

1 はじめに
  技術者としての建築家・法律家

2 新国立競技場の問題点
① 有識者会議
② コンペ要綱
③ 修正案
④ 国際社会の中で

3 集団的自衛権行使容認
① 安保法制懇
② 想定事例の異様さ
③ 修正案「必要最低限」
④ 国際社会の中で

4 おわりに


【講演会出演者案】

建築家 有識者メンバーから  
    異議を表明しているメンバーから 
    (私に心当たりあり)
法律家 解釈技術の高いメンバーから
    (私に心当たりあり)

司会  木村草太

【日時・場所】
日時 : なるべく早く
場所 : アクセスのいい場所
(アバウトやなあ)

【予算】
各出演者  3万円程度
会場費   5万円~20万円

参加費   資料代・会場費として1000円
参加人数  300人程度

【主催者選定基準】
・講演会をハード面できちんと実現してくれること
・出演者の交渉について丁寧に相談してくれること
・講演会の内容を、映像・文字に残して、多くの人に届けられる形にしてくれること
以上の3点を総合考慮し、私の良心に従い、誠実に選定します。

【応募方法】
既に、私のメールアドレスをご存じの方は、メールください。
ご存じでない方は、ツイッターで@ツイートの上、フォローいただければ、DMにて、
ご連絡先をお伝えいたします。

(ただし、「主催者としての実力を伴わない」と強く疑われる方からの@ツィートについては、
 スルーすることもありますので、ご容赦ください)


【応募期限】
≪第1段階≫
とりあえず、興味の有無についてのご連絡 → 6月20日まで
ご連絡いただいた方の中から、数名に絞った上で、こちらから連絡いたします。
≪第2段階≫
その後、内部決済等による確定判断のご連絡 → 7月末日まで
なるべく早く開催したいので、7月中には確定したく思っておりますので、ご協力の方、どうぞよろしくお願いいたします。

【お問い合わせ】
応募方法に準じて、お願いいたします。

朝日カルチャーで憲法と集団的自衛権の話やります

2014-06-04 10:47:14 | お知らせ
さて、明日は、朝日カルチャーセンター新宿校で19時より、
「憲法9条再考」と題して、
憲法と集団的自衛権の講義をいたします。

三回連続講義の1回ですが、
明日の分は特別に単発申込みもできますので、
興味のある方はぜひお集まりください。

 お申込みはこちらから。

講義では、
安保法制懇の報告書、15日の首相会見などについて、
分析をしてみたいと思います。

政府関係者の方にも参考になるお話になるかと思いますので、
現役閣僚の方は20%割引、
特に勉強して頂きたい安保法制懇のメンバーの方は40%割引、
そして、内閣総理大臣の方は、なんと50%割引で聞けますので、
ぜひ、こちらから。

租税法のお話

2014-06-03 12:35:55 | お知らせ
名人戦が終わった。

どれも素晴らしい将棋だったがスコアは一方的。
昨年もそうだったが、ほんの少しの実力差が大差になってしまう
現代将棋の恐ろしさを見せてくれたシリーズだったと思う。


というわけで、今日は本のご紹介。





私も、助手時代にお世話になっておりました
増井先生の作品です。

法学教室連載時から、その丁寧で誠実な筆の運びが
評判だったわけですが、
うーんと、こんなに大事な話だったら、
早く本にまとめてよ、と思った方も多いのではないだろうか。

私もとても楽しみにしていた一冊。

ご紹介が遅れましたが、

名著はいつ読んでも名著、の格言通りの一冊なので、

ぜひ!