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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

シンデレラレッスン(4) ついに決着

2013-09-14 17:24:35 | 将棋
【第六図 ▲4二馬まで】



虎の子の金をただ取りされて勝てる道理はない。
ということで、中村六段、ひとまず△8五金とよける。

*なお、ここで▲4一馬から詰みがあったとの指摘を頂く。
 確かに。持ち駒がなくて合い駒をしにくい八枚落ちならではの
 シチュエーション。

それに対し娘、▲3一馬。
再び、中村六段の金(2二)に狙いをつける。

筆者なら、もう金はあきらめ、6七歩成としたいところだが、
中村六段は丁寧に△1二金と避けた。

【第七図 △1二金まで】



ここで、娘は大チャンスを迎えていた。
馬を引いて、3二馬なら一手詰みである。

他に、1二竜と金をとり(同玉なら2二金まで)、
以下、
△1四玉、▲3二馬、△2五玉、
▲3六金、△1五玉、▲1六歩と詰む順もある。

娘も3二馬は、一手詰の問題として出されれば
簡単に解けると思うわけだが、
実戦ではなかなか難しく、
指した手は、▲3二龍。

詰みではないが、着実に追い詰める。
△1四玉と中村六段が逃げて、第八図。

【第八図 △1四玉まで】


ここで、1二の金をとりに行く手を指したいとこだが、
娘は、妙に渋く▲1六歩。

いわゆる「逃げ道封鎖ひよこ」である。
これは、5656動物将棋でらいおんの行く先を
封じるため、早目に逃げ道をひよこで封鎖する
という技であり、そういう細かい技を
5656でやってきてから本将棋をやると
こういう手を指すのか、と少し関心。

さて、とはいえこの手は詰めろではないので、
中村六段、ついに攻めるかと思いきや、
指した手は、金を避ける△1一金。

どうも、この対局における中村六段のテーマは
「金をとられないこと」なのではないかと思われる・・・。

さて、つぎの一手は、
「この対局で一番良い手だった」と褒めていただいた一手。
読み上げ係(すいません)の片上先生もおお!と一言の▲3六銀。

【第九図 ▲3六銀まで】


ずいぶんと玉が狭くなり、
「お前らは完全に包囲された。大人しく投降しなさーい」
という銭形警部の声が聞こえてきそうではないか。

次、1五歩の突き歩詰までなので、
以下、△2五歩、▲1五歩、△2四玉に▲4二馬。

【第十図 ▲4二馬】


ついに、必至となった中村玉。
△6七歩成の形作りに▲3三龍までで上手投了となった。


【投了図 76手目▲3三龍まで】


筆者の思い出では、八枚落ちで有段者に勝つのは
なかなかしんどい。
まして、相手はトッププロの一角。
中村王子の王子玉を堂々と詰ました娘は
偉かったと思う。

中村六段、片上六段によれば、
棒銀を3四から4五に展開し中央を制圧する構想が良かったとのこと。
八枚落ちでも大駒だけでは攻めきれないので、
きちんと棒銀を活用し、制圧するのが大事ですね。
こんなわけで、娘は八枚落ちを卒業したのであった。


そして、娘に将棋を教えてくださった中村六段、
対局を盛り上げてくださった片上六段に、心より感謝です。
まことにありがとうございました。

対局場は、プロが指し、プロが立ち会うということで、
尋常ならざる緊張感の漂う場となり、
娘もとても緊張したけど、とても良い思い出になったとのこと。

娘の生活で、なかなかこんなに集中して、何かをやる機会というのはないと思う。
将棋は、素晴らしいゲームだということを再認識した一日でした。

シンデレラレッスン(3) 虎の子の金を攻められる!

2013-08-04 11:02:39 | 将棋

娘の4五銀に、中村六段は8五歩と角頭を攻めてきた。

【第三図 △8五歩まで】


八枚、六枚といった大規模駒落ち戦では、
この上手の角頭攻めから、一気に落城という場合も少なくない。

受けの手は難しいのである。
とはいえ、一応、7八金と上がってあるので
娘陣も即座に崩壊するわけではない。

どうするかというところで、娘の指し手は機敏、キビン・コスナーであった。
(藤井九段名言集より引用)

△8五歩より
▲6六歩 △同 歩 ▲同 角  △6四金 ▲8四角

と進んだのが、第四図。

【第四図 ▲8四角まで】


こうなっては、上手は、下手の角成を防げない。

飛車と角をとにかくなり込もうというのが、
八枚落ちの基本セオリーであるが、
なんとか、角の方はなれそうである。

そして、この角が、中村六段の悲劇をまねくのであったのだが、
さしあたり、局面は中村六段の猛攻である。

棋界屈指の攻め将軍で知られる中村六段であるが、
さすがに八枚落ちということで、
攻め駒は金だけ。

しかし、この金の攻撃力がすさまじいのが八枚落ちというやつである。

ここから、
△7五歩と歩兵をぶつけ、娘が▲6二角成の間に
△7六歩と取り込む。

ここで娘はガンガン攻めるかに見えたが、
取り込まれた歩兵に▲7七歩とあわせ
△同歩成 ▲同 金 と金を前線に出して防御。


中村六段の攻め将軍△7五金に対し、▲6八飛と大展開して
飛車の成り込みを狙うのであった。

私は、ここで、6五歩と飛車成りをとりあえず止めるのかなあ?
と思ったわけである。

しかし、ここは中村六段果敢に攻め合いに出て

△8六歩。

【第五図 △8六歩まで】





確かに、6五歩と止めたところで
焼石に水で、馬だの銀だので金をいじめていけば
虎の子の攻金を失い、時間はかかるが完封されるかもしれない。

さすがプロの技と、勉強をしていると、
娘は8筋を放置して▲6三飛成。

以下、
△8七歩成 ▲同 金 △7六歩 ▲6一馬
△2四歩 ▲6二龍 △2三玉 ▲4三馬
△8六歩 ▲8八金  △6六歩

八筋から六筋まで中村六段のバリケードが築かれ、
ちょっと駒を渡すと、あっという間に
と金攻めという状況ができあがったのであった。

歩兵一線。

同じような形でも、私がやると
天童名物歩兵饅頭が並んでいるようにしか見えないのだが、
中村六段の手にかかると、ローマ兵のようでかっこいい。

しかし、ここで娘の指し手は、4三にいた馬を一歩前進の▲4二馬であった。

ヨコから見ていると、なんだかボケっとした駒の動きで
何をやっているんだろう?と思ったのわけである。

ところが、この馬の動きをみて中村六段の顔が赤くなり、
「なんで、ボクの駒をいじめるんだ!」という表情になっている。

というわけで、よくよく見ると
馬が攻め将軍の金にあたっている!

【第六図 ▲4二馬まで】





このときの中村六段の苦しそうな表情。

プロ棋士たるもの、幼児と八枚落ちを指すときでも本気。

そんな素敵な姿を見せてくれた4二馬であった。

こうして、局面はいよいよ終盤戦に突入した。

シンデレラレッスン(2)二筋破れず

2013-07-13 16:48:47 | 将棋
片上大輔六段。
言わずと知れた若手実力者で、
今期より連盟理事も務めるとても偉い人でもある。

ひょんなことから、筆者の自宅に招かれ、
さらにひょんなことから、筆者の娘の対局を観戦することになり、
さらにさらにひょんなことから、棋譜の読み上げ係をお願いされるという
目に合われているのだった。

この事実から分かるのは、
片上六段は、尋常ならざるいい人だということであります。
ありがとうございました!


さて、そんなわけで我が家の娘VS中村六段の八枚落ち対決。

初手から始まり

△3二金 ▲7六歩 △7二金 ▲2六歩 △4二玉 ▲2五歩
△2二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛
△6四歩 ▲3八銀 △7四歩 ▲2七銀 △7三金 ▲2六銀

と進んで【第一図】。



娘は棒銀の意思表示をした。

この第一図で、中村六段の指し手は△8四歩。
角頭にプレッシャーをかける一手だが、
具体的な攻めにはまだ遠い。

しかし、娘は、▲7八金 となんとも手堅く受ける。
筆者は、娘に、あぶなっかしい攻めをされないよう
受けは早目にと、教えていたわけであるが、
その成果が出たようである。

以下、△6三金 ▲2五銀 △3二玉  と進む。

娘2五銀に対し、2三地点に効いている駒を増やさないと
陣形崩壊なので、3二玉と受けるわけであり、
二枚聞かせれば一応、棒銀だけでは破れない。

筆者も、9級時代、上手の玉、金二枚の守りを崩せず、
しばしば涙したものである。
たかだか二枚の守りなのに、なんでこんなに守備力が高いのか。

また、上手の右金は、
たかが金一枚のはずなのに、なんであんなに攻撃力が高いのか。

さて、というわけで、娘は、二筋攻略をあっさり断念し、
三筋から攻撃を始める。

▲3六歩  △9四歩 ▲9六歩 △5四歩
▲3五歩 △6五歩 ▲3四歩  △同 歩
▲同 銀 △3三歩

途中、中村六段の9四歩に
ちゃっかり端を受けていたりするのがしぶい気がするが、
とにもかくにも、3筋の歩をぶつけ、交換に持ち込み
3三歩。

【第二図は3三歩まで】


二枚の守りはやはり破れない。
ここでどちらに引くかが問題になるが、娘の指し手は

▲4五銀

であった。

中央に幅効かせるわけで、この手は、
中村六段にも褒められるのであった。

とはいえ、中村六段、まだまだ涼しい顔をしている。
ちなみに、周知のとおりであるが、中村六段の涼しい顔は、マジで涼しそうだ。

さて、とりあえず2筋・3筋の歩は切ったが
まだ破れていない。
ここで戦局は思わぬ方向にゆくのであった・・・。

シンデレラレッスン(1)

2013-06-23 17:21:53 | 将棋
ご無沙汰しております。木村です。
いろいろ忙しくなかなか更新できない日々が続いておりました。

本日よりブログを再開したいと思います。
これまでいろいろ悶々と考えたのですが、
やはりブログというのは日々の日記風に書いていくものと決意し、

「今朝、そうめんを食べた。そうめんはつゆにつけて食べるものと
 深く反省した。」

的な日常の風景を切り取っていこうと思います。

*******************

さて、それはさておき、実は先日、
中村太地六段が我が家に来訪してくださりました。

うちの娘(5歳)は、1月より将棋をはじめ、
3月より八枚落ちの訓練をしてきたわけであります。

なお、うちでは、八枚落ちの特訓を
「シンデレラレッスン」と呼んでおります。

将棋の駒を並べ、詰むや詰まざるやを悩むレッスンを
シンデレラレッスンというのもなんなのではありますが、
将棋界の王子こと中村六段が教えてくださるということで、
やはりこれは、シンデレラレッスンであったと。

しかし、中村六段は、王子と呼ばれていますが、
その攻めの気風からして、将棋界の第一師団司令、
いや、将棋界の冬将軍的な二つ名の方が正しいのでは・・・。

と、それはさておき、本日より、
私の娘が、将棋界の攻撃責任者、中村将軍に挑んだ戦記を掲載しようと思います。


*********************

第一話 開戦

我が家の和室であるが、
異様な雰囲気につつまれていたわけである。

 娘 VS 中村六段。

記録係は、筆者の教え子。
立会人は、同僚の商法専攻の准教授。
そして、読み上げ係は、片上理事という豪華メンバー。

さすがに、プロの所作は美しく、
上手中村六段が、徐に駒箱を開け、「王将」から並べてゆく。

上手が「王将」を置くと、下手は「玉将」
続いて「右金」、下手も「右金」とペースを合わせて並べる。

なんとも荘厳な雰囲気である。
娘、所作を学ぶとよいですよ。はい。
父と指すときは、「ごめん、いま洗濯物干しているから
並べといて」的なこともありますから。
将棋の神様、ごめんなさい。

・・・閑話休題。

今回使用した駒は、竹風作・菱湖書の彫埋駒。
勢いあるシャープな文字の踊る作品である。

筆者が駒を選ぶ際、とてもこだわったのが、やはりトラフである。
確か数年前の名人戦だったか。
虎のごとき威風堂々の文様に、菱湖の書が躍るその駒は、
筆者の心に、駒かくあるべし、という根本規範を刻んだのであった。

また、盤であるが、我が家に脚付き盤はなく、卓上サイズ。
国産榧にこだわった逸品である。
(但し、和室でやるには高さがたりないので
 ピクニック用机・・・この話はいいだろう)


・・・閑話休題といった割に、全然本論に戻っていない。閑話休題。

そんなことを思っていると、駒がならべ終わり、
中村六段が、8枚の駒をしまってゆく。
飛車、角行、香車・・・。どんどんさみしくなっていく上手陣。

最終的に、

歩歩歩歩歩歩歩歩歩

   金王金

とこうなるわけである。

一見すると、どうやっても下手が勝ちそうであるが、
これがまた、そうでないのが将棋のすごいところである。
きちんとした戦略を勉強していないと、
有段者にはまず勝てない。

邪悪な有段者の中には、初心者をつかまえて、
「ほら、これなら勝てそうだろう」といって、
今日のランチを賭けさせるなどという輩もいる。要注意であり、
消費者法でも対応の必要な分野といわれている。

とはいえ、娘は、今日のこの日までに、いろいろ対策を勉強してきた。
筆者は、8枚落ちの常道たる棒銀を教えてきたわけだが、
娘は創意工夫が好きらしく、中村六段のNHK杯の雄姿から学び、
ある日突然、「居飛車穴熊」をやってきたことがある。

ナメていた筆者は、好きに組ませたのだが、
遠い、硬い、王手がかからないの穴熊三点セットで、
と金三枚つくって、角までとったのに惨敗。

今日はどんな戦法でゆくのだろうか、というわけで、初手。

「初手、中村六段、△3二金。」

片上理事が、読み上げる。

理事で六段の先生に、棋譜を読み上げさせるとは
なんちゅう娘じゃ、と思いつつ、次の手を見守る。

「下手、▲7六歩」。

というわけで、オーソドックスなスタート。
ちなみに、中村六段の初手を見て、娘は
「アレ?父と同じ手だ」と思ったそうである。

娘よ。八枚落ちの上手の初手というのは、
そこに金をあがる以外になく、それ以外の手だと
簡単に角になりこまれてしまうのだ。

以下、
△72金、▲26歩、△42玉、▲25歩
△25歩、▲22金、・・・と18手ほど進んで第一図。



棒銀の意思表示である。

              続く。





本、将棋

2013-03-26 19:31:48 | 将棋
毎日多くの方に訪れていただいているというのに、更新頻度がおちてきてすいません。
バタバタしておりまして、どうもすいません。

そんなわけで、今日は、全国の法学部で話題の5656どうぶつ将棋の話題をば。

実は先日、ひょんなことから片上大輔六段にお会いしました。
その際、
娘に「5656どうぶつ将棋」を贈ってくださり、
まことにありがとうございました。

本将棋でいうと、歩兵が3枚と金銀各二枚に王将という戦力で戦うミニ将棋です。
どうぶつ将棋よりも、将棋に近く、本将棋でいうと、六枚落ち同士で戦う感じです。

奥が深く、時間はそんなにかからず遊べるし、
とても優れた将棋導入ゲームだと思いました。

ぜひ将棋がわからんが興味があるという方は、5656どうぶつ将棋から
はじめてみてください。

片上先生、どうもありがとうございました。

**********************

そういえば、先日、妄想時報を読んでいたら
こんな記事が。

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大学研究室対抗本将棋 人間将棋に対抗


2013年4月20日、21日の両日、天童市では

春の風物詩、人間将棋が開催される。

名前のとおり、甲冑を身にまとった人間が将棋駒になってプロ棋士が対局を行うイベントで、
会場は、天童市の桜の名所・舞鶴山(まいづるやま)の山頂広場。

今年は、一日目の対局が早水千紗女流三段対山口恵梨子女流初段、
二日目には、圧倒的な強さで来季A級参戦を決めた行方尚史八段と
棋聖挑戦・年度最高勝率で注目を浴びた中村太地六段の対局が行われる。

将棋好きで知られる九州大学東京社会科学研究所の木林森准教授は、

「今年の大局は本当に楽しみだ。おまけに二日目には、
 昨年、熱戦の末、永世解説七冠を獲得した木村一基先生が解説を担当される。

 おととし、香車役で参戦させていただいたが、
 前にしか進めないのは、私にとっていつものことであり、
 自然体で臨めた。

 今年は中村六段の角になりたい。しかし、角換りになったら
 序盤早々寝返ることになるので、行方先生の角になるべきか、思案のしどころだ」

と語った。

人間将棋は、主催者発表で5万人以上が集まる一大イベントで、
集客は、サッカーワールドカップ決勝や野球の日本シリーズに匹敵するという。

この盛り上がりに刺激され、研究室対抗で人間将棋を行う大学も多かった。

しかし、「俺は教授の駒じゃないんだよ!」とアカハラ相談所にかけこむケースも増え、
近年は、研究者らしく、「人間ではなく、本を使うべきだ」と考えられるようになり、
「本」を駒にした「本将棋」を行う大学が一般的になっている。

もっとも、「本」を駒にする場合、どの本を「飛車」や「王将」にすべきかが激論になることが多く、
指導教授の本を捨て駒にした、学長に自分の本を「桂馬」に採用するよう圧力をかけられた
などのトラブルも生じている。

こうしたトラブルを避けるため、
首都大学東京の木村研究室では、「小さくて、著者も随分前に亡くなっている」という理由で
岩波文庫を「歩兵」、
自分で書いた『憲法の急所』を「角」、
『キヨミズ准教授の法学入門』を「飛車」にするなどして、対局に臨んでいる。

ただ、こうした工夫にもかかわらず、対戦相手のカント研究の専門家に、
「よくもまあ、カント『純粋理性批判』を端歩にするなどということを思いつくものだ」から呆れられたり、
政治思想史の専門家から
「『リヴァイアサン』(ホッブズ著)と書いてあるのに、竜王でも竜馬でもなく
 歩兵というのは納得がいかない」などと言われることも多いという。

今後も「本」将棋の発展から目が離せそうにない。




・・・・・・・・・というわけで、皆様もご一緒に、5656どうぶつ将棋、人間将棋、本将棋を楽しみましょう。