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「老化細胞」を除去する薬剤

2021-02-08 10:23:52 | 
加齢に伴い「老化細胞」が蓄積することによって老化が進むという話は、このブログでも取り上げています。

この老化細胞に関する研究は近年非常に進展しており、例えば遺伝子工学的実験手法により、マウス個体から老化細胞を除去する方法などが報告されています。

こうした老化細胞を除去することにより加齢に伴う様々な症状の改善や健康寿命の更新、さらには動脈硬化などの加齢関連疾患の病態が改善するようです。生体内の存在する老化細胞は多様性を有することが分かり、これを除去するための薬剤開発も活発に行われています。

東京大学などの研究グループは、老化細胞の生存に必須な遺伝子群を探索するために、純化老化細胞の作製法を構築しました。この方法はp53遺伝子を活性化させるもので、効率的に細胞老化が誘導でき、他の方法で作成した老化細胞と同じ性質を持っています。

この純化老化細胞を用いて生存に必須な遺伝子群の探索を行った結果、グルタミン代謝に関与するGLS1が有力な候補遺伝子として同定されました。老化細胞においてGLS1を阻害すると、細胞内pHが大きく低下することで細胞死が誘導されることが分かりました。

GLS1は、グルタミンをグルタミン酸へと変換しますが、その時エネルギー代謝に重要な代謝産物と共にアンモニアを産生します。

このアンモニアは単なる副産物と考えられていましたが、この研究で解明された分子メカニズムにより、老化細胞は細胞内pHの低下に伴い、GLS1の量を増加することでアンモニアを生成し細胞内pHの恒常性を調節することで生存を維持できることが示唆されました。

そこで加齢現象に対するGLS1阻害剤の有効性を検証するために、老齢マウスにGLS1阻害剤を投与したところ、さまざまな組織や臓器において老化細胞の辞去が確認できました。

加齢性変性の特徴として知られる腎臓の糸球体硬化、肺の線維化、さらには肝臓の炎症細胞浸潤といった症状が改善することが可能であることが分かりました。

老化に伴う筋量低下による運動能力低下や脂肪組織委縮による代謝異常を生じることが知られていますが、GLS1阻害剤の投与によりこれらの進行も抑制されました。

さらにさまざまな加齢関連疾患モデルマウスへGLS1阻害剤を投与したところ、肥満性糖尿病、動脈硬化、およびNASHの症状が緩和されることも分かりました。現在GLS1阻害剤はガン治療薬として臨床試験中であり、老化細胞除去による抗加齢療法やガンを含めた老年病や生活習慣病の開発にもつながることが期待されています。

ここではGLS1阻害剤がどういった薬剤かの情報は分かりませんでしたが、こういった老化細胞除去薬というのが老化防止につながるのか非常に興味のあるところです。


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