2001-11-04 | 日記
彼女は胃癌で胃を全部取ってしまっていて点滴だけで生きてた
大きな点滴袋と尿の袋。呼吸を助ける機械
3点セットゴロゴロ転がして病院の片隅にあるタバコ部屋で煙を吐き出してた
私も同じように点滴袋転がしてタバコ吹かしてた
たったの34歳
生きれる時間は沢山無い人だった
子供が二人、男の子。
夜の街で頑張っていた人だった
色んな事情を微塵も感じさせない強い人だった
私が退院する時に誰よりも強く針の刺さったままの腕で抱きしめてくれた
一日おきの通院で彼女とタバコを吸うのが楽しみだった
病棟に行くとエレベーターの前でニコニコしながら待ってた彼女
ある時何時もの様に彼女を誘いに行くと待った居てくれてた場所に彼女が居なかった
ベットでもうタバコ吸えなくなってしまってん
変わらない笑顔でそう言った
何が出来る…何も出来ない…でも何かしたいと言ったら彼女マックシェイクを飲みたいって言った
何もホントは口に入らないのにマックシェイクが飲みたいって。…
馬鹿のひとつ覚え。病院に行く時は必ず持って行った
病室の窓から大阪城の桜が綺麗だった
意識が混濁してきた彼女が始めて私に言った我が侭は点滴を抜いてだった
パジャマが乱れて妙に生々しい太ももが彼女の生身を感じさせて悲しかった
ロッカーの下に履き汚れたハイヒールがあった
もう二度と履く事の無いハイヒール
彼女との最後だった
もう病院に行っても彼女に会えない
タバコ吸う事も無くなった
毎年桜が咲いて散ってしまうと彼女の命日
マックシェイクお供えして彼女を想う
今度は幸せで長生きしてもっと沢山の時間を一緒に過ごそうね
ハイヒール。踵がチビタハイヒール
二度と履く事の無い人生送って欲しい