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固定資産税とは何か(2)

2005年01月09日 | 不動産
 ところで、先ほどのケースは極端かもしれないが、課税台帳価格と実際の価格の乖離は当然ある。文句をつけることはできないかといえば、答えはイエスであり、ノーである。何故、イエスかといえば、法律では不服申し立てを行うことができる書かれており、実際に不服を申し立てる人は多い。何故、ノーなのかといえばほとんど行政側から却下されており、裁判にいたったケースでは訴訟を起こした者ほとんど全員が敗訴している。以下は裁判所判例からの引用。(H 8. 4.22 福島地裁 平成03(行ウ)11 固定資産税審査決定取消請求事件)

地方税法(以下「法」という。)は、固定資産の課税標準となる固定資産の価格は、適正な時価によるものとして(三四一条五号)、これを市町村長が決定して(四一〇条)固定資産課税台帳に登録し(四一一条)、関係者の縦覧に供しなければならない(四一五条)と定めている。その結果、固定資産の納税者が当該登録価格に不服のあるときには、各市町村に設置された固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができるところ(四三二条)、固定資産評価審査委員会は、市町村の住民で市町村税の納税義務がある者のうちから、議会の同意を得て市町村長が選任した委員によって構成されており(四二三条)、審査の申出があったときには直ちにその必要と認める調査、口頭審理その他事実審理を行い、その申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定をしなければならず(四三三条一項)、審査申出人の申請があったときは、特別な事情がある場合を除き、口頭審理の手続によることと定められている(同条二項)。

 では裁判所の判断はといえば、残念ながらほぼ100%行政側の意見を支持している。地方税法では「当該固定資産の価格により難いとき」は課税台帳の価格を修正することができると書かれているが、ほとんどの訴訟は門前払いになっている。以下に裁判所の見解を引用する。(H13. 7.17 千葉地裁 平成12(行ウ)45 不動産取得税課税処分取消請求事件)


法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」の意義等について
 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産について法が当該登録価格によって不動産取得税の課税標準となるべき価格とするのを原則と定めた趣旨は、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、不動産取得税の課税対象となる不動産とほぼ同一であり(法73条1号ないし3号、341条2号、3号)、その価格も同じく適正な時価をいうものとされていること(法73条5号、341条5号)などから、両税における不動産の評価の統一と徴税事務の簡素化を図ったものと解することができる。
 すなわち、固定資産税の課税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定資産課税台帳に登録されたものとされているが(法349条)、法は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長等が行う固定資産の評価及び価格の決定は総務大臣により定められた評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行うものとし(法388条以下参照)、決定された価格について固定資産税の納税者に不服申立ての機会を与える(法432条以下参照)などの規定を設けている。そして、法は、固定資産のうち不動産については、税負担の安定と行政事務の簡素化を図る見地から、原則として3年ごとにその評価を行い、価格を決定した上、固定資産課税台帳にその価格を登録し、第2年度及び第3年度については、原則として、基準年度の登録価格をもってその登録価格とみなすこととしつつ、ただ、第2年度、第3年度において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情」等が生じたため、基準年度ないし第2年度の価格によることが不適当、不均衡となる場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に比準ずる価格によることとしている(法349条2項、3項参照)。
 このようにして評価、決定され、固定資産課税台帳に登録された価格は、基準年度の固定資産税の賦課期日における不動産の時価を示すものというべきであるが、不動産取得税の課税上、不動産の評価の統一性を確保し、また、極めて多数にのぼる不動産の取引等ごとに当該不動産の価格を評価,決定することの煩雑さを回避し、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、この登録価格を当該不動産の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考えられないことから、法は、都道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を決定するについては、固定資産課税台帳に当該不動産の価格が登録されている場合には、原則として、同登録価格によりこれを決定することとしたものと解される。
 このような法の趣旨及び固定資産税における不動産の評価及び価格決定の仕組みに照らすと、法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産の評価が行われ、その価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日後に、当該不動産につき、増築、改築、損壊、地目の変換その他特別な事情が生じ、その結果、同登録価格が当該不動産の適正な時価を示しているものとみて、同登録価格をもとに不動産取得税の課税標準額を決定することが公平な税負担という観点から見て看過できない程度に不合理と認められる事態に至った場合をいうと解するのが相当である。


さらに駄目押しで引用(H10. 1.27 東京地裁 平成08(行ウ)263 不動産取得税賦課処分取消請求事件



第三 当裁判所の判断
一 法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」の意義等について
1 前記第二の一1記載のとおり、法が、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、原則として、当該価格により当該不動産の取得に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとした趣旨は、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、発電所及び変電所が家屋に含まれることを除けば、不動産取得税の課税対象となる不動産と同一であり(法七三条一号ないし三号、三四一条二号、三号)、その価格も同じく適正な時価をいうものとされていること(法七三条五号、三四一条五号)などから、両税における不動産の評価の統一と徴税事務の簡素化を図ったものと解される。
2 すなわち、固定資産税の課税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定資産課税台帳に登録されたものとされているが(法三四九条)、法は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長等が行う固定資産の評価及び価格の決定は自治大臣により定められた評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行うものとし(法三八八条以下参照)、決定された価格については固定資産税の納税者に不服申立ての機会を与える(法四三二条以下参照)などの規定を設け、さらに、このようにして固定資産課税台帳に登録された基準年度の価格についても、第二年度、第三年度において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情」等が生じたため、基準年度ないし第二年度の価格によることが不適当、不均衡となる場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に比準する価格によることとする(法三四九条二項、三項参照)などの規定を設けている。
 そして、右のようにして評価、決定され、固定資産課税台帳に登録された価格は、基準年度の固定資産税の賦課期日における不動産の時価を示すものというべきであるが、不動産取得税の課税上、不動産の評価の統一性を確保し、また、極めて多数に上る不動産の取引等ごとに当該不動産の価格を評価、決定することの煩雑さを回避し、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、右登録価格を当該不動産の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考えられないことから、法は、都道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を決定するについては、固定資産課税台帳に当該不動産の価格が登録されている場合には、原則として、右登録価格によりこれを決定するものとしているものと解される。
3 右の法の趣旨に照らすと、法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産につき、固定資産税の賦課期日後に増築、改築、損壊、地目の変換その他特別な事情が生じ、その結果、右登録価格が当該不動産の適正な時価を示しているものとみて、右登録価格を不動産取得税の課税標準とすることが公平な税負担という観点からみて看過できない程度に不合理と認められる事態に至った場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成四年(行ツ)第一九六号平成六年四月二一日第一小法廷判決・判例時報一四九九号五九頁参照)。
4 法七三条の二一第一項ただし書の趣旨が前示のとおりであるとすると、右ただし書にいう「特別の事情」には、当該不動産自体に物理的変動があった場合はもちろん、都市的諸施設の整備など当該不動産の価格に直接影響を与えるような周辺環境の著しい変動があった場合が含まれるほか、賦課期日後に生じた地価の著しい下落といった事情も含まれ得るものと解されるが、地価の下落により当該不動産の取得時の時価が登録価格を下回ったというだけでは、右ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」に該当するということはできず(最高裁昭和四六年(行ツ)第九号昭和五一年三月二六日第二小法廷判決・判例時報八一二号四八頁参照)、賦課期日後の地価の下落により、当該不動産の取得時における時価とその登録価格に乖離が生じ、それが公平な税負担の観点からみて看過できない程度に達した場合に初めて、右ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」に該当することになるものというべきである。
5 また、前示のとおり、法七三条の二一第一項ただし書にいう「特別の事情」は、固定資産税の賦課期日後に生じた事由に限られるべきであるが、右にいう「固定資産税の賦課期日」とは、当該不動産の評価が行われ、その価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日をいうものと解するのが相当である。けだし、法によれば、固定資産のうち不動産については、税負担の安定と行政事務の簡素化を図るため、原則として、三年ごとにその評価を行い(法四〇九条)、価格を決定した上(法四一〇条)、固定資産課税台帳にその価格を登録するものとされ(法四一一条一項)、第二年度及び第三年度については、原則として、基準年度の登録価格をもってその登録価格とみなしているのであって(同条二項)、このような固定資産の評価及び価格決定の仕組みに照らせば、法七三条の二一第一項ただし書に該当する事態が生じたか否かについては、当該登録価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日後の事由を考慮すべきものとするのが、最も合理的であると考えられるからである。
6 なお、これまで説示してきたところは、当該不動産に係る固定資産課税台帳の登録価格の決定自体に重大かつ明白な瑕疵がない場合を前提とするものである。後述するとおり、当該登録価格の決定自体に当初から重大かつ明白な瑕疵があり、これを無効とすべき場合には、法七三条の二一第一項ただし書の規定をまつまでもなく、当該登録価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定することは許されないものというべきであるが、当該登録価格が基準年度の固定資産税の賦課期日における当該不動産の適正な時価を上回っているというだけでは、直ちに当該登録価格の決定が無効となるものではないというべきである。


要するに駄目って事ですね。お上には逆らえないと。...それにしても裁判所の文章というのはなんでこう分かりにくいのかね。
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