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個人日記兼つれづれなるままに

不動産賃貸に関わる更新料返還訴訟(1)

2009年10月06日 | 不動産
 先日、京都地方裁判所での判決は家主にとっては衝撃的な判決となった。自分もREITだけ
でなく実物資産での運用を行っていることから、他人事ではない。ここでは判決文原文を読
んでその内容を確かめておこう。報道によれば賃貸住宅の契約で「更新料」支払いを義務付
けた条項が有効かどうかが争われた3件の訴訟で、京都地裁はいずれも「入居者の利益を一
方的に害しており、消費者契約法に照らし無効」と支払い義務を否定する判決を言い渡した
というものである。同じような訴訟は京都地裁だけでなく、大阪高裁でも家主側が敗訴して
おり(現在上告中)、最高裁判決で仮に家主側が敗訴すれば「更新料」そのものが不動産賃貸
ではなくなる可能性がある。

 ところでその判決文であるが、インターネットで探してもなかなか見つからない。探し方
が悪いのかもしれないが、ようやく京都地裁の7月の判決文を手に入れることができた。


 内容は家主にとって全面的な敗訴。なにしろ、敷金、更新料全額だから、当時締結した契
約そのものが無効だと判断されたわけだ。元々締結された契約の内容は以下の通りとなって
いる。

 イ 契約期間平成18年4月1日から平成20年3月31日まで
 ウ 賃料1か月5万8000円
 エ 保証金35万円
 オ 解約引き30万円(以下「本件敷引金」という。)
 カ 更新料賃料2か月分

 関東に住んでいる人間には少し違和感のある契約に思えるかもしれない。関西地方の物件
保有しているので私には理解できるのだが、関西には「敷引」という慣習がある。もともと、
敷金というのは債務不履行の際の保証金的な性格をもっており、敷金から債務を相殺すると
いった使われ方が一般だが、関西地方では原状回復費用を敷金から引くという取り決めがよ
くある。これを「敷引」と呼んでいる。それにしてもこの契約内容を読んだときの印象はと
いうと「ちょっとえぐいなこの契約」というのが素直なものだ。第一、敷金35万円は6か月
分家賃相当だ。敷金2ヶ月、礼金2ヶ月というのが一般的な相場だし、最近は礼金は1ヶ月とい
のが多い。実際に私の保有する物件では礼金は1ヶ月でその礼金も募集費用として不動産会社
への支払いに消え、いままで礼金なるものを自分で手にしたことはない。

 加えて、敷引き30万円というのは敷金の85%に相当し、実質的には敷金は家賃の一部である
とみられても仕方がない。さらにいうなら、更新賃料2ヶ月というのもひどい。自分の物件で
も他の一般的な物件でも更新料は1ヶ月だ。その更新料だが、私の場合、不動産会社に取られ
るのでこれもいままで受け取ったことがない。(契約している会社とは滞納保障契約を締結し
ており、そのコストとして充当されている)

 判決には家主に同情するが、この契約に関しては同じ家主業をするものとしては賃借人に
同情する。敷引きなどの関西の慣習も違和感を感じるし、訴訟が起きたのもやはりもともと
の契約がえぐいから起きたのではないか。結局のところ、高い賃料だと募集できないので、
見かけ上の家賃を安く見せる仕組みだろう。仮に2年間住むとすれば敷引き30万円は月間にな
おすと12500円、更新賃料2ヶ月は4833円の上乗せ賃料となり、月間58000円の賃料は実際には
75,333円の賃料であったということだ。まあ、簡単にいえば実際の賃料より23%表示価格を安
く見せるというのが実態で、賃借人とって「家賃偽装」と言われてもしかたがない。この契約
自体、借りる人のことを考えていない。

 賃借人に同情する点はあるとしても判決は納得がいかない。なにしろ、家主側の主張が全否
定というから、怖くて不動産を保有したくなくなる。そこでどこが問題になったかを整理して
みよう。


(1) 争点は何か?

 この訴訟での争点は一つ。「敷引特約及び本件更新料特約は,法10条に該当するものとし
て無効といえるか」 ということ。ここで言う法とは「消費契約法第10条」のことを指す。
消費契約法10条はこういうこと。


 ここに書いてある通り、消費者の義務を加重し、利益を一方的に害するような契約であった
かどうが問題となった。義務を加重というのは賃貸借契約において、それ以外の本来家主が負
担すべきようなコストを賃借人に転嫁して支払いの義務を課すという意味。 そして敷引き、
更新料の法的な位置づけが争われた。では敷引きについてそれぞれの主張を見てみる。関東
には存在しない習慣であるが、敷引きとは家主側の主張によれば①自然損耗料、②リフォーム
費用、③空室損料、④賃貸借契約成立の謝礼、⑤前払い賃料、⑥中途解約権の対価が渾然一体
となって構成されており、それらのコストを「敷引き」という形で賃借人が支払うという論法
になっている。少し長くなるのでそれぞれの項目について双方の主張を見てみる。回を分ける
ので今回はこれまで (続く)

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