公的機関が発表する地価動向に関する調査は主要なもので2つあり、1月1日現在を基準とする
地価動向を国が調査し発表しているのが一つ(公示地価)。土地取引の指標として公共事業用地
の取得の算定根拠となったり、相続税の計算時に用いられる路線価の根拠となるものである。
公示地価は土地鑑定委員会が年一回発表する。毎年4月に発表される。一方、7月1日時点の地価
の調査は「都道府県地価調査」と呼ばれており、これは都道府県知事が年一回各都道府県の
基準地(21年度は23024地点)における価格を不動産鑑定士の鑑定評価をもとに公表する正常価
格とされ通例9月に発表される。 どちらも固定資産税や相続税などの税の算出根拠となるも
のであるが、土地価格のトレンドを知る指標としても注目されている。
9月17日に国土交通省から平成21年度の都道府県別地価調査が発表されたが、その内容を見
てみよう。まずは圏域別での変動率の表を見てみると(下表)、いままでのトレンドと異なる
ことが分かる。
三大都市圏及び地方圏に分けた表であるが、住宅地、宅地見込地、商業地別にしたもので
ある。オリジナルは工業地、準工業地などを含んでいるがここでは割愛している。21年度の
変動率は全国ベースでは-4.0%の下落となったが、三大都市圏の下落率が-5.6%となってい
る一方、地方圏は-3.4%の下落に留まっている。さらに三大都市圏を見ると東京が-6.5%と
最大の下落率となっているが、大阪圏で-4.5%名古屋圏で-4.2%となっている。即ち都市部に
なればなるほど下落しているという事実である。ニュースでは福岡での下落率が最大になった
と大きく伝えているが、マクロ的には東京圏の下落が極めて大きかったというのが実情であっ
た。このトレンドは商業地でも同じで東京圏の下落が-8.9%と最大となり、地方圏の下げが少な
い。これらの理由の一つとして地方は先行して下落が始まったのに対して東京圏の下落は遅行
して始まったと見ることができる。東京圏の地価の下落がいつごろから本格的に始まったのか
を見てみよう。下図の表は国土交通省が別に発表している地価ルックと呼ばれる調査で下落率
をいくつかのセグメントに分けてそのトレンドを見ている。
総合評価の表では下落率を0-3%、3-6%、6-9%、9-12%、12%以上の5段階に分類しており、調
査時点での数をカウントしている。いわゆるDIと似たような統計手法を採用しているが、平
成20年第3四半期、すなわち昨年の7-9月期まで6%以上の下落地点はほとんどなかったが、
10-12月の第4四半期に急増、今年の1-3月まで継続した。丁度、リーマンショックを境に市場
の調整が大きくなったというのが分かる。現状では0-3%未満の下落が46%となっており、見た
目では下落の一巡感がみられるが、上昇地点は皆無でありこれを市場の底打ちと取るのは
まだ早いだろう。東京圏の下落が大きいのは先ほど見たとおりだが、さらに23区に限って細
かく見てみよう。
この図は前述の都道府県地価調査のデータを基に私が自分で作成した図だが、まず驚かさ
れるのはプライムエリアでの下落だ。23区平均で10.8%の下落に対して渋谷区で14.2%、
世田谷区で-13.8%中央区で-12.5%、千代田区で12.3%という具合に都心部になればなるほど下
落率が高い。こういった傾向は今までの地価調査で確認されなかった傾向であるばかりでな
く、プライムエリアがより下がるといった一般的に信じられている傾向のまさに逆の方向に
向かっているのがよく分かる。これも解説としては極めて平凡だが、リーマンショック
のようなグローバルな金融ショックの大きさが招いたものと考えられる。元々、地方圏での
土地取引が枯渇しているなかでショックが発生しても取引量がなかったことが地価の下落を
抑え、一方で流動性があり換金しやすい都心部が一挙にクラッシュしたと考えるのが妥当だ
ろう。
ここから導き出される結論は意外なほど少ない。まずこのトレンドが収束しているのかそ
れとも継続しているのかという問いに関してはそれは金融システムしだいというこれもありき
たりな答えになるだろう。融資環境が厳しくマンションの新規着工が枯渇している中で土地
価格が需給の締りにより、底を打つといった主張が多いがどうもまゆつばな気がする。金融
環境が厳しいからこそ換金性の高い都心部に影響したと考えられるのなら、その状況に変化
がない中でどうして需給関係だけによって地価が下げ止まるだろうか? また需給論に関して
の反論はいくらでもできる。マンション供給が絞られており、買い手が増加するなどという
のは幻想でバイヤーである一時取得層のキャッシュフローの状況こそ考慮すべきだ。即ち、
雇用環境の悪化がとまらない現状では銀行ローンが組みにくい、むしろ雇用不安から人生で
最も大きな買い物をチャンスだと買い出動できるのはローンを組まずに済むキャッシュ
リッチなバイヤーのみである。いまだ地価動向には注視する必要はありそうだ。
地価動向を国が調査し発表しているのが一つ(公示地価)。土地取引の指標として公共事業用地
の取得の算定根拠となったり、相続税の計算時に用いられる路線価の根拠となるものである。
公示地価は土地鑑定委員会が年一回発表する。毎年4月に発表される。一方、7月1日時点の地価
の調査は「都道府県地価調査」と呼ばれており、これは都道府県知事が年一回各都道府県の
基準地(21年度は23024地点)における価格を不動産鑑定士の鑑定評価をもとに公表する正常価
格とされ通例9月に発表される。 どちらも固定資産税や相続税などの税の算出根拠となるも
のであるが、土地価格のトレンドを知る指標としても注目されている。
9月17日に国土交通省から平成21年度の都道府県別地価調査が発表されたが、その内容を見
てみよう。まずは圏域別での変動率の表を見てみると(下表)、いままでのトレンドと異なる
ことが分かる。
三大都市圏及び地方圏に分けた表であるが、住宅地、宅地見込地、商業地別にしたもので
ある。オリジナルは工業地、準工業地などを含んでいるがここでは割愛している。21年度の
変動率は全国ベースでは-4.0%の下落となったが、三大都市圏の下落率が-5.6%となってい
る一方、地方圏は-3.4%の下落に留まっている。さらに三大都市圏を見ると東京が-6.5%と
最大の下落率となっているが、大阪圏で-4.5%名古屋圏で-4.2%となっている。即ち都市部に
なればなるほど下落しているという事実である。ニュースでは福岡での下落率が最大になった
と大きく伝えているが、マクロ的には東京圏の下落が極めて大きかったというのが実情であっ
た。このトレンドは商業地でも同じで東京圏の下落が-8.9%と最大となり、地方圏の下げが少な
い。これらの理由の一つとして地方は先行して下落が始まったのに対して東京圏の下落は遅行
して始まったと見ることができる。東京圏の地価の下落がいつごろから本格的に始まったのか
を見てみよう。下図の表は国土交通省が別に発表している地価ルックと呼ばれる調査で下落率
をいくつかのセグメントに分けてそのトレンドを見ている。
総合評価の表では下落率を0-3%、3-6%、6-9%、9-12%、12%以上の5段階に分類しており、調
査時点での数をカウントしている。いわゆるDIと似たような統計手法を採用しているが、平
成20年第3四半期、すなわち昨年の7-9月期まで6%以上の下落地点はほとんどなかったが、
10-12月の第4四半期に急増、今年の1-3月まで継続した。丁度、リーマンショックを境に市場
の調整が大きくなったというのが分かる。現状では0-3%未満の下落が46%となっており、見た
目では下落の一巡感がみられるが、上昇地点は皆無でありこれを市場の底打ちと取るのは
まだ早いだろう。東京圏の下落が大きいのは先ほど見たとおりだが、さらに23区に限って細
かく見てみよう。
この図は前述の都道府県地価調査のデータを基に私が自分で作成した図だが、まず驚かさ
れるのはプライムエリアでの下落だ。23区平均で10.8%の下落に対して渋谷区で14.2%、
世田谷区で-13.8%中央区で-12.5%、千代田区で12.3%という具合に都心部になればなるほど下
落率が高い。こういった傾向は今までの地価調査で確認されなかった傾向であるばかりでな
く、プライムエリアがより下がるといった一般的に信じられている傾向のまさに逆の方向に
向かっているのがよく分かる。これも解説としては極めて平凡だが、リーマンショック
のようなグローバルな金融ショックの大きさが招いたものと考えられる。元々、地方圏での
土地取引が枯渇しているなかでショックが発生しても取引量がなかったことが地価の下落を
抑え、一方で流動性があり換金しやすい都心部が一挙にクラッシュしたと考えるのが妥当だ
ろう。
ここから導き出される結論は意外なほど少ない。まずこのトレンドが収束しているのかそ
れとも継続しているのかという問いに関してはそれは金融システムしだいというこれもありき
たりな答えになるだろう。融資環境が厳しくマンションの新規着工が枯渇している中で土地
価格が需給の締りにより、底を打つといった主張が多いがどうもまゆつばな気がする。金融
環境が厳しいからこそ換金性の高い都心部に影響したと考えられるのなら、その状況に変化
がない中でどうして需給関係だけによって地価が下げ止まるだろうか? また需給論に関して
の反論はいくらでもできる。マンション供給が絞られており、買い手が増加するなどという
のは幻想でバイヤーである一時取得層のキャッシュフローの状況こそ考慮すべきだ。即ち、
雇用環境の悪化がとまらない現状では銀行ローンが組みにくい、むしろ雇用不安から人生で
最も大きな買い物をチャンスだと買い出動できるのはローンを組まずに済むキャッシュ
リッチなバイヤーのみである。いまだ地価動向には注視する必要はありそうだ。