Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

長谷工コーポレーション(1808)

2010年06月02日 | 銘柄研究


 久々にレヴューしてみる。長谷工は他のゼネコンと同じような業態と投資家に見られがちだ
が、当社はいわゆる「造注」というのをやらない会社なので不動産市況のファンダメンタルズの
影響が素直に業績に反映される会社だ。従ってREIT投資家に取ってもフォローする価値のあ
る企業であると考えている。 終わった期の業績は売上げが16.8%減少、営業利益は9.9%増
益、経常利益は13.8%増益の減収増益決算になっている。今期予想を含む過去5年間の売上げを
見ると前期が売上げのボトム、総利益(粗利)と受注高でみると前期でボトムを打っている形に
なっている。建設業界は基本的に受注産業であることから受注のボトムと売上げにタイムラグを
伴うことから単純に考えると一昨年が業績のボトムになったも見ることは可能だ。



 長谷工のビジネスモデルの詳細はここでは省くが、当社はいわゆるスーパーゼネコンとは異な
っており、いわゆる「造注」を行わない会社で土地を先行して仕入れて工事を受注するのではな
く、土地情報を元に顧客に企画提案を行って受注する形が多く、それが当社の特命工事比率が高
い理由になっている。(厳密には自社の土地在庫を持たないということはないが比率は低い)ま
た、当社は首都圏の比率が7割、200戸以上の大型物件の比率が6割あるのが特徴。首都圏中
心、大型物件中心なので不動産市況のマクロトレンドをなぞるように業績が決まっていくこと
だ。



バランスシートに関しては改善している。これは理由があってまず株主資本に関しては第2回
無担保転換社債150億円が転換行使されたことで資本金と資本準備金がそれぞれ75億円ずつ
増加している。これによる普通株式の増加数は2億38百万株となり、発行済み株数は15億3
百万株になった。この第2回CBだが、いわゆるMSCBで下限価格が60.5円、発行価格は
株価の92%と決められたもので昨年9月28日に発行され、今年の1月には転換が終了した。
財務体質改善の為の発行であることはあきらかであるが、MSCBの発行ははっきりいってあま
り面白くない。株価は発行決議の後、60円まで下落しその後回復しているが、60円までの株
価の下落は明らかにMSCBの影響だ。



 負債の減少は2009年3月期の4146億円から3471億円と675億円と大きく減少し
ている。有利子負債は100億円程度の減少だが、前年までの受注減少の影響で支払手形・工事
未払い金が300億円、未成工事受入金100億円の減少などが主たる理由となっている。
現預金は50億円増加して602億円と総資産、負債・有利子負債の減少とバランスシートの改
善が顕著だ。今後、受注が改善すれば業績の改善に伴いさらに改善する可能性があるがこ
れは市況次第だろう。




 問題となる今後の市況動向だが、予測はかなり困難だ。グローバルなマクロ経済動向は明らか
にマイナス方向に進んでおり、これだけを考えればよくなる予想が見られない。一方、不動産市
況だけをとらえると一部改善の傾向が見られているのも確かだ。当社がメインのマーケットとし
ている首都圏の動向をみると分譲戸数は絞られてきており、在庫状況は幾分か改善している。但
し、業者が発表している在庫水準というのは必ずしも市場の本当の在庫水準ではないことから
注意する必要がある。それでも23区での発売戸数首都圏23区外の発売戸数は大幅に絞り込ま
れている。特に23区外の物件を見るとピークから見ると半分以下まで減少しており、その影響
なのか中古物件の売買が活況になっている。



 市況が改善していることを示すのは中古売買物件動向からも理解できる。新築の販売戸数が減
少すればユーザーは中古物件という選択肢も考慮する必要がでてくる。それが中古物件の活況に
つながる。また中古成約件数が増加し、新築物件の販売が減少すれば中古市場の需給動向の引締
まりという良い循環をもたらす。上図はレインズの月次レポートを加工したのものだが、首都圏
中古マンションの成約件数は3月を除けば増加しており、一方で新規登録、在庫水準は減少して
いる。とりわけ在庫水準は昨年4月から2桁のマイナスが続いており、中古市場の需給が改善し
ていることを示している。因みにレインズとは指定流通機構が運営している不動産流通ネット
ワークシステムのことで、Real Estate Information Network Systemの頭文字からきている。指
定流通機構とは国土交通大臣が宅地建物取引業法に基づき指定する公益法人のことで全国で4つ
ある。なお、首都圏の数字は東日本不動産流通機構からの数字を取っている。



 当然のことながら土地価格についてもプラスの影響を与え始めている。これは仕入れ価格のト
レンドを示しているものだが、ピークでは路線価の250%まで上昇した仕入れ価格だが、昨年
下期には150%を下回った。近畿圏では100%を下回るほど暴落したが、直近になり戻り歩
調にある。以前のピークまで戻る可能性ないだろうが、急激な調整により市場環境が良くなって
きているのは確かだろう。後は大きな外的なショックがなければ市場は自然に戻ってくるはずだ
が、なにやら欧州、朝鮮半島などきな臭い動きが続いている。また米国市場でも不動産市況が
戻っているとは思えず、BPの原油流出事故に伴う経済への影響など心配事が多い。ということ
で結論はまだ警戒的様子見というところか。

web拍手
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 吉野家株主優待券 | トップ | ビ・ライフ投資法人(8984) »
最新の画像もっと見る

銘柄研究」カテゴリの最新記事