Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

NSD(9759)株主総会

2011年07月05日 | 銘柄研究
 NSDの株主総会に参加。株主のくせに知らなかったというのも実に奇妙な事だが、本社が東京に移っていたなんて知らなかった。NSD、いや旧日本システムディベロップメントといえば大阪のソフトウェア会社として有名で外人の好む銘柄としても有名だった。それが商号変更を昨年行ってNSDになったという事実を実は知らなかった。じゃ、なんで買ったのという厳しい突っ込みがありそうだが、それはまあ、NSDも日本システムデベロップメントも同じと思ってたんで。ついでに言うと東京に本社を移転(正確には大阪・東京2本社体制の一元化)を行ったのは2006年12月。ああ、もうそんな前だったのね。

 総会は6月28日午前10時、小田急第一生命ビル18階本社会議室で開催。大江戸線の都庁前で降りると近いと書いてあったので大江戸線に乗ったのだが、失敗した。大江戸線は他の地下鉄と異なり、何気に止まる駅が多い。えらく時間がかかる。これなら、東京から丸の内で新宿に行って歩いたほうが早いかもしれないという気になった。もしくは東京から中央線で新宿とか。大江戸線はなんていうか、地下鉄というか、地下を走るバスみたいな気分だ。車内のアナウンスもローカルな宣伝流しているし、駅と駅の間隔も短いうえに数が多い。こういうのもなんだが、都庁前駅なんか作る必要があったのだろうか。だから都営線は儲からないなんじゃないのか。ということで遅刻した。受付でお土産とミネラルウォーターを貰う。会議室に入るとすでに業績説明のビデオが流れている。会議室は結構広く、参加している株主もそれなりにいるのだが、NSDの株式市場でのイメージとは異なり何とはなしに閑散としているという印象を受ける。NSDのネームバリューももう過去の話かもしれないというと思った。議事進行も株主からの質問もまあ、普通というか、特に問題なく終わる。特に印象に残らない。お土産を家に帰ってからみてみると千趣会の選べるギフト。千趣会のページで調べてみたら価格2100円(税込)となっていた。まあ、そんなものだろう。しかし、ギフトカタログを見てみての最初の印象。「欲しいものが一つもない.....」 しいて選ぶなら、タオルかスプーンくらいかな。



 業績はパッとしない。というよりも衰退しているのかもという印象さえ与える。じゃあなんで買ったのというのは.....まあ、いろいろ考えるところがあって....ともかく業績のトレンドを見てみると



 業績を長期間にさかのぼれる資料がなかったので、過去の決算説明会資料から2001年3月期から前期までの12年間の業績トレンドのグラフを作ってみた。ああ。見事に下降トレンドですな。売上が落ちれば当然、業績も苦しくなるわけだが、それではどの分野がというのが問題となってくる。NSDの事業セグメントは大きく分けて3つある。①システムソリューションサービス、②人材派遣、③不動産賃貸の3つで、そのうち最大のセグメントシステムソリューションサービス。終わった期で全体の売上高の93.8%を占めているわけであるからここで説明がつく。システムソリューションはさらに情報サービスとソフトウェアプロダクトの2つに分類される。情報サービスはソフトウェア開発とコンピュータ室運営の2つからなるビジネスでいわゆるソフト会社のコアとなるものだ。一方、ソフトウェアプロダクトはパッケージソフトなどを取扱う事業。直近の売上は情報サービス299億円、ソフトウェアプロダクト13.3億円なのでやはり情報サービスの比重が高い。情報サービスの中のコンピュータ室運営は17.9億円なのでやはりソフト開発が大きい。



 情報サービスの売上がピークとなったのは2001年3月以降で見てみると2008年3月の382億円だ。その時には同部門の事業粗利は112億円になっており、営業利益もピークの87億円まで上昇している。現在の同部門の粗利は56億86百万まで減少。粗利的には以前のボトムであって2004年の粗利63億円すら下回っている。景気が悪いというのも割引く必要があるかもしれないが、過去12年間のトレンドから見て成長のモーメンタムを失っているという見方すらできるかもしれない。リーマンショックとかいろいろあったのは理解できるが、売上400億円を突破できたのは2001年度、2006年-2008年にかけての4年。500億円突破は一度もない。ソフトウェア業が成長産業というのはすでに過去の話となったようだ。

 リーマンショック、東日本大震災と続けざまに不幸が日本経済を襲ったわけだから企業のIT投資が低迷するのは当然としても今後、需要が回復するのかという点と、NSDに成長ポテンシャルがあるのかというのが最も重要なポイントだろう。これだけを見ると単に景況感の悪化で業績が低迷しているだけでいずれ回復するんではないかと思われるが、果たして本当にそうなんだろうか。日本企業のIT投資との関係で見る必要があるのではないか。その疑問には会社プレゼン資料から答えを導けないので調べてみた。



 上のグラフは経済産業省の企業活動基本調査という統計資料をベースにNSDの営業利益と並べて比較して作成した。企業活動基本調査という便利な統計があるとは実は知らなかった。この統計は日本の企業2万7779社を対象に調査したもので日本にあるすべての企業を網羅しているわけではないが、対象企業の売上高は590兆円、営業利益11.5兆円でさらに対象企業の子会社8万4千社を含む。残念ながら直近で発表されている速報ベースでも2010年3月が最新になっているので、去年の数字の比較ができないが、NSDが減益になっていることから市場自体も減速している可能性もある。調べてみてあまりにもありきたりな結論になってしまったのでいささか興が醒めてしまうが、クラウド化というのが(ありきたりだが)、結論として導かれるだろう。



 総務省のICTの経済分析に関する調査から抜粋したグラフで2008年までしかないが、最も直近の資料だ。それによれば日本の実質情報化投資は民間設備投資の24.4%まで占めるようになっており、トレンドだけを見れば右肩上がりが継続している。但し、グラフは実質で計測しているので絶対金額でないことに留意する必要がある。デフレなんで特に直近はデフレータ割引くので元の絶対額はマイナスになっている。つまらないことだが、ICTとはInformation and Communication Technologyの略で昔から使用されてきた「IT」と同じ意味だが、最近はICTという言葉で表現することが多くなった。なんで変えるんだろう。やはりインターネット技術がそれだけ進化してきており、Communicationを含まなければならなくなった時代にはいったということだろう。特にクラウド技術はインターネットなしには語れないので、ICTと表現せざるを得ないという時代の背景があると考えられる。



 全体の実質市場規模が拡大、ただ絶対額では減少。だから市場規模が縮小していることから既存のソフトウェア会社が苦戦している。まあ結論としてはそうなんだろうが、それだけで片づけてよいのだろうか。上のグラフは日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が毎年発表している企業IT動向調査2010年から抜き出したものだが、リーマンショック以降、企業のコストカットは聖域がなくなり生産性向上のための情報化投資も例外ではなくなった。特にインハウス運用していた企業がアウトソースするようになり、いままで自社用にカスタマイズしていたシステムがアウトソースされることでシステム構築の需要自体が低下したと考えられる。しかも表からは中小・中堅企業よりも大企業のほうが積極的になっている。さすがに金融機関の勘定系などのシステムはクラウドにするわけにはいかないが、それ以外のシステムは自社でシステム構築する必要性は突き詰めて考えるとあまりなかったりする。



 ICTの専門家でないので細かい解説はできないが簡単に言えば現在流行している現象は主に上記の3つ。3つの内、仮想化はビジネスとしても大きくなっており、企業の合理化の進展から自社にサーバーを置くより、データセンターなどに分散すれば、リスク管理にもなるし、コスト削減できると考えているユーザーが多い。それとこのレポートを読んで面白い指摘は「システム保守費用は5年間で初期開発費用と同等のコストがかかる」ということ。即ち、アウトソース可能なシステムならなるべくそうすべきであるというのが結論になる。

 ところでパブリックだ、プライベートだとよく分からない単語を用いたが、例えばパブリッククラウドの例でいえば、ポータルサイト、SNS、検索サイト、ネット販売などのコンシューマーサービス(Google,Amazon,etc..)などやグループウェア、CRM、コールセンターなどの企業のフロントオフィス部門のシステムがそれに該当する。一方でプライベートクラウドではSCM、財務会計、購買管理、人事給与、物流管理など企業内部の業務システムがそれにあたるが、現状ではプライベートクラウドの浸透率はほとんどないと言っていい。さすがに企業も一気にクラウド化するというのはかなり勇気がいるだろう。特にセキュリティの面で十分な対応がなされていなければ、会社が傾く。また前述したように金融機関の勘定系は恐らくクラウドの対象にはならないだろう。

 ただ、ユーザーにとってクラウド化のインセンティブは高まっていると考えるのが妥当だろう。10年前と比較すればインターネット技術が格段に進化している。サーバー技術、CPUの能力などインフラのコストパフォーマンスが大きく向上しているのは間違いない。クラウドという言葉は最近の言葉ではあるが、発想自体はいわゆるシステムのアウトソーシングであり、昔からあった概念だ。ただ、いろいろなIT新用語がでてくるので紛らわしいが、昔と今の違いはインフラのコストパフォーマンスだといってよい。大昔、それも超大昔の話だが、リクルートがある意味社運をかけていたRCS(Remote Computing Service)というのがあったが、クラウドの原型とも言えなくもない。結局投資コストが高すぎて会社が傾いた上に、リクルート事件で結局身売りを余儀なくされたが、アイデアは昔からみんな持っていた。Saas/ASPだって、全く新しい概念というわけではなく、昔からみんなが考えていたものがビジネスのレベルまでコンピューティングパワーが上がったということだ。



 最後にどうなるか予測をと言いたいところだが、それほどの知見もないので現在どんな状況になっているのか見てみる。上のグラフはパブリッククラウドの導入状況をJUAS会員企業にアンケートした結果だ。日本の企業全体を代表しているわけではないが、売上高1兆円以上の企業が39社、1000億円以上の企業みれば219社あるのでそれなりの母集団だ。それでみると1兆円以上の企業ではさすがに導入レベルでは少ないものの、検討中を含めれば半分。しかも売り上げの傾向を見ると売上規模が大きい企業ほど積極的とみることができる。現在のソフトウェア企業の苦境はしばらく続く可能性がある。いま議論してきたように、インハウス運用が今後減少していく上に、競争が激しくなる。データセンターなどストック型ビジネスを手掛けている所は別だが、純粋なソフト開発業はビジネスモデルの転換か、再検討が必要だろう。


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