HAYASHI-NO-KO

雑草三昧、時々独り言

ヤブカンゾウ(藪萓草)

2020-07-19 | 夏 橙色系

ヘメロカリスは、APG分類体系ではユリ科からワスレグサ科として分離された。
APGⅡではワスレグサ(ヘメロカリス)科に移されが、
APGⅢではツルボラン科、アロエ科と一緒にススキノキ科と言う馴染みの薄い科に再分類されている。
このように『学者』が次々と新しい手法で体系を見直している時代、
素人が変更の都度逐一追いかけて、それは間違いだ等と言うのはお門違いだろう。
APGⅣ(2016年版)では、ススキノキ科(Xanthorrhoeaceae)からツルボラン科(Asphodelaceae)に移されているけれど
APG分類体系を使わなければ、やはりユリ科で済ますのが妥当だろう。


さように分類体系はどれを採るかで違った科に属することになる。
幾つもの種類のあるヘメロカリスに中では
最も洗練されていないのがこのヤブカンゾウ、おしべの花弁化が災い?している。
旧仮名使いで「クワンザウ」と呼ばれていたものが「カンゾウ」になった訳で
元々存在していたカンゾウ(甘草 マメ科カンゾウ属)では無い。


▲ おしべが花弁化したと言っても全部ではないから、花糸や葯が残っているものが幾つも見える。▼

▲ おしべ・めしべが花弁化して「八重」、めしべはたぶん1本だろうから花弁化して見えないけれど
何本もあるおしべの一部は花糸も葯も完全なまま残っている。▼


▲ 「八重」はこういう姿になってしまう。豪華とか、汚らしいとか幾つもの感想はそれぞれの感性だ。▼

(2020.07.19 林)


▲ ユリ科の解説では萼と花弁の区別を外花被片、内花被片と呼ぶのだけれど
カンゾウ類は別の科として分類されている。一番外側はやはり萼片と呼ぶのだろう。▼

(2020.07.15 林)




▲ 花弁化したおしべの一部に、葯の部分だけが残るものも多い。▼



▲ 葯や花糸がハッキリしているおしべも何本かは見えるから、全部のおしべが花弁化するわけでもない。▼







ヤブカンゾウ(藪萓草)
 
ツルボラン(←ススキノキ科、←ワスレグサ科、←ユリ科)ワスレグサ属 Hemerocallis fulva form. kwanso
(2020.07.05 林)


▲ 役目は果たせないだろうけれど、めしべが残っているものもある。▲
ヤブカンゾウはめしべも花弁化して「八重」になっているから果実は出来ないのだけれど

中には「三倍体」だから…の解説をみる事がある。
ヤブカンゾウに似たノカンゾウの場合、果実が出来にくいものも多いから「三倍体」の可能性も否定できないのだけれど。

ヤブカンゾウはワスレグサ、憂いなどを忘れる草の意味で万葉の世界でも幾つか詠まれている。
下の画像はそれとは正反対の意味を持つ勿忘草。

▲ ワスレナグサ ▲
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ヤブカンゾウ ノカンゾウ ヘメロカリス・園芸種 キスゲ ユウスゲ

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4 コメント

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複雑ですね。 (こいも)
2020-07-26 12:17:24
林の子さん
本当に複雑なのですね。
色々見させていただきました。
雄しべが花弁化するだけではなく
雌しべも花弁化するのですね。
雄しべが花粉を出して花弁にくっついているのが不思議な感じです。
ごちゃごちゃで困る~と思いながらも
目を向けて良かったと思います。
ヤブカンゾウはワスレグサなのですね。
これがわかっただけでも収穫です。
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忘れ草 (林の子)
2020-07-26 15:51:29
古来の意味はやはり「忘れないように」では無くて「忘れたい」だったのでしょう。
ただ現在ではその意味でワスレグサを理解するよりも、
ワスレナグサと同じように「忘れないように」の意味に解釈する人も多いようですね。
花と同様?ごちゃごちゃになっていて困りますが。

咲いてしまった花ではなくて、蕾を解剖すればめしべが見つかる…と言われたことがありますが
そんな事などあり得ない話で、ヤブカンゾウは開花前からおしべもめしべも花弁化した状態です。
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忘れたい・・・ (こいも)
2020-07-27 10:15:46
林の子さん
「忘れないように・・・」ではなくて
「忘れたい」・・・ワスレグサ
今まではなんかゴチャゴチャだしちょっと敬遠気味だったヤブカンゾウですが
忘れ草として憶えることができました。
ヤブカンゾウは開花前から雄しべも雌しべも花弁化しているのですね。
素敵なことを憶えることができました。ありがとうございます。
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そのように覚えています。 (林の子)
2020-07-27 10:47:46
こいもさんがヤブカンゾウのページの最終段にお書きの大伴家持の詩も
九州・太宰府で自分の故郷・奈良の事を思い出してばかりではいけない、
忘れるためにヤブカンゾウを摘んで挿したと解釈するようです。
中には「忘れるためにと思い続けるのは、本心は忘れたくないからだろう」…と
深読みされる方もいるようですが、古来中国伝来のものにはそのような意味合いを込めた詩は無いようですね。
植物や小動物・昆虫は人に身近なものなので
名前だけを一所懸命覚える事も大事でしょうが、幾つかのエピソードも序でに頭の片隅に置きたいものです。
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