HAYASHI-NO-KO

雑草三昧、時々独り言

ナツツバキ 夏椿

2005-06-28 | 夏 白色系

どちらが正しい、そんな議論を呼ぶ花が幾つもある。
野山に咲いている花には、それぞれの場所によって親しみ込めて呼ばれる名前があるし、
改良されて栽培・販売されている花には、作出した人たちの手で名前がつけられたりもする。

この花は「シャラノキ(娑羅の樹)」と呼ばれている。
仏教で聖木とされる沙羅双樹(さらそうじゅ)にちなんだ名前で
日本では育たない樹なので、代わりにナツツバキをシャラノキと呼んだだけのこと。
ところがその意味や導入のいきさつなど知らずに
必ず、平家物語の冒頭を諳んじる「物知り」がいらっしゃる。
初夏に咲き、花が椿に似ているから「ナツツバキ(夏椿)」と呼ばれることの多い花木。
山道で会っても梢に花が咲いているとわからない。
それでもツバキと同じで、落花を見て花が咲いているのを知る。
樹皮が剥がれて滑らかになることから「サルスベリ(猿滑)」とも呼ばれる。

そんなこんなのいい加減な話の口伝え
から「沙羅双樹」になったりしてしまう
本物の沙羅双樹は日本では育たないしナツツバキは代役なのに
京都では、ナツツバキを何本も植えて「沙羅双樹の寺」なんて宣伝したり…。
「サルスベリ」の方は、「百日紅」が有名すぎて、それは間違いだ、なんて言われてしまう。
「リョウブ」だって、時々サルスベリと呼ばれるのに…。
だから、ナツツバキと呼んであげる方が親切な気がする。
「シャラノキ」と呼ぶのも、寺社関係者がインドの沙羅(さら)に憧れて?
そう呼んだだけの事だと理解したい。
花弁の一枚にうっすらと紅をさしているのがゆかしい。

少し小振りの花をつける「ヒメシャラ」は
剪定さえしっかりやればこの樹ほどには大きくならないから
十分に庭木として利用出来るので記念樹として売られる。
ナツツバキ同様に、樹皮は一部が剥がれる。
やはり「沙羅」が全面にでているけれど、
間違ってもヒメシャラもナツツバキも、沙羅双樹にはなれない。

いつの間にか…と言う例はサンシュユにも当て嵌まる。
稗搗節の「庭のサンシュの樹…」で
サンシュは、山椒、間違っても山茱萸ではない。
間違いを平気で流布するメディアの典型的な例。
花を愛でるだけの人たちや、ブログネタをかき集めるだけの人には余計な話だろうけれど
少なくとも「植物」に関わる人は、正しく理解していたい。

シャラノキ(ナツツバキ)は斜め上方へ伸びた枝がそのままの樹形を保つ。
ヒメシャラの場合は上に伸びる枝が柔らかく枝垂れやすいので、樹形全体からも区別できる。
ヒメシャラの幹は全体的に赤味があるのだが、ナツツバキのように樹皮が剥がれ落ちた樹は見ない。
ナツツバキと呼ばれるだけあってツバキのように葉は幅広だけれど、ヒメシャラの葉はツバキには似ていない。
花芯部の黄色が目立つ白い花はヒメシャラの方が小さい。


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4 コメント

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ありがとうございました (とんちゃん)
2011-06-17 14:48:41
どっちなのかと迷っていて「ナツツバキ」だけにしなくてよかったです。
分からないけどもうナツツバキにしちゃう!なんて思ってもいたんです。
ヒメシャラと両方比べてみたら確かに違います!
花弁に特徴があるなんて全然思いませんでした。
花が少し小ぶりくらいにしか考えられなくて
沙羅双樹のことも誤って聞いてしまうようですね。
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よかったです! (林の子)
2011-06-17 22:26:56
こんばんは。
ナツツバキの名前よりも、シャラノキで知れ渡っているので、花の時期にはいつもお釈迦さんが登場します。
大昔の間違いを、今も訂正せずに観光化している事も気になりますが、
マスコミ辺りも平気で平家物語を持ち出すので困ったものだと思います。

二つを見比べれば、な~んだ、そうか…なのですが、別々に見ると面倒ですね。
類似の樹や花も、やはり自分の目で見たものと関連づけて覚えるのが近道です。
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ナツツバキとヒメシャラ (こいも)
2020-06-19 10:46:38
林の子さん
コロナのために閉園された公園にまだ行っておりません。
ナツツバキとヒメシャラは並んで咲いているはずなのですが
もう終わってしまったかもしれません。
すでに開園されていますので晴れ間をみつけて行ってみたいと思います。
色々な経験や体験の中から教えていただく真実は
とっても体切なことといつも心が弾みます。
これからもよろしくお願いします。
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ナツツバキとヒメシャラ。 (林の子)
2020-06-19 13:17:12
敢えてナツツバキと呼ぶようにしています。
別名をシャラノキと付けられたのには、やはり平家物語の一節が有名すぎて…と思います。
だからヒメシャラが登場してきた頃に、ヒメナツツバキの名前が付けられなかった事が良くなかったのだ…などと勝手に思っています。
「間違い」と言うと、お叱りを頂戴することや、所詮は花の名前なんでから、とかなりぞんざいな言葉も聞こえます。
中には「花に罪は無い」などと、決まり文句が登場して煙に巻かれてしまいます。
そこまで目くじら立てることも、杓子定規には物事は進まない、とも言われます。
物事の本筋からズレ始めている事が解せないのですが
時代、なのでしょうね。
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