総務省は29日、携帯電話向け電波の新たな周波数帯をソフトバンクモバイルに割り当てることを正式に決めた。
新帯域の獲得を巡っては国内携帯4社が事業計画を申請していたが、電波の逼迫度が高いソフトバンクモバイルが選ばれた。ソフトバンクは最大の弱点だった「通信品質」の改善を見込める一方、インフラ整備に向け2年で1兆円規模の投資負担がのしかかる。
●新帯域7月にも
ソフトバンクに割り当てられる900MHzの新帯域は「プラチナバンド」と呼ばれ、電波が障害物を回り込んで遠くまで届きやすい特性がある。
ドコモとKDDI(au)はプラチナバンドに相当する800MH帯を既に保有しており、ソフトバンクはかねて通信品質の面で不利だと主張していた。
新帯域を使える端末は、米アップルのスマートフォン「iPhone4」以降のスマートフォンと台湾HTC製のスマートフォン。早ければ7月から新帯域を使えるようになる。
国産スマートフォンや従来型の携帯電話では便えない。しかし、iPhone4などの利用者が新帯域に移行すれば現在使っている帯域の混雑が減るため、ソフトバンクでは「従来型携帯電話がつながりやすくなる効果も見込める」としている。
ソフトバンクの孫正義社長は新帯域の獲得で「つながりにくいとの汚名を返上する」とし、基地局などの設備に2011年度と12年度の合計で1兆円以上を投じる計画。
年間1000億円程度、設備投資を積み増すことになり、財務負担は増す。
●最大の弱点改善
ソフトバンクの携帯電話は情報量が多いが障害物にぶつかると届きにくい高周波帯域の電波を使っているため利用者から「つながりにくい」との声が多かった。
昨年10月から。iPhoneを売り始めたKDDIは、この弱点を突いて「iPhoneに、もっと『つながり』を」と宣伝している。「最大の弱点が改善することで競争力が高まる」との見方が多い。
NTTドコモやKDDIに比べて高い解約率の改善も見込める。
国内スマートフォン市場ではiPhoneの販売権を持つソフトバンクがシェアを伸ばしてきたが、昨年10月にはKDDIがiPhoneの販売に参入。3月にもアップルのタブレット端末「iPad」の販売に参入する。
KDDIは3月1日から携帯と固定回線のセットで割引する新料金体系を導入してソフトバンクを追い上げる。
新帯域の割り当ては、スマートフォンの通信量増大に悩まされる携帯電話各社の頼みの綱。通信障害の頻発でスマートフォンヘの信頼は揺るぎ始めており、各社は品質改善を急ぐ必要がある。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年3月1日(木)/3面」