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あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

蝶人葉月映画劇場その4

2020-08-14 14:10:57 | Weblog


闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2268~78


1)佐藤純彌監督の「人間の証明」
脚本を松山善三が書いているが、少し西條八十の「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね」を頻用しすぎでラストの感銘を却って損ねている。佐藤の演出は鈍重。1977年にNYロケをしているが、この時はツインタワービルはもちろん健在だった。

2)安田公義監督の「最後に笑う男」
1949年のサーカス映画で、デビュー仕立ての京マチ子が笠置シヅ子の歌唱に合わせて松竹レビューで鍛えた見事な肢体で踊ったり(上手い!)、滝沢修が宮中ブランコを飛んだりします。

3)市川昆監督の「満員電車」
川口浩の、そしてもしかすると市川昆の協業による1957年の見事な喜劇作品。市川のモダニズムはいつも中途半端に非人情で宙に浮くが、このコメディでは日本映画には珍しいヒューモアとウイットをもたらしている。

4)吉田喜重監督の「嵐が丘」
ブロンテの原作を鎌倉時代に置き換えた1988年の翻案劇。松田優作と田中裕子、三国連太郎などが力演しているが、原作とはかなり違ったドラマが出来上がった。

5)稲垣浩監督の「無法松の一生」
バンツマ&園井恵子コンビによる1943年版第1作。大尉夫人に愛を告白するシーンをカットされた稲垣が頭にきて三船&高峰コンビで撮り直した1958年版のほうが完成度は高い。

6)佐藤純彌監督の「金融腐蝕列島再生」
高杉良の原作を佐藤鈍重監督がテレビドラマに製作したものを2002年に公開。村上弘明、益岡徹、伊武雅刀などがぞろぞろ出るが、細川俊之が顔を出すと急に芝居じみてきていっそおもしれえや。

7)森一生監督の「薄桜記」
五味康祐の原作をもとに伊藤大輔が大胆に脚色し、市川雷蔵(丹下典膳)、勝新太郎(堀部安兵衛)が主演した哀しい武士道物語。隻腕隻脚の左膳が地面に転がったまま敵を撫で切り、愛妻と手と手を繋いで事切れる演出、吉良邸に打ち入る安兵衛の語りで始まり、赤穂浪士が門に殺到するところで終わるという構成もとてもお洒落。素晴らしい1959年の時代劇なり。

8)木村恵吾監督の「再会」
1953年の哀しい恋物語。ヒロインの久我美子を痛めつける東京憲兵隊チョウの三国連太郎が憎たらしいが、彼が空襲で死んでも悪い男に犯され、それを最愛の森雅之に打ち明けられず、思い出の日比谷音楽堂(明治38年8月1日竣工)で服毒してしまうとは!

9)田中徳三監督の「花くらべ狸道中」
市川雷蔵、勝新太郎のヤジキタ狸に加えて若尾文子ちゃんも出演してくれているのだけれど、箸にも棒にもかからぬ駄作。どうせならミドリノタヌキも出して欲しかったずら。

10)若松節朗監督の「沈まぬ太陽」
山崎豊子の原作によるJAL残酷物語。2009年に製作された。演出の切れが鈍いが、三浦友和の悪役ぶりはさまになる
墜落事故もさることながら社内の労働組合の壊滅、左遷、内紛、政治と絡んだ権力闘争、家族の離反など諸問題が噴出するさまを寄り道しながら3時間半に亘って雄大に展開する娯楽企業犯罪ドラマなり。


「我が家だけ次の地震で潰れたら恥ずかしいわ」と妻が言うなり 蝶人