照る日曇る日第1259回
文久2(1861)年に横浜で生まれ、ご一新を経て明治、大正、昭和、平成を生き抜いて159歳になった男の最長不倒年代記なり。
精霊が息を吹き込んだ人類最年長の人物を標本にしながら、この国の紆余曲折、どこまで続く泥濘ぞ、の忸怩たる歩みを振り返るが、まあ作者も書きながら、前途亡羊どころかお先真っ暗だね、という気持ちになってきたのではなかろうか。
「この国は長い冬の時代に入ったが、決して滅びることはない。神楽(この小説の主人公)が生き、その恥ずべき過去の記憶を保持し続ける限り、この国は滅びない」と、作者が力めば力むほど、その逆への道がググッと開けてくるようだ。

スマホなど右手に持ちて運転す命知らずの無法者たち 蝶人