照る日曇る日第1237回
1900年に誕生し、1977年に死んだフランスの詩人の5つの詩集から選ばれた詩は、いずれも誰にでも分かる平易な言葉と明快な意味内容で綴られているが、一読ただちに胸に沁み込む映像と心像の強さを秘めていて長くとどまる。
例えばこういうの。
「美しい季節」
腹ぺこで 道に迷って 体は冷えて
ひとりぼっちで 一文無しの
ちいさなむすめ 年は十六
身じろぎもせずに立つ
コンコルド広場
八月十五日正午。
さすがに「天井桟敷の人々」でならした脚本家らしい存在感がギュっと出ています。
もうちょっと長いのでは、こういうのがある。
「結構な家系」
ルイ一世
ルイ二世
ルイ三世
ルイ四世
ルイ五世
ルイ六世
ルイ七世
ルイ八世
ルイ九世
ルイ十世
ルイ十一世
ルイ十二世
ルイ十三世
ルイ十四世
ルイ十五世
ルイ十六世
ルイ十七世
ルイ十八世
あとはもうだれもいない……
このひとたち一体どういうんだろう
二十までかぞえることもできないなんて
どうだい、いいだろうプレヴェール。
彼は短編が専門というわけじゃなくて、たとえば「闘牛」とか「鴕鳥」とか「キリンのオペラ」などの、もっと長くて圧倒的に素晴らしい詩も書いたが、ここに紹介できなくて残念だ。
こういう詩を機知に拠りかかった「頓知詩」とかいうて、低く見る自称インテリ詩人や歌人も多いようだが、悔しかったらおめえさんが書いてみな。
蛇足ながら、詩人岩田宏選手による翻訳が素晴らしい!
「天皇陛下万歳!」と鰯の大口 叫ばれた方ではどんな気持ちか 蝶人