行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

選ばれなかった学生たちからのエール

2018-04-20 22:56:02 | 日記
5月末から6月初めにかけての9日間、新聞学院の学生6人を率いて北海道取材ツアーに出かける。昨年、九州への環境保護取材ツアーが好評で、2年続けての日本プロジェクトが実現した。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院から招請を受け、先週、私が直接、広州の日本総領事館に出向き、ビザの発給を受けた。

6人はみな3年生の女子で、初の海外が日本である。新品のパスポートに、桜が描かれた日本のビザが貼られているのを目にし、前回同様、感激した。



自分の目で異文化を見て、直に触れ、何かを感じとり、そして、自分を振り返る。異文化コミュニケーションの意義が存分に発揮されるよう、入念に準備をしなければならない。改めて重責に心を引き締めた。この点、北大が献身的に協力をしてくれているので、大いに力強く思っている。実にありがたい。

6人の女子学生は、参加申請者43人(うち男子は2人のみ)から書類選考で12人に絞り、面接の末、選ばれた。熱意があり、協調性があり、優秀な学生である。広東省出身が4人、あとは安徽省、山東省の出身だ。大学内の連絡用サイトで結果を公表した後、申請者全員にメールで、選考の過程を詳述した中国語で2000字を超える文章を送った。応募の際、公正、公平、透明な選考を約束すると明言したためだ。

公表前に結果を知った落選者から、「どうして私が漏れたのか」と尋ねられた。まだ若いので、自分の弱点が見えていない学生も多い。自信を持つことは大事だが、過剰では困る。そうした一つ一つの疑問に丁寧に答えてあげると、みな最後は納得する。私が選考の過程で、協調性をことのほか重んじていることについて驚く学生もいる。個人の能力を重視し、チームプレーの精神を養う教育が不十分なため、なかなか理解してもらうのが難しい。

だが、言葉の通じない異国で、場合によっては分行動しなければないない以上、お互いの意思疎通と協力は不可欠だ。すれ違いが、全体の成果に響くこともあり得る。限られた時間、限られたメンバーで取材を進める以上、分業も必要だ。人のために仕事をする気持ちがなければうまくいかない。

だが今回、意外だったのは、選考漏れした学生から、メールの返信として日本取材チームの成功を祈るメッセージが多数寄せられたことだ。

「報道チームの成功を祈ります! ずっとみんなの活躍を見守っています!」

「日本取材が万事うまくいきますように!」

「選ばれた学生はみな優秀な人ばかり。きっとうまくいくと心から信じています」

「選ばれなかったのは残念だけど、公平で公正な選考をしてくれたこと、細かく審査してくれたことに感謝します」

「こんなに長い文章で選考過程を説明してくれてありがとうございます。選ばれた人が十分な準備をしていたこと、そして、自分の足りないところがよくわかりました。まだ2年生なので、来年また挑戦したいと思います」

そして、中には日本語で「先生、お疲れ様でした。ありがとうございます」と書いてきた4年生もいた。その彼女の言葉が胸に残った。

「6人の後輩にはみな熱意と決意を感じます。自分がそれを十分に表現できなかったことを残念に思い、同時に反省しています。一つ一つのことを地道にやっていくことが大切であることを、後輩たちから学びました。とても貴重な経験になりました」

胸が締め付けられるような、それでいて温かさが残るような、澄んだ気持ちが込み上げた。わずかなひと言が、人を救い、人を勇気づけ、人の気持ちを晴れやかにすることがある。学生たちに教えられることも多い。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿