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「東」に似た部首?(柬)について

2008年09月28日 13時45分18秒 | 漢字質問箱ログ

 [ブログ内検索] [漢字に関する書籍] [漢字源] [中国古典選]
東に似た部首? 投稿者:瀋陽  投稿日:2008年 9月28日(日)12時38分51秒

 諫早 欄干 波瀾万丈などに使われる
 東に似た部分があります。これ単身の漢字は
 なさそうです。これはどのような意味で使われているのでしょうか
 ちなみに東の部首は木のようですが、これは木で引いても
 出てきません。教えていただけないでしょうか。


 瀋陽さんへのお返事です。

 「柬」という字は単独で存在します。
 「諫」と「欄」、「瀾」などは、別の家族に属するようです。

【柬】
 ■解字
  会意。「束(たば)+八印(わける)」。たばねたものをよりわけることを示す。
 ■音
  【漢音】カン 【呉音】ケン
  【訓読み】えらぶ
 ■意味
  えらぶ。えりわけて取り出す。選抜する。

【諫】
 ■解字
  会意兼形声。「言+音符(カン・よしあしをわける、おさえる)」。
 ■意味
  いさめる(いさむ)。いさめ。目上の人の言動をよりわけて、不正をおさえとどめるために意見する。


【欄】
 ■解字
  会意兼形声。「木+音符(ラン・さえぎる)」で、横に連ねて出入りを止める棒のこと。

【瀾】
 ■解字
  会意兼形声。は、出入り口の左右を横につないで出入りをとめること。瀾は「水+音符闌」で横に波頭をつらねたなみ。ずるずるとつながる意味を含む。⇒闌


【東】 の部首は「木」ではありません。
 「東」=「木+日」という説は誤りです。(訂正します)
 これは、本編にありますので、是非こちらをごらんください。
   ↓
10.「東」「同」「通」「衝」「童」「用」 ・・・(つきとおる)の家族

Re: 東に似た部首? 投稿者:nori  投稿日:投稿日:2008年 9月28日(日)14時00分35秒

nothingさん、お久しぶりです。

東の部首の件ですが、次のように考えております。

部首とは辞書編集者が辞書利用の便宜を目的に、楷書なり明朝体なりの、字形上の特徴から(その時の知見をもとにして)漢字を分類したもの。従って、特に、字源研究が進めば、字源とはかけはなれてしまう場合がある。

「東」=「木+日」という説は俗説だと思います。しかし、現在、木に分類している辞書がほとんどなので「東の部首は木である」のはしかたがないと思っています。というか、部首ってそういうものなんだろうな、と。

そこで質問ですが、東の部首を新たに設定するとしたら何でしょうか?
御意見をいただければ幸いです。

Re: 東に似た部首? 投稿者:nothing  投稿日:2008年 9月28日(日)22時42分11秒

noriさんへのお返事です。


> 部首とは辞書編集者が辞書利用の便宜を目的に、楷書なり明朝体なりの、字形上の特徴から(その時の知見をもとにして)漢字を分類したもの。

そのとおりですね。
字源的に「東=木+日」で成り立っているわけではない、とはいえますが、
東の部首は「木」ではない、とはいえないですね。
訂正いたします。

今、説文解字を見てみますと、「従木」とありましたので、多くの辞書ではこれにもとづいて部首を「木」としていると思います。(基本的には「康熙字典」を踏襲しているはずですが)
引く側から見れば、これは自然なことで引きやすいと思います。
すでに何度もコメントしていますが、長澤規矩也著の三省堂の明解漢和辞典では、
もちろん「木」で引けると思いますし、
「勝」という字も語源にかかわらず、「月」で引けるようになっています。

「部首」での分類をはじめた説文にしたがえば当然「木」となりますし、他の辞書でも同様だと思います。
「字源」と「部首」とは別々に考えないといけませんね。
回答をあせると、こういうミスがでます。
ご指摘ありがとうございました。

> そこで質問ですが、東の部首を新たに設定するとしたら何でしょうか?

新たに設定する必要性はないと思います。

Re: 東に似た部首? 投稿者:瀋陽  投稿日:2008年 9月28日(日)18時09分55秒

nori様へ、nothing様へ
ご丁寧なご回答まことに恐縮です。

nothing様の
>「柬」という字は単独で存在します。

でもう一度よくみましたら
木の部の5画目にありました。
失礼いたしました。

漢字に理解不足な私にとって音も意もわから
ないもののとき、漢和辞典(漢辞海)を持ち出して
もいつも苦労しています。音がわかれば国語辞典で
引いてしまい、漢和辞典は敬遠しがちで、なかなか
慣れません。

大変助かりました。どうもありがとうございました。


以上


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荘子:斉物論第二(3) 敢問天籟

2008年09月28日 11時42分24秒 | 漢籍
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荘子:斉物論第二(3)

 子 游 曰 : 「 地 籟 則 ? 竅 是 已 , 人 籟 則 比 竹 是 已 , 敢 問 天 籟 。 」

 子 ? 曰 : 「 夫 天 籟 者 , 吹 萬 不 同 , 而 使 其 自 己 也 。 咸 其 自 取 , 怒 者 其 誰 邪 ? 」



 子游曰わく、地籟(チライ)は則ち衆竅(シュウキョウ)これのみ。人籟(ジンライ)は則ち比竹これのみ。敢えて天籟(テンライ)を問う」と。

 子?(シキ)曰わく、夫(そ)れ吹くこと万(よろず)にして同じからざれども、而(しか)も其れをして己(おのれ)に自(したが)わしむ。咸(ことごと)く其れ自(み)ずから取るなり。怒(おと)たてしむる者は、其れ誰ぞや」と。


 子游が言った、「地籟(地のふえ)とは、もろもろの穴のこと、人籟(人のふえ)とは竹管のことですね。恐縮ですがおうかがいします、天籟(天のふえ)とは何かをお教えください」と。

 子?が答えた、「全ての穴や竹管など、音をたてるものはさまざまで同じではないが、それぞれに自分の音を出しているのだ。すべて自己自身の原理によって響きとなる。背後において響きとならしめる何者かが存在するであろうか」と。

line

地籟・人籟・天籟(チライ・ジンライ・テンライ)
 子?は、地籟人籟のほかに、さらに天籟という別の響きがあるのではなく、地籟を地籟として聞き、人籟を人籟として聞くことが、そのまま天籟なのだという。
 自己自身の原理によって響きとなる万籟を、そのまま万籟として聞くのが「天籟」。
 「天」とは、人と地を超越する何ものかではなく、人が人であり、地が地であることそれ自身。つまり天とは自然(あるがまま)ということ。

 彼は、一切存在をそのまま肯定するから、一切存在と一つになることができる。すなわち「吾れが我れを喪(わす)れた」という境地。その境地にいたってこそ、自己は始めて真の自己となる。机に隠(もた)れて深く大きく息をつく南郭子?は、自己と世界の一切を「天籟」として聞いているのである。
[「荘子内篇 -- 福永光司」を参照 ] 




 ■音
  【ピンイン】[gan3]
  【呉音・漢音】カン
  【訓読み】あえてする、あえて
 ■解字
  会意兼形声。甘は、口の中に含むことをあらわす会意文字で、拑(カン・封じこむ)と同系。
  敢は、古くは「手+手+/印(払いのける)+音符甘(カン)」で、封じこまれた状態を、思い切って手で払いのけること。
  函(カン・封じこめる)・檻(カン・押しこめる)・掩(エン・押さえこむ)などの仲間から派生して、その押さえをおしのける意に転じたことば。
 ■意味
  (1)あえてする(あへてす)。圧迫や気がねをはねのけて思い切ってやる。
  (2)あえて(あへて)。思い切って。はばからずに。
   「敢問=敢へて問ふ」「敢問死=敢へて死を問ふ」〔論語・先進〕
   「敢請=敢へて請ふ」〔孟子・梁下〕
  (3)「不敢…」とは、あえて…ずと訓読して、思い切ってやりかねることをあらわすことば。
   「会其怒、不敢献=其の怒りに会ひ、敢へて献ぜず」〔史記・項羽〕
  (4)「敢不…」とは、あえて…ざらんやと訓読して、せずにおられようかの意で、反問をあらわすことば。「観百獣之見我而敢不走乎=百獣の我を見て敢へて走げざらんを観よ」〔戦国策・楚〕




荘子:斉物論第二(2) 而獨不見之調調 ,之刁刁乎

2008年09月28日 05時26分22秒 | 漢籍

荘子:斉物論第二(2)

 子 游 曰 : 「 敢 問 其 方 」、 子 ? 曰 : 「 夫 大 塊 噫 氣 , 其 名 為 風 。 是 唯 無 作 , 作 則 萬 竅 怒 ? 。 而 獨 不 聞 之 ? ? 乎? 山 林 之 畏 佳 , 大 木 而 圍 之 竅 穴 , 似 鼻 , 似 口 , 似 耳 , 似 枅 , 似 圈 , 似 臼 , 似 ? 者, 似 汚 者 。 激 者 、 ? 者 、 叱 者 、 吸 者 、 叫 者 、? 者 、 ? 者 , 咬 者 , 前 者 唱 于 而 隨 者 唱 ? , ? 風 則 小 和 , 飄 風 則 大 和 ,  風 濟 則 衆 竅 為 ? 。 而 獨 不 見 之 調 調 , 之 ? ? 乎? 」

 子游(シユウ)曰わく、「敢(あ)えて其の方(ことわり)を問う」と。

 子?曰わく、夫(そ)れ、大塊(タイカイ)の噫気(アイキ・おくび)は其の名を風と為(な)す。是れ唯(ただ)作(おこ)ることなきのみ。作れば則ち萬竅怒?(バンキョウドゴウ)す。而(なんじ)は独り之の??(リュウリュウ)たるを聞かざるか。山林の畏隹(ワイサイ)たる、大木百囲の竅穴(キョウケツ)は、鼻の似(ごと)きもの、口の似(ごと)きもの、耳の似(ごと)きもの、枅(ますがた)の似(ごと)きもの、圈(さかずき)の似(ごと)きもの、臼の似(ごと)きもの、?(ア・ふかきくぼみ)の似(ごと)きもの、汚(オ・ひろきくぼみ)の似(ごと)きものあり。激(しぶき)の者(おと)あり、?(さけ)ぶ者(おと)あり、叱(しか)る者(おと)あり、吸う者(おと)あり、叫ぶ者(おと)あり、?(なきさけ)ぶ者(おと)あり、?(くぐも)れる者(おと)あり、咬(か)む者(おと)あり。前なる者は于(ウ・ふうっ)と唱え、而して隨(したがう・あとなる)者は?(ギョウ・ごうっ)と唱う。?風(レイフウ)は則ち小和し、飄風(ヒョウフウ)は則ち大和す。風(レイフウ)済(や)めば則ち衆竅(シュウキョウ)も虚と為(な)る。而(なんじ)独り之(こ)の調調(チョウチョウ)たると之の??(チョウチョウ)たるを見ざるかと。


 子游が言った、「ぜひともそのことについてお教えください」と。

 子?は答えて言った、「そもそも大地のあくびで吐き出された息、それを風という。この風は、吹き起こらなければそれまでだが、一たび吹き起これば、すべての穴という穴が激しく音をたてはじめる。お前は、その音を聞いたことがないか。山の木立がざわめき揺れて、百囲(かか)えもある大木の穴は、鼻の穴のような、口のような、耳の穴のような、枅(ますがた)のような、杯(さかずき)のような、臼(うす)のような、深く狭い窪地(くぼち)のような、広い窪地のような形のものに風が吹きあたれば、水のいわばしる音、高々とさけぶ音、するどい声で叱りつけるような音、吸い込むような音、金切り声で叫ぶような音、泣きさけぶような音、こもった音、咬(とおぼえ)する音がして、前のものが于(ううっ)とうなると、後のものは?(ごうっ)とこたえる。そよ風のときには小さく和(こた)え、つむじ風が舞いあがるときには大きく和(こた)える。そして大風一過して天地がもとの清寂に帰ると、もろもろの穴はひっそりと静まりかえる。お前はあの、風の中の樹々が、ざわざわ、ゆらゆらと揺れ動くさまを見たことがないか」と。

line

大塊(タイカイ)
 大地


噫気(アイキ)
 (1)はく息。
  「夫大塊噫気、其名為風=それ大塊の噫気は、其の名を風と為す」
 (2)胃にたまったガスが口から出るもの。げっぷ。おくび。《同義語》?気。


 ■音
  【ピンイン】[ai4]
  【漢音】アイ 【呉音】
  【訓読み】ああ、おくび
 ■解字
  会意兼形声。意は、「音(口をふさぐ)+心」の会意文字で、黙って心の中におさめたため、胸がつかえることを示す。憶の原字。
  噫は「口+音符意」で、胸がつまって出る嘆声。
 ■意味
  胸がつかえて出るげっぷ。《類義語》⇒?(アイ)。



 ■音
  【ピンイン】[ji1]
  【漢音】ケイ 【呉音】ケン
  【訓読み】ますがた
 ■意味
  ますがた。柱の上に置き、棟を支える角材。


?
 ■音
  【ピンイン】[liao2]
  【漢音】リュウ 【呉音】
 ■解字
  会意。「羽+(?-羽・まじる)」。離れる、もつれるの両方の意味をあらわす。
 ■意味
  (1)鳥がつきつ離れつして高い空を飛ぶ。
  (2)「??(リュウリュウ)」とは、風が物の間を吹きぬけるさま。
   「独不聞之??乎=独りこれが??たるを聞かざるか」


畏隹(ワイサイ)
 木立のざわめき揺れる有様(郭象)
 「即畏隹、猶隹巍」(荘子集解)

 山陵の畏佳(イシ)たる・・・
  畏佳(イシ)と読んで、「山の尾根がうねうねとめぐっているところ」(金谷治)
  「畏佳(イシ)は山の高低ありて槃回(めぐ)るさま」(司馬氏)


(ゲキ)
 【ピンイン】[ji1]
 ■解字
  会意兼形声。右側は「白+放」の会意文字で、水が当たって白いしぶきを放つこと。
  激はそれを音符とし、水印を加えてその原義を明示したもの。
 ■意味
  (1)はげしい(はげし)。水が岩に当たってくだけるほど勢いが強いさま。
  (2)はやい(はやし)。しぶきを飛ばすほどはやいさま。
 「宣云。激、如水激聲。?如箭去聲。叱出而聲粗。吸入而聲細。叫高而聲揚。?下而聲濁。?深而聲留。咬鳴而聲清。皆状竅聲」(荘子集解)


?(コウ)
 【ピンイン】[xue4]
 さけぶ。大声でさけぶ。



 ■音
  【ピンイン】[chi4]
  【漢音】シツ 【呉音】シチ
 ■解字
  会意。七は切の原字で、鋭い刃でさっと切ること。叱は「口(くち)+七」で、しっと鋭くどなる意。
 ■意味
  しっと鋭い声でしかりつける。



 ■音
  【ピンイン】[jiao4]
  【呉音・漢音】キョウ
  【訓読み】さけぶ、さけび、よぶ
 ■解字
  会意兼形声。右側は、糾(キュウ)の原字で、なわをよじりあわせたさまを描いた象形文字。
  叫はそれを音符とし、口を加えた字で、金切り声(しぼり声)でさけぶこと。
 ■意味
  さけぶ。さけび。のどを絞めてかん高い声でさけぶ。また、さけび。


?
 ■音
  【ピンイン】[hao2]
  【漢音】コウ 【呉音】ゴウ
  【訓読み】さけぶ
 ■解字
  会意兼形声。「言+(音符)豪(ゴウ・大きい)」。


?
 ■音
  【ピンイン】[yao3]
  【呉音・漢音】ヨウ
 ■解字
  会意兼形声。「宀+(音符)夭(ヨウ)」。夭は細くかすかで、よく見えない意を含む。
 ■意味
  (1)暗くてみえにくい、家の東南のすみ。また、一説に、東北のすみ。
   「鶉生於?=鶉?に生ず」〔徐無鬼篇〕
  (2)音のこもったさま。音が、かすかに響くさま。
   「?者=?なる者」〔斉物論篇〕



 ■音
  【ピンイン】[jiao3 / yao3]
  【漢音】コウ 【呉音】キョウ
 ■解字
  会意兼形声。「口+音符交(交差させる)」で、上下のあごや歯を交差させてぐっとかみしめること。
 ■意味
  かむ。あご、または歯をかみあわせる。



 ■音
  【ピンイン】[yu2]
  【呉音・漢音】
 ■解字
  指事。息がのどにつかえてわあ、ああと漏れ出るさまを示す。直進せずに曲がるの意を含む。
 ■意味
  ああ。わあ、ああという嘆息の声をあらわすことば。


?
 ■音
  【ピンイン】[yong2]
  【漢音】ギョウ 【呉音】グ、グウ
  【訓読み】あぎとう
 ■解字
  形声。「口+(音符)禺(グウ)」。
 ■意味
  (1)あぎとう(あぎとふ)。魚が口を水面に出してぱくぱくと呼吸する。
  (2)呼びあう声。
   「前者唱于、而随者唱?=前者は于と唱へ、随者は?と唱ふ」
  (3)「??(ギョウギョウ)」とは、人が仰ぎ慕うさま。また、魚が水面で呼吸するさま。
   「??魚闖萍=??として魚は萍を闖ふ」〔韓愈・南山詩〕


?風(レイフウ)
 さわやかなそよ風。
 「?風則小和=?風は則ち小和す」
 「李云、?、小風也。爾雅、回風為飄。」(荘子集解)


飄風(ヒョウフウ)
 「飄」は、つむじかぜ。舞いあがる旋風。
 「李云、?、小風也。爾雅、回風為飄。」(荘子集解)


風(レイフウ)
 (1)はげしい風。烈風。〔荘子・斉物論〕
 (2)西北の風。〔呂氏春秋・有始〕


?
 ■音
  【ピンイン】[diao1]
  【呉音・漢音】チョウ
 ■解字
  象形。舌の揺れる鈴を描いたもの。
  (チョウ・ぶらぶらたれさがって揺れる)と同系。
 ■意味
  (1)ぶらぶらと舌の揺れる鈴。
  (2)動揺して定まらない意から、ずるがしこい。「外頑(チョウガン・ずるいわからず屋)」
 「郭云、調調、??、皆動揺貌」(荘子集解)