[ブログ内検索] |
逍遥遊第一(3) 且 夫 水 之 積 也 不 厚 , 則 其 負 大 舟 也 無 力 。 覆 杯 水 於 坳 堂 之 上 , 則 芥 為 之 舟 。 置 杯 焉 則 膠 , 水 淺 而 舟 大 也 。 風 之 積 也 不 厚 , 則 其 負 大 翼 也 無 力 。 故 九 萬 里 , 則 風 斯 在 下 矣 , 而 後 乃 今 培 風 ; 背 負 青 天 而 莫 之 夭 閼 者 , 而 後 乃 今 將 圖 南 。 |
且つ夫(そ)れ水の積むや厚からざれば、則ち其の大舟を負(の)するや力なし。杯水を坳堂(オウドウ・ヨウドウ)の上に覆(くつが)えせば、則ち芥(カイ・あくた)これが舟と為らんも、杯を焉(ここ)に置かば則ち膠(コウ)せん。水浅くして舟大なればなり。
風の積むや厚からざれば、則ち其の大翼を負(の)するや力なし。故に九万里にして風斯(すなわ)ち下に在り。而(しか)る後(のち)乃今(いま)や風に培(の)り、背に青天を負(お)いて、これを夭閼(ヨウアツ・さえぎる)する者なし。而る後乃今(いま)や将(まさ)に南を図らんとす。
そもそも水のたまりかたが十分深くなければ、そこに大きな舟を浮かべるのには堪えられない。杯の水をでこぼこのある床(ゆか)の上にくつがえすと、せいぜい塵芥(ちりあくた)ならそのたまり水の舟ともなろうが、そこに杯を置くと底が床についてしまう。たまり水は浅いのに舟は大きいからである。
風の集まりかたがじゅうぶん多くなければ、そこに鵬の大きな翼をのせるのには堪えられない。そこで九万里も上ってこそ翼の下にじゅうぶんな風が集まるのである。さて、そのうえではじめて、今こそ大鵬は風に乗り青々とした大空を背負って何物にもさえぎられず、そのうえではじめて、今こそ南の海を目ざそうとするのである。
※坳堂(オウドウ)
広間の中のくぼんだ所。
※坳
くぼみ。くぼんだ所。
【漢音】オウ 【呉音】ヨウ
■解字
形声。「土+(音符)幼(ヨウ)」。
■単語家族
幽(奥深くくぼむ)・澳(オウ)(水の入りこんだくぼみ)と同系。
※堂
【呉音】ドウ 【漢音】トウ
■解字
会意兼形声。尚(ショウ)は、窓から空気が高くたちのぼるさまを示し、広く高く広がる意を含む。堂は「土+音符尚」で広く高い土台のこと。 → 広い高い台上にたてた表御殿。
■意味
広く高く、南向きに設けた表向きの広間。表座敷。
※芥
【漢音】カイ 【呉音】ケ
■解字
会意兼形声。「艸+音符介(カイ)(小さくわける、小さい)」。
■意味
(1)からしな。
(2)からし。からしなの実をひいてつくった黄色い粉末。
(3)あくた。小さいごみ。ちり。
(4)微細なもの。つまらぬもの。「草芥(ソウカイ)」「土芥(ドカイ)」
・・・この場合は(3)の意味
「芥小草」(李頤注)
※膠
【漢音】コウ 【呉音】キョウ
■意味
にかわする(にかはす)。ねばってくっつく。
※而後乃今
「かくていま」と読んでもよい。
※夭閼(ヨウアツ)
押さえてさえぎる。
※夭
【呉音・漢音】ヨウ
■解字
象形。人間のしなやかな姿を描いたもの。
■意味
(1)わかい(わかし)。しなやかでわかい。
(2)わかじにする(わかじにす)。草木がまだしなやかな若芽のうちに枯れる。また、人が少年のうちに死ぬ。
■単語家族
幼(細く小さい)・妖(ヨウ)(しなやかな女性)・優(しなやかな動作をする俳優)などと同系。
※閼
【漢音】アツ 【呉音】アチ 【慣用音】ア
【訓読み】ふさぐ, ふさがる, とどめる
■解字
会意。「門+於(つかえてとまる、とどこおる)」。
■意味
(1)ふさぐ。ふさがる。入り口を閉じる。また、ふさがる。
(2)とどめる(とどむ)。さえぎってとめる。
⇒ [逍遥遊第一(4)]