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荘子:逍遥遊第一(13) 惠 子 謂 莊 子 曰 : 「 魏 王 貽 我 大 瓠 之 種 , 我 樹 之 成 而 實 五 石 。 以 盛 水 漿 , 其 堅 不 能 自 舉 也 。 剖 之 以 為 瓢 , 則 瓠 落 無 所 容 。 非 不 ? 然 大 也 , 吾 為 其 無 用 而 ? 之 。 」 莊 子 曰 : 「 夫 子 固 拙 於 用 大 矣 。 宋 人 有 善 為 不 龜 手 之 藥 者 , 世 世 以 ? ? 絖 為 事 。 客 聞 之 , 請 買 其 方 百 金 。 聚 族 而 謀 曰 : 『 我 世 世 為 ? ? 絖 , 不 過 數 金 。 今 一 朝 而 鬻 技 百 金 , 請 與 之 。 』 客 得 之 , 以 説 ? 王 。 越 有 難 , ? 王 使 之 將 。 冬 , 與 越 人 水 戰 ,大 敗 越 人 , 裂 地 而 封 之 。 能 不 龜 手 一 也 , 或 以 封 , 或 不 免 於 ? ? 絖 , 則 所 用 之 異 也。 今 子 有 五 石 之 瓠 , 何 不 慮 以 為 大 樽 而 浮 乎 江 湖 , 而 憂 其 瓠 落 無 所 容 ? 則 夫 子 猶 有 蓬 之 心 也 夫 ! 」 |
恵子(ケイシ)、荘子に謂(い)いて曰わく、「魏王(ギオウ)、我れに大瓠(タイコ・おおひさご)の種を貽(おく)れり。我れこれを樹(う)えて成り、而して五石(ゴセキ)を実(み)たす。以て水漿(スイショウ)を盛れば、其の堅(おも)きこと自ら挙(もちあ)ぐる能(あた)わず。これを剖(さ)きて以て瓢(ひしゃく)と為せば、則ち瓠落(カクラク)として容(い)るる所なし。?然(キョウゼン)として大きからざるには非ざるも、吾れその無用なるが為(た)めにしてこれを?(うちわ)りたり」と。
荘子曰わく、「夫子(フウシ)は固(もと)より大(ダイ)なるものを用うるに拙(セツ・つたなし)なり。宋人(ソウひと)に善(よ)く不亀手(フキンシュ)の薬を為(つく)る者あり、世世(よよ)絖(わた)を??(さら)すことを以て事(しごと)と為せり。客これを聞き、其の方(ホウ・つくりかた)を百金にて買わんことを請(こ)う。族を聚(あつ)めて謀(はか)りて曰わく、我れ世世に絖(わた)を??(さら)すことを為せしも、(そのもうけは)数金に過ぎず。今一朝(イッチョウ・たちまち)にして技(わざ)を鬻(ひさ)ぎて百金となる、請(こ)うこれを与えんと。客これを得て、以て呉王に説けり。越(エツ)に難あり、呉王これをして将たらしむ。冬、越人(エツひと)と水戦して、大いに越人を敗(うちやぶ)れり。地を裂(さ)きてこれに封(ホウ)ず。能(よ)く不亀手するは一なるに、或(ある)いは以て封ぜられ、或いは絖(わた)を??(さら)すより免(まぬか)れざるは、則ち用うる所の異なればなり。今、子に五石(ゴセキ)の瓢(ひさご)あり、何ぞ以て大樽と為(な)して江湖に浮かぶことを慮(かんが)えずして、其の瓠落(カクラク)として容(い)るる所なきを憂(うれ)うるや。則ち夫子には猶(な)お蓬(ホウ・とらわれたる)の心あるかな」と。
恵子が荘子にむかって話した、「魏の王が私に大きな瓢の種をくださった。私はそれを植えて実がなったのだが、なんと五石(ゴセキ)もの量が入るのです。それに飲み物を容(い)れたら、とてもたやすく持ちあげられず、それを割って柄杓(ひしゃく)を作ったを作ったら、底が平たくて何も入らない。本当にばかでっかくて、使いようがないので、それをぶちこわしてしまったのですよ。(あなたは、いつもおおげさなことばかり言って役立たずですなあ)
荘子はいった。「あなたは、やっぱり大きなものの使い方がへたですなあ。宋の人であかぎれ止めの薬を上手に作る人がいて、(その薬を手につけて)絹わたを水で晒(さら)すのを代々の家業としていたのだが、旅人がそれを聞いて、薬の作り方を百金で買いたいと言ってきた。親族を集めて相談したところ『わしらは、代々絹わたを晒す仕事をしてきたが、たったの五・六金をもうけただけだ。それが、今すぐこの技術が百金で売れるというのだから、(この技術を)譲ることにしたい』旅人はその作り方を教えられると、それを呉王に説明して、水上戦に利用することをすすめた。やがて越(エツ)の国との戦争がおこったので、呉王はこの男を将軍にとりたてて、冬の最中(さなか)に越の軍隊と水上戦をまじえて越軍を大いにうち破った。(越軍の方ではあかぎれに悩まされてじゅうぶんな働きができなかったから。呉王は功績をたたえて)国土を分割して、この人を大名にとりたてた。さて、あかぎれを止めることができるという点では同じなのに、一方は大名にとりたてられ、一方は一生にわたって絹わたを晒す仕事からのがれられないというのは、そのあかぎれ止めの使い方が違ったからです。今、あなたに五百石のものが入る瓢があるなら、それを大樽(おおだる)の舟にしたてて、長江のひろき流れか湖のはるかなる波に浮かんで、心ゆくまで水と空の大自然のなかに自己を遊ばせたらよいものを。それをしないで、『これは無用だ』と絶叫するとは、蓬(よもぎ)のように、ボサボサとして、すっきりしない男だなあ・・・」と。
※恵子(ケイシ)
恵施のこと。戦国時代、宋の学者。論理学派。魏の恵王に仕え、宰相となった。荘子との交渉は他の篇にもみえるが、その学説は「天下篇」に詳しい。著に『恵子』がある。
※貽(イ)
おくる。人に物をおくる。《類義語》⇒贈。
「貽我収管=我に収き管を貽る」〔詩経・癩風・静女〕
※瓠
■音
【ピンイン】[hu4]
【漢音】コ 【呉音】グ
【訓読み】ひさご
■解字
会意兼形声。「瓜+音符夸(カ・中がうつろになって広がる)」。
■意味
ひさご。
果実は長さ三〇センチほどあり、肉は白い。煮たり、また、ほしたりしてかんぴょうとしても食べられる。
成熟したものは、中身をくりぬき、液体をすくう容器とする。ひょうたん。ふくべ。
※瓠
■音
【ピンイン】[huo2]
【漢音】カク 【呉音】ワク
■意味
「瓠落(カクラク)」とは、まるくて、中がうつろなさま。
「瓠落無所容=瓠落して容るる所無し」
※水漿(スイショウ)
飲料水。また、飲み物。「銀瓶乍破水漿迸=銀瓶乍ち破れて水漿迸る」〔白居易・琵琶行〕
※樹
■音
【ピンイン】[shu4]
【呉音】ジュ、ズ 【漢音】シュ
【訓読み】き, たてる, たつ, うえる
■解字
会意兼形声。右側の字は、太鼓(タイコ)または豆(たかつき)を直立させたさまに寸(手)を加えて、⊥型にたてる動作を示す。
樹はそれを音符とし、木をそえた字で、たった木のこと。
■単語家族
豎(ジュ・たてる、たて)・逗(トウ・じっとたち止まる)などと同系。
■意味
たてる(たつ)。たつ。うえる(うう)。
┻ 型にじっとたてる。また、たつ。木をうえる。
※堅
■音
【ピンイン】[jian1]
【呉音・漢音】ケン
【訓読み】かたい
■解字
会意兼形声。堅の上部は、臣下のように、からだを緊張させてこわばる動作を示す。
堅はそれを音符とし、土を加えた字で、かたく締まって、こわしたり、形をかえたりできないこと。
→ 緊(引き締める)と同系。
■意味
かたい(かたし)。こちこちに充実するさま。
「以盛水漿、其堅不能自挙也=以て水漿を盛れば、其の堅きこと自ら挙ぐる能はざるなり」
※固(もとより)
もちろん。固定して決まっている意を示すことば。
「君子固窮=君子は固より窮す」〔論語・衛霊公〕
※亀手(キンシュ)
こごえてひびのきれた手。
※絖
■音
【ピンイン】[kuang4]
【呉音・漢音】コウ
【訓読み】わた、ぬめ
■解字
会意兼形声。「糸+音符光(広がる、広げて張る)」。
■意味
わた。繭のくずを集めて、ふやかしたわた。まわた。《同義語》⇒壯(絋)。
※鬻
■音
【ピンイン】[yu4]
【呉音・漢音】イク
【訓読み】ひさぐ
■意味
ひさぐ。売る。あきなう。
▼賣(イク)に当てた用法。
「有鬻踊者=踊を鬻ぐ者有り」〔春秋左氏伝・昭三〕
※慮
◆「司馬云。慮、結綴也」(荘子集解)
◆洪頤?(コウイケン)云う、「慮」は『文選』では「?」とあり、抒空(くりぬく)の意であると。馬叙倫云う、「慮」は「?」の省字、「?」は「抒」(ショ)の借字で、「抒」には「治」の意味があると。
この説に従うと・・・
※何不慮以為大樽而浮乎江湖
何ぞ慮(抒・くりぬ)きて、大樽と為して江湖に浮かべずして・・・
と読める。(金谷治)
※蓬(ホウ)
すべての矮小なるもの(朱儒の根性)を象徴する。
⇒ [逍遥遊第一(14)]