「蛇足ですが・・・」などと断りながら、本題とはそれた話をする場合がある。思えば、私のサイトは「蛇足」だらけだ。
でも、世の中には「蛇足ですが・・・」などと言って、じつは「本音」を言う人もいるから安心できない。「蛇足」を装いながら、そこにこそ「本音」をしのばせるのである。
それはともかく、よけいなことをして、せっかくできあがったものをダメにしてしまうのを「蛇足」という。
中学や高校で習う故事成語だが、国語の時間の説明では肝心な部分が欠けている。何故この「蛇足」ということばが成語となったのか、というところがポイントなのだ。
蛇足(画蛇添足) 戦国時代の楚の国で、ある人が酒を振舞った。ところが、どういうわけか亭主が振舞ったのは、たった一杯だけである。 ケチな話だが、一杯しかないのだからしかたがない。そこで皆が相談する。 「たった一杯の酒を、数人で分けて飲むには足らぬじゃろ。ちょうどひとり分じゃ。そこで、今から地面に蛇の絵を描く競争をしよう。一番先に描ききった者がこの酒を飲むことにしよう」 相談の結果、そのように話が決まり、皆が競争で絵を描き始めた。 すると、間もなく一人の男が、蛇の絵をまっさきに描きあげて、「完成!そら、一番じゃ。わしが飲むぞ」と、左手に杯を持ちながら、「どうじゃ!早いじゃろう。みんなが描けないうちに、わしは足まで描けるぞ」と、得意になって足を描きだした。 そこに、もう一人の男が、蛇の絵を描き終えて、杯を横取りした。 「蛇に足などあるものか。足を付けたら蛇ではない!」 と言って、その酒を飲んでしまった。 先に描いた男は、せっかく描き上げたのに、余計な蛇足を付けたばかりに、飲めるはずの酒を横取りされてしまった。 為蛇足者、終亡其酒 (戦国策・斉策) 蛇足を為(つく)りし者、終(つい)に其の酒を亡(うしな)う。 |
この話は、次のようないきさつでうまれた。
楚の昭陽(ショウヨウ)という将軍が、魏の国を攻める命令を受けて進軍し、結果は大成功。得意になり、もっと強いところを見せようとして斉(セイ)の国まで攻めようとした。
一方、斉には、陳軫(チンシン)という賢い人がいて、昭陽を説いた。
「将軍は、魏を攻める命令を受けて、魏を降参させました。命令にない斉を攻めるのは蛇足です」と、この話をした。
斉を攻めて少しでも失敗をしたら、魏を攻めた手柄が蛇足になるとさとった昭陽は、斉を攻めるのをやめた。
「戦国策」には、このようなパターンのお話がいっぱいつまってます。
たいていは、
A ・・・ 説得を依頼する人。
B ・・・ 説得を依頼される人(説得する人)。
C ・・・ 説得される人。
の三者があり、説得が功を奏すれば、「三方一両損」どころか、「三者大満足」の結果となります。
AとCは、「ああ、よかった!」と胸をなでおろし、BはCに感謝され謝礼をもらい、依頼者Aからはたんまりとご褒美がいただけるので、三人とも大満足。
この場合は、A(斉王)が、B(陳軫)に依頼して、C(昭陽)を説得させたという形。
この典型的な例が、「漁父之利」ですが、他にも「先従隗始」(先づ隗より始めよ)など、有名な話がたくさんあります。
「漁父之利」
盃中蛇影(盃中の蛇影)<故事成語>
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