蛇の和名について
「巳(シ・み),蛇(ダ,ジャ・へび)-漢字家族」に、巳や蛇の漢語としての解説を紹介しましたが、その訓読みについて、つまり、なぜ、「巳」(シ)の訓が「み」なのか、ということについては、そのままになっていました。
南方熊楠の「十二支考(蛇に関する民俗と伝説)」によると、
(1)蛇類は、水を好み、水中あるいは水辺に棲む。
(2)水辺に棲んで人々に怖れられることから、ミヅチと呼ばれた。
(3)ミヅチとは「水の主」の意である。
(4)巳(シ)を「み」と訓ずるのは、
「みづち」のあたまの「み」をとったもの。
これは、子(シ)を、ね(ねずみのあたま)
卯(ボウ)を、う(うさぎのあたま)
と呼ぶのと同じ用法である。
(5)蛇(ジャ)=和名(わみょう)は、「へみ」
蝮(フク)=和名(わみょう)は、「はみ」
であることから、へび類の最も古い総称は「み」であると推測される。
(6)本居宣長の説によると、「ミヅチ」の「ツチ」は尊称である。
したがって、「ミヅチ」とは、「蛇の主」の意味である。
ということは、要するに「み」という訓読みが、そもそも蛇をあらわす語幹であるということか。
他にも、蛇のことを、へみ・くちなわ・おろち・へび・へんび・・・と呼ぶ例をあげながら蛇の生態等について詳述しています。出典となる資料は膨大で、一読すれば彼の博覧強記ぶりに今更ながら舌をまくことでしょう。元旦から読むにはちょっとヘビーかな?

