僕は、大学の頃に出版社を作りたい、という夢を持っていました。文化の発信を担いたい、と。
で、いろんな出版社を受けたのですが、唯一引っかかったのが漢和辞典が有名な某老舗出版社の美術部門の子会社でした。そこで、浮世絵の本の編集とかをしていました(『浮世絵大百科事典』という全11巻の大部の本で、浮世絵を展示してある美術館や博物館で時々見つけることができます)。で、その当時、浮世絵の写真を借りるのに大英博物館やパリ国立図書館、シカゴの美術館などから写真を取り寄せたりしていたのですが、もっとも身近な博物館に東京博物館がありました。当時の僕には、しかし、先輩たちが「とうはく」と発音している場所でしかありませんでした。実際の東博に行ったのは、その会社を辞めてしばらくしてからです。そんなことを、先日プライスコレクションを見に行って思い出しました。
写真は、その東京博物館の法隆寺宝物館へ向かう途中の銀杏の木です。で、本題です。宝物館の2階の広いフロアに40対あまりの観音菩薩やその他の菩薩像が並んでいる「金銅仏 光背 押出仏」のコーナー。薄暗い室内に、絶妙な照明で照らし出された仏像群の中に入り込んだ時には、プライスコレクションの疲れと暑さの中を歩いてきた後だったこともあり、くらくらしてしまいました。祈りの心が、室内で交響しているようで、しばし違う場所にワープしてしまったような気分を味わいました。12月24日まで。よかったら、どうぞ。